4-9 マーレはワールド

 キーンは、事情を聴きに、ロードオブ召喚獣にログインした。キーンが訪れたサザンの所は、険悪なムードになっていた。


「ようサザン。あんたがリサさんか、救出できたんだ。良かったな。あれ、マーレは」

 キーンにとって複合技を一緒に使うマーレは、ゲームの中での相棒だ。

「知るか、あんな奴」


「召喚獣は、契約者と離れられませんから、近くにいると思います」


「何だよ、どうしたんだ」


「あいつがワールドだ。この件の元凶だったんだ」


「私は、怒っていないよ。サザンに会えたし、ゲーム、クリアできそうだし」


 最初は、リサとゲームをクリアしようと盛り上がっていた。


「ちょっと待て。じゃあ、マーレの奴、自分のことを思い出したんだ」


「そうです、まさかゲームの中のスカルドラゴンのアイテムになっていたなんて、本人も知らなかったんです」


「知らないで、人を殺していいわけあるか」


「私、まだ生きてるよ」


 リサとナーシャは、マーレ寄りだ。ナーシャなどは、マーレに希望すら抱いている。マーレが、ワールドなら、本当に過去のサザンに自分の娘を預けることができるからだ。


「それじゃあ、マーレの奴、人が変わっちゃったのか」


「そんなことないです。過去の自分を他人のように言っていました」


「はー、良かった」

「良くないだろ」


「そう言うな、マーレはいい子だよ。今まで一緒にいたんだ。マーレは、マーレだよ」

 サザンには、相棒の進言が一番応える。

「そうだが」


「とにかく、話を聞いてやったらどうだ。どうせ、マーレが、ワールドだってわかったところで、突き放したんだろ」


「分かったよ。マーレ、出てきていいぞ。どうせ近くにいるんだろ」


 それを聞いたマーレが、ほっとしながら出て来た。本当に、すぐ側にいた。


「サザン! キーンありがと」


「おっ、なんか、貝殻のブラがキラキラしてないか」


「あれが、ワールド本体だ。やっぱり、宇宙の宝石だったんだよ」


「そうだけど、私は、わたしよ」


「なんか話し方に、嫌悪感がないと思っていたんだ。多分、モーラの幼体の時の意識がベースなんだ」


「でも、ワールドより、こっちの方が、なじんでる。こっちの方が、相性いいの」


「オレは、マーレのままなんなら、それでいいけど。サザンは、ワールドの方がいいのか」


「そんなことあるか。本当に、マーレなんだな」


「そうよ」


 キーンが来てくれたおかげで、みんな、やっと落ち着いた。


「それじゃあ、マーレのご主人様は、モーラってこと?」

 リサは、それなりに博学だ。宇宙の宝石には、最初、自分の意識がない。だから、感情を求めて人の世界に来た。相性の良い人を見つけると、その人の持ち物になる。


「違うな、それなら、モーラの所にいる。多分、オレの記憶の中のモーラだよ。だからここにいる。こいつは、もう、自立しているということだ」


「名付け親は、サザンよ」

「あれは、人魚の名前だろ」

「サザンだって、ゲームの名前じゃない」


「サザンの名前の由来は、ゲームのキャラ名だったんだ」

「地球から逃げて、いきなり火星で、自由を得たんだ。思いついた名前が、これだった」


「私、サザンのこと知らない。4年間、何してたの」

 リサとは、本当に久しぶりに会った。リサは、サザンの話から、自分の祖父が、サザンを牢屋にいれたことを知った。


「ごめんなさい」

「いいんだ。自分の罪は罪だよ。今は、ラミアと出会ったから、普通になった」

「アウトローだけどな」

「それなりに、気に入っているさ。キーンもだろ」

「ははは!」


 リサは、コゥエンのことで、済まなそうな顔をしてごまかしているが、本当は、サザンが、ラミアと結ばれてしまったことにショックを受けていた。それが分かるマーレとナーシャが、リサに同情する。二人で、こそこそ話し合った。


「リサ、つらいよね」

「私、リサさんの記憶を覗いたからわかるんですけど、リサさんは、サザンさん以外、どうでもいい人です」

「ふーん、私と一緒。いっそ、あの計画実行しちゃおうか。リサも仲間にできるといいな」

「いいと思います。たぶん今のリサさんを具現化すると、時間を操ることができると思います」

「へー、便利。私がやると、リスク高そうだから」

「記憶、なかったですもんね」


 サザンは、それなりに勘が良い。きゅっと、二人の方に振り向いた。愛想笑いでごまかす二人。



 話は分かったとキーンが本題を聞いて来た。


「それで、どうする。外じゃあ、リサの精神波が動き出したって様子見になったんだ」


「おれらは、ゲームをクリアするよ。コゥエンにだけは、本当のことを話してもらって構わん」

「マーレやナーシャのこともか」

「いや、リサが、変った形で復活したとごまかしてくれ。いらん期待をさせることもない」

「分かった。マーレと仲良くな。マーレは、オレの相棒でもあるんだ」

「わかったよ」

 キーンにずいぶん助けられたマーレだった。


「一度、コゥエンと、リサの両親をこっちに連れてきていいか。リサと話をさせてやりたい」


 サザンは、リサを見た。実際は、とんでもない生体ロボットの強化人間になっているのだが、見た目は人間だ。

「そうしてくれ」

 リサも頷いた。

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