まっしろ屋さんと少年

絶望&織田

銃声

国民のみんなが戦う国に「まっしろ屋さん」と呼ばれる男がいました。


国は荒れ果て、道ばたには遺体が転がっていました。

まっしろ屋さんは、夜明けから夕方までの間に現れます。


真っ白なシルクハット


真っ白上着にズボン


真っ白な靴


全身、真っ白な姿で、困っている人にしか聞こえない魔法の言葉で国中を歩き回り、叫びます。


「まっしろは要らんかねー!?なんでも交換するよ!」


大きな声でなんども、なんども叫びます。


すると、ライフルを持った少年が来てこう言いました。


「まっしろと交換してくれ!僕はもう戦いたくない!なのに頭から銃声が鳴り止まないんだ!」


まっしろ屋さんはニコニコしてこう言います。


「それは簡単です」


まっしろ屋さんは少年からライフルを奪うと額に、銃口を向けて言いました。


「私が引き金を引けば貴方の銃声は一度で済みますよ」


少年は驚きましたが、パッと笑顔を浮かべて言いました。


「ありがとう…まっしろ屋さん…どうして今まで気がつかなかったんだろう…人を沢山殺してきた僕にはピッタリの終わり方だ…とても、まっしろな…」


まっしろ屋さんは笑みを浮かべたまま引き金をひきました。


乾いた銃声が夕焼け空に響きました。


まっしろ屋さんの足元にはまっくろな水たまりが出来ていました。


まっしろ屋さんは水たまりに手を沈めると、えぃ!というかけ声とともにまっしろな棺おけを取り出しました。


それに少年の遺体を入れます。


まっしろ屋さんは笑顔を張り付けたまま遺体に向けて呟きました。


「一つ言い忘れましたが、天国に行けるとは限りませんよ?」


まっしろ屋さんと棺おけはまっくろな水たまりに沈んでゆきました。


誰もいなくなって、地面にはまっくろな水たまりが残りました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

まっしろ屋さんと少年 絶望&織田 @hayase

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ