4-10 三匹の召喚獣

 キーンが、現実世界にログアウトした夜中。サザンを枕に寝ていたマーレが、いつものように起き上がって、寝つきが悪いナーシャの所に行った。そこに、リサもいた。リサは、自分がどうなるのか、ナーシャに現実を聞いていた。


「わたし、死ぬのかな」

「危篤状態だったんです。だから、惑星ジュウムの生体ロボットの中に意識を移したんです。そうしないと、全く動けなかったと思います」


「アバターシステムだとそうね」

「マーレ、起きちゃったの?」

「いつものことよ。ナーシャは寝つきが悪いの。だからいつも、話をしに起きるの」

「今日は、落ち込んでいないですよ」

「私、自分がどうなるか聞いていたの」

「たぶん、死ぬんじゃない」

「また、”ストレートなっ”!」

「いいの、現実が分かった方が時間を大切にできると思う」


「そうそう、リサは、時間を操ることができるんじゃない」

「そうでした」

「何のこと」

「えっとね、ちょっと長い話なんだー」



 ナーシャとマーレは、結晶光を使って、幻想を現実化できる能力を持っている。ところが、ナーシャは、世界石の子と、人が合体した始祖を持つ関係で、その能力を使ったら、結晶化してリサが捉えられていた状態と同じになってしまう。本当はできるはずがない龍の夫との間に自分の子供を産むためにそうなり、今は、ここにいる。


「なんだか、わかる」

 リサは、ナーシャに同情した。


 そしてナーシャの寝つきが悪いのは、現実世界に残した一粒種のラヴィを心配しているからだ。自分の娘も、いざとなったら、自分と同じことをするのではないか。結晶化してしまうのではないかと心配している。


 これには、突拍子もない解決策がある。


 ナーシャは、結晶光の能力を使って、サザンの隠された記憶を覗いているのだが、サザンには、結晶光の影響が出ない。


「わたしだって、よっぽど、大きなことをしないと、結晶化しなかったですが、サザンさんの場合は、脳の中に直接って感じでしょう」

「だから、サザンは、結晶光に、耐性があるのよ」


 サザンには、結晶光に耐性がある。だから、ナーシャは、娘をサザンに任せたい。しかし、サザンの未来の記憶を覗ける二人は、今のサザンに娘を預けられないと知っている。サザンには、いろんな娘が絡んでくるし、ラミアがそれを許さないだろう。


「だから、サザンの過去の魂を借りるのがいいんじゃないかなって思うの」

「今のリサさんは、時間を操る魔法が使えるでしょう」

「まだ試していない」

「でもでも、リサを具現化したら、時間を操ることができるようになると思うのよ。それに、死ななくて済む」

「リサさんがいると、サザンさんの過去の魂に辿り着くことができると思います」

「私だと、リスクが高いの。ドラゴンの宝石と、合体するまで、記憶がなかったのよ」


 リサは、自分の現実に行き当たった。それは、ラミアの存在だった。

「ラミア・・・・ね、ラミアにサザンを任せるしかない。でも、それじゃあ、わたしにとって、サザンは、いないのと一緒。サザンがいないんなら、この世界にいても、おもしろくもない」


 マーレは、リサと気が合うと思った。


「今は、サザンとゲームができる。その後は、よろしくねマーレ」

「OKってことね」



「うーーん」

 サザンが寝返りを打った。


 ギクッとする三人。じっとサザンを見るが、それ以上動かない。


「いっそ、ロードオブ召喚獣を具現化しません?」

「それじゃあ、シンが本当に世に出ちゃう」

 リサは、この四年間一人でシンと戦っていた。

「そんなの、私たちがいればへっちゃらよ。私たちがゲームマスターだもん」

「マーレさん強気!」

 ウフフフと笑う三人。冗談では済まないことを笑いながら話して、夜が更けていった。

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