4-4 BOS戦

 とうとう、エルフの魂が祭られている部屋に到達した。一同は、この部屋がとても広いので、入るのをためらった。

「広いな、ここのボス、めちゃめちゃ強いんじゃないか」

「天井も、高っかーい!」

「召喚獣を得ると、プレーヤーは、急に強くなるんだ。仕方ないだろ。一撃目に気を付けろ。全方位攻撃の時は、オレのジャストガードの後ろに隠れるんだ」

 剣士は、防御職。このパーティでは、攻撃魔法が得意なキーンが攻撃職になるのだが、いかんせんレベルが低い。いざとなったら、マーレに、召喚獣本来の役目をしてもらうしかない。


「ピピピッ!」

「何だよマーレ。まだ部屋に入ったばっかりだろ」

「ばか、気を抜くな。衝撃に備えろ。マーレ、ウォータウオールの準備だ。これは防御に使う」


 キーンが慌てて、プロテクトを3回唱えて、全員の防御を強化する。マーレの方は、弱く光りだして、サザンのコマンドに備える。シャボンが、マーレからファーッと上りだす。


 BOSが出た。恐竜型エネミーだ。4つ這いで、一見動きが鈍そうに見える。地を這う怪獣と言った感じだ。背中には、水晶のような結晶石でできたとげが、いくつも出ている。そのとげが光った。いきなり大技だ。


 それに合わせてサザンがマーレに指示。


「ウォーターウォール」

「ウォーターウォール!」

 シャボンが、サザンたちの前面に壁の様に広がり、パシャッと水になる。敵の攻撃を緩和した。


 光のバブルは、高い天井を覆うほど広がり、まだ、部屋の端にいるサザンたちも包み込んだ。光の衝撃波だ。これは、召喚獣も多大なダメージを受ける。唯一、サザンが自分と同じ大きさの巨大剣を使って、ジャストガードで、光を反射した。二人は、サザンの後ろに隠れて無事だった。


 BOSの名前は、アギラス。地底怪獣だ。アギラスは、長い舌をのばして、サザンを襲う。サザンは、それをガードしながら、マーレに指示する。

「マーレ、相手が、はいつくばっているからって、高く飛ぶなよ。天井が高いのはフェイクだ。絶対なんかある」

「わかった」


 キーンは、到底勝てる相手ではないと思ったが、それは、地下ダンジョンに入ってずっとそうっだった。アギラスの固そうな口の上。眉間にマファイを撃つ。

「マファイ」

「ウォーターシュート」

 敵のHPが減っている気はしないが、アギラスの状態が浮わずり、攻撃している舌も、全く別の所を攻撃した。サザンは、チャンスとばかりに、アギラスに接近して、硬い足の甲を砕こうとする。


 その時、キーンとマーレは、サザンについて一緒にアギラスに突っ込まなければいけない。サザンの後ろが一番安全だからだ。二人とも生きた心地がしない。3人が、元いた場所を離れると同時に、アギラスの背中から放たれたロケット弾のような赤い晶析が、後ろで爆発した。アギラスは、遠距離攻撃もできるエネミーだった。

 この爆弾の弾道のために天井が高かったのだ。


 アギラスは、サザンの攻撃に、自分の体を地面にぶつけるようにしてサザンをつぶそうとする。サザンがそれを避けて、後ろ足に回って同じことをするのだが、今度は、しっぽで払おうとする。体が、大きくてあまり動かないのに、それなりに、いい動きをする。


「すまん、言い忘れていた。足の装甲を壊すと、弱点になるんだが、それをさせまいと、雑魚アギラスがわいてくるぞ。そっちは、頼む」

「オレ等でか、聞いてない」

「すまん、今言った」

「遅ーい」

「雑魚にウオーターウォールを撃ってみろ。結構効くぞ。キーンは、回復をかけまくってくれ。いや、もしかしたら、後で指示する」

「了解」


 三人は、さっきの爆発を見ている。遠距離の方が危険だと察した。アギラスの方から、距離を取ろうとすると、すかさず、連携攻撃の水爆で牽制。すぐ足元に戻った。それが永遠と続く。マーレとキーンなどは生きた心地がしないのだが、大興奮だ。

「マーレ、オレたち、全弾命中してないか」

「すごいよね。私達」


 ついに、足の装甲が一つ壊れた。地中から、雑魚アギラスが、わいて来た。

「ウォーターウォール!」

 マーレのウオーターウォールで、雑魚たちが簡単に流される。だが、すぐ体勢を立て直して寄ってくる。キーンがまずいと思ってサザンに聞く。

「サザン、さっきなんか言おうとしなかったか」

「おう」と言って、ちょっとキーンの方に向いたら、すぐ、アギラスの舌が飛んでくるように襲ってきた。それをジャストガードしながら、サザンが大声を上げた。


「キーン、マファイ連弾だ。マーレ、それに合わせろ。指を三本出してその一本一本に水玉を出すんだ」

「連弾だって!」

「いっぺんに三つ!」

 しかし、文句を言っている暇はない。もう雑魚たちが、そこまで来ている。


「マファイ」

「ウォーターシュート」

 二人は、3連弾の水爆で、雑魚1匹を倒した。自分たちだけで初めてエネミーを倒すことができた。

「マーレ、ウォーターウォール」

 ウォーターウォールで、また雑魚が流された。二人は、サザンに褒めてもらう暇もないまま雑魚を倒しまくった。


 サザンは、二つ目、三つ目と足の装甲を壊していく。そのたびに雑魚アギラスがわいて、二人の仕事になる。いい加減雑魚を倒していて、キーンが、アギラスの弱点を雑魚から見つけた。


「サザン、しっぽだ。先っちょのクリスタルを砕くとそこが弱点になる。足よりダメージ、デカいぞ」

 剣だと難しい部位だ。アギラスは、しっぽでも攻撃している。ジャストガードが、そのクリスタルに決まれば、攻撃をしたのと同じになるのだが、難しそうだ。

「分かった、やってみる」


 チャンスがやってきた。足の装甲を全部壊して、セオリー通りに正面に回るとアギラスが、丸まって、転がり攻撃をしてきた。それを避けた三人は、アギラスの真後ろに出ることができた。アギラスは、当然の様にしっぽで、敵をけん制する。


「ジャストガード」

 パリンとクリスタルが砕けて、弱点がむき出しになった。そこにキーンがマファイを連弾、マーレが、それを水爆させた。


「ギャオ―――ン」


 すべての攻撃が効いた。三人は、しっぽの弱点を集中攻撃した。


「ギャー」


「ピピピッ」


「全方位攻撃だ」

 三人は、争うように逃げて、部屋の端に行く。マーレとキーンは、サザンの後ろに。マーレは、衝撃を和らげるためにウォーターウォールの体制に入った。キーンは、プロテクトを自分たち三人に掛けた。


 アギラスの背中がパラリラ、パラリラと、激しく光って、光のバブルを膨らませた。

 ウォーターウォールが、光のバブルにぶつかりパリンと砕ける。残りの衝撃波をサザンがジャストガードした。

 それと同時に、今度は、必死になってアギラスの懐に飛び込む。後ろで、キーンなら一発でお陀仏のロケットが爆発した。


 永遠と、弱点になった足を攻撃していると、アギラスが、また、転がり攻撃をしてきた。


 チャンス到来だ。


 三人は、アギラスの真後ろに出ることができた。もう、決めが近いと思ったサザンが、スキルを発動させた。ダイブブレイクと、ローリングホールと、アトミックインパクトの三連コンボだ。


 ダイブブレイクで、滑るようにしっぽの先まで行ったサザンが、縦回転して、しっぽを大地にたたきつけた。そして、長い溜の後、強力な一撃を放った。


「アトミーーーク、インパクト」


 それでも、アギラスは倒れない。


「サザン!」

 マーレが光り出した。


「来たか。『タイダルウエーブ』」


 これを聞いたマーレに、シャボンが集まりパーッと大きく広がった。マーレは、空中で、アギラスと変わらないほどの大きさになり、顔をふぁっと上げた。その時、七色に光彩をにじませていた髪が、虹の様に輝きだし、水中で、浮遊しているかのように浮かぶ。


「タイダルウエーブ」


 サザンたちのHPが、MAXになり、ステータス異常も正常化する。アギラスには、巨大な津波のエフェクトが襲い掛かった。


【コングラッチレーション】


 アギラスが、霧散し、勝利の光文字が浮かぶ。


 サザンには、地龍の水晶と、アダマン鉱石がドロップした。強力な龍晶剣の素材だ。その他、水晶石やハイポーションが、大量にドロップした。キーンにも水晶石やハイポーションが、大量にドロップ。それよりも、レベルが、一度に3も上がり23になっていた。更に、ハートソードが3本ドロップ。これで、結晶石をはめるスロット付きの剣を作ることができる。3本で、3スロット。レベル以上の剣を作ることができる素材を手にした。


「アギラス倒したの私よね」

 信じられないとマーレがサザンに聞く。

「そうだ、召喚獣は、必殺技を持っているんだ。エネルギーゲージが溜まると、とても強い攻撃をする」

「すごい!」


 キーンとマーレは、もう、戦友だ。讃え合う二人。これがゲームだということをすっかり忘れている。

 サザンは、冷めた頭で、奥にある祭壇に向かった。実際は、心の中で、ぎりぎりだったと思っている。もし、浸食核付きと出会っていたらやられていたと思う。今回は、運が良かった。

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