4-8 リサ救出

3日後

 サザンとマーレは、レベル78になり、ナーシャも61になった。マーレの機転で、ゴリアスダンジョンの最終フレームに入るキーを得たサザンは、本当だとレベル80にならないと入れない、ゴリアスダンジョンの最終フレームに突入することにした。

 勝つためには、レベル80にならないと出てこないステータスを取らないといけないのかもしれないが、そんなことは構っていられない。

 なぜなら、サザンが、80になると依頼者のコゥエンや、サイバーダイン社の社員がリサのことで構えるだろうし、最終的なことを実行するかもしれない。その前に先手を打って、リサに辿り着くことにした。向こうは、プレーヤーがサザンだけだと思っているだろうが、こっちは、3人もいる。ジャッキーと彩夏には、二人の召喚獣のことは、話していないが、何かを薄々感じていて二人も賛成してくれた。キーンは、嘘をつけるが、顔が正直者だ。



 ゴリアスダンジョンの最終フレームにいるエネミーたちは、惑星サガにいた敵を生体ロボットにしたようなエネミーだった。レベルは、80から85。バージョン1で戦った時よりけた違いに強い。だが、動きが同じなので、サザンは、馴れており、余裕かと思われた。しかし、流石に、惑星サガのモンスターのコピーばかりが現れるわけではない。特に、鱗の形をした鉱物の破片みたいな奴が厄介だ。空中に浮いていてビーム砲を撃ってくる。それも数が半端ない。逆鱗という名前の小さなビーム砲台は、ダンジョンの奥に行くほど増えて行った。


「ナーシャが、いてくれて良かったよ」

 ナーシャのエアーバリヤーは、空気を鏡面の様にもでき、このレーザーを反射する。廃墟の街に入った時、キーンのために、バリヤーを素早くON,OFFする技も身に付けていたので、本当に役に立つ。


「逆鱗って、たぶん、BOSの欠片じゃない」

「たぶんな。魔法攻撃職いるな。オレがメインだと防戦一方になったりして」

「分かった、なんとかする」

「そうだな、そろそろ、マーレも強い魔法が使えるようになるさ」

 マーレのアイデアは、もっと突拍子もないものなのだが、今言うとやめろと言われるので、頷いてごまかした。ナーシャは、防衛で忙しくしているのに、マーレの方に向いて頷いた。


 BOS部屋の入口に来て、一同は、息をのむことになる。入口が開いているので、奥を覗くことができる。3人は、この部屋に入るのをためらった。


「あの奥の柱」

 マーレが指さした。

「ああ、リサだ。大人になっているが、ほとんど変わりない」


「あれ、結晶化ですよね」

 ナーシャが、驚く。何故なら、自分が死んだ時と同じ状態だからだ。自分が結晶化するとき、夫に柱に押し付けてくれと言った。そうすれば、ラヴィは、柱にいる自分を見に来るだろう。その時、夫と話をするようになるだろうと思ってそうした。


「身動きできないわけだ。ここのBOSと戦うと、オレも、ああいう攻撃をされるということか。一度引こう。マーレ、ロードオブ召喚獣の詳細は、オレの頭に入っていないのか」


「分かってたら、こんなに驚かない」


「だよな」


「でも、作戦ならあるわよ」


「本当か、さっき窪んだところを見つけといたんだ。そこにテントを張ろう。作戦会議だ」



 テントの中で、マーレは、この3日間考えていたことをサザンに話した。二人は、サザンに怒られ、反対されると思っていたが、サザンは、違う答えを言った。


「じゃあ、外の連中は、意識が戻っただけだと思うんだな」


「そうだと思う。意識だけ、生体ロボットに押しこめるっていうのは、私やナーシャの状態と同じだってことでしょ。外の体は動かないけど、脳だけ活動することになるわよ」


「サザンさんが、遡行アイテムで、リサさんを復活させている時に、私が、その器を作ります。この世界で私の能力を使っても、サザンさんは、なんともなかったわ。その上、リサさんは、元々結晶化しているんです。意識だけを生体ロボットに移し替えられると思います」


「同時進行すればいいんだな」


「私がウォーターウォールを連発する。レーザーの屈折は、さんざんやったし、少しの間なら、二人を守れると思う」


「やってくれるか。リサを復活させることができるということは、BOSを倒す事ができるということだ。全員生還出来る。それに、意識が戻るんなら、リサは延命される。医者は、しばらく様子を見るだろ。時間ができるんなら、オレは、リサに、このゲームをクリアさせてやりたい」


「サザン好き」

「私もそう思います」


 作戦は決まった。リサは魔法職だ。それも、レベル93もある。パーティに入ってくれたら、これほど強い味方はいない。

 全員、後は突っ走るだけだと覚悟を決めた。



 三人は、BOS部屋に足を踏み入れた。


 薄暗かった部屋は明るくなり、最初、部屋を覗いた時は気が付かなかった天井の龍の骨が、ズドンと、部屋の中央に降りて来た。


「スカルドラゴンだ! 彩夏が集めた攻略データーにあったやつだ」


「でも、見て。額の大きな宝石。あんなデザインなかった」


「あそこから、プレーヤーを結晶化する光を出すんだろ。それも、全方位攻撃かもしれない。一応防御してみるが、ナーシャ、反射頼む」


「了解です」


 グギャーーーーーーーー


 いきなり、全方位攻撃が来た。額の宝石が光り、パーッと部屋中を明るくする。


「信じられない。結晶光です」

 ナーシャが、この光を反射しながら驚愕する。

「そりゃそうだ。リサがそうなってる」

 

「ピピッ、ピピピッ」

 マーレが、特大の警告音を発した。逆鱗だ。それも、天井を覆いつくすほどいる。こんなのは、召喚獣が、巨大化して最終攻撃しないと倒すのは無理だ。

 サザンが持っている遠距離技は、刀の衝撃波を飛ばすスラッシュぐらいになる。ナーシャのエアーバリヤーに隠れている今、出来る攻撃はこれだけだ。サザンは、スラッシュを撃ちまくった。


「サザン、逆鱗が少しずつ減ってると思う」

「少しずつな。本体と戦うどころじゃない。ナーシャ、オレも浮かせてくれ。スカルドラゴンの初期攻撃は打撃だ。マーレ、紫の爪に気を付けろ。強毒攻撃だ」

「吹雪も吹くようになるのよね」

「ああ、それに合わせてウォーターウォールを前面に張れ、自分の出した吹雪で、動きがとまる」

「頭の宝石が、キラッと光ってから、全方位攻撃が来ました」

 みんな、スカルドラゴンのことは熟知していた。しかし、宝石の全方位攻撃は、未知の攻撃だった。


 ナーシャのエアーバリヤーは、打撃に最も有効だ。このカプセルのようなエアーシェルを殴ろうとしても、風圧だけで、ふよんと、避けてしまう。少しでも、スペースがあれば、そうなるのだから最強の防御になる。


 逆鱗に攻撃させながらスカルドラゴンが、しっぽや手足で打撃攻撃してきた。それをエアーバリアーをカプセルのように張ったエアーシェルが、ふよんと避ける。

 サザンが、スラッシュを撃ちまくる。

 スカルドラゴンの爪から出る毒が、部屋中毒だらけにするのをマーレが中和する。


 これが前半戦なのか。


 攻防が永遠に続くと思われた。


「サザン、後ろ」

 いつの間にか3人は、リサが食い込んでいる柱の下に来ていた。ナーシャが、リサのリアルを想像する。しかし、この、エアーシェルを解かないと、生体ロボット作成の作業に入れない。


「マーレ、行けるか?」

 サザンが懐から、遡行アイテムを出す。


「やるわ。ナーシャ、バリヤーを解いて」


 ピュン、ピュン、ピュン、ピュン、ピュン

 ギャオ――――ン


 今までエアーシェルの中で、小さくしか聞こえなかった、攻撃の音が増大する。局所的にナーシャが、レーザーの防御をしている中で、マーレが、叫んだ。


「ウォーターウォール」

 大量のシャボンが、幾重にもスカルドラゴンと逆鱗の前に現れた。そのシャボンが、逆鱗のレーザーを屈折させる。

 スカルドラゴンが、シャボンを壊そうとすると大量の水になり、突っ込んできた逆鱗とスカルドラドンを押し返す。その防壁が、何重にも敷かれた。

「二人とも、急いで」


 サザンが、リサに遡行アイテムを押し当てた。

「リサ、元に戻れ」

 それと同時に、ナーシャが光りだし、壊れた逆鱗の細胞が、ナーシャの元に集まりだした。リサの体にするには、十分すぎるほどの素材量だ。


 リサのアバターが、溶けるように元に戻っていく。しかし全く力がない。サザンは、崩れゆくリサを受け止めた。


「リサ、リサ。ダメだ、意識が戻らない」

「叩いてでも、起こして下さい。じゃないと、リサさんの意識をつかむ切っ掛けがつかめません」

「くそっ」

 サザンは、リサの頬を2,3回たたく。


「うっ、うーーん。あれっ、サザン?」


「今だ!」


 ナーシャが、リサの額に手を置き、反対の手を生体ロボットの頭に置いた。ナーシャは、リサの意識と繋がり、その記憶を生体ロボットに流し込む。ナーシャには、リサの半生が、走馬灯のように巡った。


 それは、サザンへの幼いころからの思いであり、ゲームを一緒にした楽しい思い出であった。そして、サザンが消えた苦しい思いであり、ゲームに執着した苦しい思いでもあった。


「ナーシャ、リサのアバターも守ってくれ。意識は、これと切れたんだろうが、検証している暇がない」


「そうします」

 リサの元のアバターが空気によって浮き、ナーシャ近くに浮遊しだした。


 今、逆鱗の細胞という、強靭な肉体を持った魔法師が誕生した。


「あれっ、体が軽い。サザン、助けに来てくれたのね」

「前を見ろ、ゆっくり話している暇はない。全方位攻撃が来るときは、額の宝石がキラッと光る。その時は、オレがいるエアーバリヤーの所に来るんだ。又、結晶化させられるぞ。後は好きにしていい」


「スカルドラゴン」

 リサが、そう呟いたと思ったら、目が真っ赤になった。攻撃色だ。


「サザン、人魚を引かせて。私の攻撃は炎よ」

「マーレ、戻ってこい」


 気を張っていたマーレが戻て来た。サザンたちは、最初のエアーシェルフォーメーションに戻る。


 リサが、全身を光らせだした。

「シャイニングバースト」

 リサの体の前面から、超高温の炎が光線の様に発射された。


 バㇹ―――ンと、それも、広範囲攻撃をした。空中を漂っていた逆鱗たちは、全滅。そして、スカルドラゴンが、第二形体になる。翼部分だったところが手の様になり、サザンたちをつかもうとする、そして、口からは、吹雪の超冷温攻撃をする。


「おいおい、いくら何でも、攻撃が強すぎるだろ。あれは、召喚獣が最終形態になった時のような攻撃だぞ」


「あっ、リサさん。召喚獣も連れてたんですね。忘れてました。たぶん融合したんだと思います。相性良かったのかしら」


「リサ、もしかして、3体目を持っていたのか」


「よくわかるね。さすが、サザン。レベル90になると竜を取れるのよ」


「あちゃー、サザン、ライトボード確認した方がよくない。リサも、召喚獣だったりして。依代は、サザンしかいないじゃない」


「人型の、それもプレーヤーより強い召喚獣なんて・・・うぇ。3スロット目ができてる」


「ピピッ。サザンさん、今は、そんなこと言ってる場合じゃないです。スカルドラゴンが仰け反りました」

 ナーシャが、警告音を発した。


「やばい、マーレ、ウォーターウォール」

「ウォーターウォール」


 スカルドラゴンの吹雪攻撃によって、マーレのウォーターウォールは、一瞬で凍り付き、スカルドラゴン自身も氷ついてしまった。


「私、マーレよ」

「ナーシャです、リサさん復活してよかったです」


「サザン、召喚獣がしゃべってる」

「わるい、お前も召喚獣になっちゃった」

「えー!!!」

「今は、そんなこと言ってる場合じゃないだろ。あいつ、マーレのウォーターウォールを破るぞ。攻略は?」


「第二形体のスカルドラゴンは、翼の部分がアームになるのね。これにつかまると、まず助からない。でも、破壊できる部分」


「くそー、今しかないか。ナーシャ、どっちでもいい。スカルドラゴンのアームにバインドしてくれ」


「マ・フウ(舞・風)」


 サザンは、ナーシャが巻き起こした風によって、ものすごい勢いで空中に舞った。スカルドラゴンの大きなアームに突っ込んでいく。


「ローリングホール」

 ここで、サザンは、縦回転のスキルを発動して、攻撃力を上げる。


 パリンと、スカルドラゴンが、氷の戒めを破った。


「アトミーーーク、インパクト」

 その時サザンは、溜が必要だが強力な技を発動。スカルゴラゴンのアームを粉砕した。


「キャーすごい、サザンの決め技、久しぶりに見た」

 リサは、大喜びしているが、もう片方のアームがサザンをつかもうと動いている。手で、押し包まれると、ナーシャのエアーバリヤーも効かない。


「リサ、あのアームにマファイ撃てる?」

「連弾でいい!」

「お願い」


「マファイ」

「ウォーターシュート」


 スカルドラゴンのアームの上で火の玉が大きく膨らむ。そこに、指の上に3つ水玉を作ったマーレがウォーターシュートを撃つ。


 ドガン、ドガン、ドガン

 マファイに当たった水玉(すいぎょく)が水爆して、あっけなくアームが粉砕された。


「マーレ、すごい」

「でしょう、もっと褒めて」


「ナーシャ、天井まで、バインドしてくれ」

「マ・フウ」

 サザンは、そのまま天井を蹴って、スカルドラゴンの頭上へ。サザン最強の一撃を頭に打ち込んだ。


「グランドインパクト」

 大地を揺らす重い剣が頭に直撃した。スカルドラゴンの骨は震え、動きが止まる。

 頭上からサザンが叫ぶ。

「リサ、次はどうしたらいい」


「首を落として。そしたら、第三形態にならないかも」


 すぐさまサザンが行動に移す。

「ダイブブレイク」


 しかし、首は、細長かったアームほど、やわじゃない。

「無理だ」

 そう言って、戻って来た。


 スカルドラゴンが、また動き出した。


 グギャーーーー


 額の宝石がきらりと光る。

「全方位攻撃だ」

 そう言って、ナーシャのエアーバリヤーに全員隠れた。しかし、光は、外にではなく、スカルドラゴンに向かって光っている。


「そんな、ありえない」


 スカルドラゴンの骨に、筋肉がつき体が再生しだした。


「すごいな、あれが、第三形態か」


「ちがう。地に這いつくばるようになって、何本もあるあばらが、動き出すのよ。そのあばらを粉砕していくのがセオリーだったの」


「じゃあ、あれは、なに?」


「あれは、火龍です。翼がないのが、唯一、こちらが有利なところだと思います。火龍は、飛びますから」

 ナーシャが、よく知っていると火龍を仰いだ。


「スカルドラゴンより、格上なんだな」

「そう、思います」


「弱点は?」

「分かりませんが、口から火の玉を吐きます。その時、大きく口をカパッと開けます」

「水玉弾をぶつけろってことね」

「特大で頼む」


「とにかくやばいわ。オーロラシェル」

 リサが魔法を唱えると、全員、虹色に薄く光りだし、打、射、法撃防御が一度にかかった。

「オーロラシフト」

 今度は、打、射、法撃力が上がる。

「スピードマックス」

 そしてスピードが上がった。


「ごめんね、氷技は強くないの」そう言って、ロックウォールを前面に発動した。


「ウォーターシュート」

 リサが、魔法を発動している間に、もう、ドラゴンが、火流弾を撃ってきた。しかし、マーレが負けていない。ドラゴンが撃とうとした火の玉が、マーレの水玉弾に当たって、目の前で水爆する。


 グギャーーー

 ドラゴンは、のけぞり、動きが止まる。


「マーレ、でかした。ナーシャ、あいつのあごに向かってバインドだ」

 そう言って、飛び出した。

「マ・フウ」


 一瞬のことだった。


 アッパー脚、リフティングブロー、グランドインパクトの三連コンボが、ドラゴンのあごと脳天に決まった。


 アッパー脚:    下から上に蹴り上げる無双脚

 リフティングブロー:屈んで頭を釣り上げるように、頭を撃つ

 グランドインパクト:大地をたたいてダメージを与え動きを封じる


三連コンボ

 サザンは、これらの技を応用して、3連コンボを生み出した。

アッパー脚であごを攻撃、その回転を利用してさらに、リフティングブローで、敵の頭を吊り上げる。そして、敵の頭上にグランドインパクトを直接流し込む。


 ギャゴーーーーーー


「効いてるわ」

 格上のドラゴンに善戦する。


「サザン、お腹」

 模様だと思っていた火龍の赤いお腹は、極大の浸食核だった。


「みんな、腹を狙え」


 そこからは、全員、怒涛の攻撃を仕掛けた。それでも、ドラゴンは倒れない。


「いったい幾つHPがあるんだ」

 そう、サザンがぼやいていると、マーレの召喚獣ゲージが満タンになった音がした。ハープが、パラララ、ラランとなる。



「サザン!」

 マーレが光り出した。


「来たか。『タイダルウエーブ』」


 これを聞いたマーレに、シャボンが集まりパーッと大きく広がった。マーレは、空中で、ドラゴンと変わらないほどの大きさになり、顔をふぁっと上げた。その時、七色に光彩をにじませていた髪が、虹色に光りだし、水中で、浮遊しているかのように浮かぶ。


「タイダルウエーブ」


 サザンたちのHPが、MAXになり、ステータス異常も正常化する。ドラゴンには、巨大な津波が襲い掛かった。


 ドラゴンは、怯みはしたが、倒れない。



「サザンさん」


 今度は、ナーシャの召喚獣ゲージの溜まった。ファン、ランランランと、鳴る。


「ナーシャ、『癒しの歌』だ」


 ナーシャが、祈るポーズをして、まぶしく光る。緑の柔らかい葉が、風に舞い、ドラゴンと同じ大きさになる。


 髪飾りの草冠から、黄緑の光が発光し、黄緑になった長い髪が風になびく。


 風と共に歩もう

 光と共に歩もう

 収穫は満たされ

 人々は、歌う


 癒しの歌が始まった。これから、3分間、敵も味方も徐々に癒される。シンや、シンの浸食核は、更に攻撃され、浸食された者で助かる者は、シンから癒される。



 これを受けて、サザンが号令した。

「全員全力だ」

 そう言って、ドラゴンに突撃した。


 サザンが切り込み、マーレとリサが、さっき覚えた連携攻撃の、水爆の連弾を撃ちまくった。ドラゴンも、しっぽで、サザンを払ったりするのだが、サザンは、そのたびにナーシャの癒しの歌に癒され、戦線に復帰する。


 ついに3分が経った。浸食核は、半分以上削れたのだが、それでも、ドラゴンは倒れない。



「サザン、わたし」

 リサが弱く光りだす。


「リサもか『シャイニングバースト』だったな」

 サザンは、癒しの歌が終わり、特攻をやめて、元いた場所に戻っていた。


「わたし!」


「リサ、『シャイニングバースト』だ」


「ギャーーー」

 リサが、ドラゴンの様に吠えた。


 リサが、見る見る龍に変形する。大きさも、ドラゴンより一回り大きくなった。バハムートだ。リサが光りだすと同時に羽が広がり、その羽も嫌と言うほど光る。


「ゴギャガ、ゴォオーーーーーーーン」


 バハムートの前身が光り、口とも羽ともなく、全身から、シャイニングバーストが発射された。


 それを見たドラゴンも、負けじと、火流弾を撃つが、そんな小石のような粒て、シャイニングバーストの前に消し飛んでしまった。


 ドラゴンに光の柱が立つ。


 ギャッ


 圧倒的火力の前に、ドラゴンは霧散して消し飛んでしまった。


【コングラッチレーション】


 4人の前に勝利の光文字が浮かんだ。


 レベル違いのドラゴンのアイテムドロップはすごかった。ナーシャの額には、第3の目ができていた。龍玉でできた目は、サーチ範囲を倍にした。

 リサには、ドラゴンの鬚が大量にドロップ。その上、火龍の水晶も、これで、龍の羽衣とドラゴンの杖が作れる。

 サザンには、ドラゴンスレ―ヤーがドロップした。これは、レベル90以上でないとドロップしないレアアイテムだ。


 そして、マーレにドロップした物は、 


「何だよマーレ。すごいものがドロップしたんだろ。見せろよ」

「うーーんと!」

「こっち向けよ」


「えへへ」

 マーレの貝殻のブラに、どこかで見た青い宝石が、二つの貝殻を包み込むように張り付いていた。


「マーレさん、それ、ドラゴンの額にあった宝石ですよね」

「そうみたい」


 サザンが、変な顔をした。サザンは、こういうことに勘が良い。サザンが、変なことを言おうとしたとき、リサが、サザンを呼んだ。


「サザン、魔法が増えていたんだけど『オーバータイム』と、『タイムキープ』だって。聞いたことない」


「何だって。ナーシャ解るか」

 ナーシャのサブ職業はウォッチ。この世界の観測者。


「言葉通りだったら、時間を進めると、時間を止めるですよね。敵にポイズン〈毒攻撃〉掛けてオーバータイム掛けたら、強敵とか関係なくHP削れるんじゃないですか。相手のエネミーが強すぎたらタイムキープ掛けて逃げるとか、なんか便利そうです」


「面白そう」


「試せよ。でも、今日は、これで、安全地帯に戻るぞ。リサのアバターはどうなった」


「BOSを倒したと同時に消えました」


「そうか、意識があるんだから大丈夫だろ」


「何のこと?」


 サザンは、ため息ついて事情を話すのであった。しかし、リサは、自分が危篤状態だと聞いても、実感がわかない。


「分かった。マーレやナーシャのこともあるしな。順を追って話すよ。とにかく、ここを出よう。脱出アイテム、使うぞ」


 こうしてリサを救出することに成功した。



 この時、外では、大変な騒ぎになっていた。リサの精神波が復活した。精神波は、復活したのだが、依然、体は、植物状態のままだ。医者は、こんなケースは、初めてだと頭をひねる。しかし、脳が活動しているのは間違いない。コゥエンを初め、リサの両親が希望の目をリサに向ける。

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