4-2 召喚獣はガイヤ人

 ゲームに入る日が来た。サザンは、レベルを上げるために、ずっとアクセスしたままの状態になる。ダース兄弟とキーンは、最低でもレベル10にならないと使い物にならない。最初は、普通にゲームを友達と始めたような感じになった。しかし、外は、大変だ。ジャッキーと彩夏は、もう1日目の徹夜を超えていた。それでも、二人だけで環境ポッドのメンテナンスは無理だ。だから、職員に使い方を聞きながらの綱渡りのようなスタートとなった。


「兄貴、俺、こういうの好きだな」

「俺もだ。ゲームか、久しぶりだ」

 ダース兄弟は、背伸びして、リラックスしていた。アバタースーツの使い方も、昨日マスターした。今のところ、ゲームを楽しむ気だ。しかし、サザンの所は、大変なことになっていた。


 サザンは、レベル60だ。バージョン1のプレイで獲得した召喚獣の人魚が肩の上あたりに空中ちゃぷちゃぷのエフェクトと共に浮かんでいた。


「サザン、私、人魚だったのね」

「おまえ! 昨日夢に出てきたやつだな」

「オマエじゃないわ、人魚よ」

「違うだろ。とにかく名前が無ないのは、呼びにくい。この人魚の名前は、マーレだ」

「私、マーレね」


「どうしたサザン」

「ガイア人だ。今は、オレの召喚獣になってる。寝ている時に夢で絡まれた」

「おまえ、寝ているだけで、女に絡まれるのか」

「言うなよ」


「この人は?」

「おい、オレも、こいつの声が聞こえるぞ」

「こいつじゃないわ。マーレよ」

「そりゃそうだ。キーンもモーラの羽化の光を浴びただろ。なんか、その未来の記憶を伝手にやって来たらしい」

「キーンね」

「オレ、何にも覚えていないぞ」

「オレだって一緒だよ。だけど、それは、使えないだけだってアンが言ってたろ」

「まあ、悪そうな奴には見えないけど。とにかく召喚獣は、味方だ。よろしくな、マーレ」


 マーレは、自分の名前を呼ばれてとても喜んだ。なんだか一人でぺちゃくちゃ喋り出した。女の話は、長い。二人は、それを無視した。ゲームのやり方をキーンたちが覚えたところで、ゲームをスタートさせた。その間もマーレは嬉しそうに話していたが、ダース兄弟には聞こえなかった。


「わるい、オレのパーティに入って高レベルの敵を倒したら、すぐレベル10になるんだが、それじゃあ、ゲームの仕様を覚えないだろ。だから、二手に分かれよう。キーンは、ダンジョンの入り口まで来てくれるんだろ。仕様は、後回しだ」


 レベルなんか、いくら高くてもいいはずだ。だけど、そうごまかして、マーレに召喚獣の役割を教えることにした。ダース兄弟も、ちょっと遊びたかったから、喜んで同意してくれた。ダース兄弟を見送ったところで、マーレが聞いて来た。


「ねーねー、この光るボードは、なに?」

「さっき、みんなに説明していただろ。ライトボードだよ。・・・ええっ、何だって、ライトボードが出るのか。普通NPCには出ないぞ」

「私、NPCじゃないもん」

「お前、そう言うところは、おれの記憶を覗いているんだな」

「自分が何なのか、知りたいじゃない」

「サザン、教えてやれよ。マーレもレベル60なんだろ。味方は、多い方がいい」


 こうして、マーレが、攻略組のメンバーになった。


 人魚の特徴は、ステータス異常の回復だ。初期召喚獣の為、攻撃も、防御も行ける。マルチプレーヤーに近い召喚獣だ。


「オレの、MPを消費して、魔法を使う。オレのバーが見えるだろ。緑のバーがそうだ。なくなると魔法は、使えなくなるぞ。得意な攻撃魔法は、ウォーターウオールと、ウォーターシュートだ。今やるなよ。回復は、ホイと、ホイミどちらも単体回復だ。毒消しは、ポイと、ポイミ。ライトボードは読めるか?」

「うん」

「詳細は、ライトボードのヘルプを読んでくれ」

「わかった」


「それから、マーレのサブ職業は、ファッションだ。服なんだが、防具になる。オレは、鍛冶屋だ。だから強い武器と、強い防具は自前で作れる。ところが、薬などのアイテムは、作れない」

「それは、ダース兄弟に頼むんだろ」

「おっ、キーンは、優秀だな。マーレもオレがレクチャーしている時は、聞くように」

「はぁーい」



 サザンの職業は、剣士だ。今は、そうも言っていられないが、パティ―戦だと、楯役になる。攻撃は地味だ。だが、体が丈夫で、なかなか死なない。だから、単体だと時間はかかるが、確実に勝っていくタイプ。


 サザンは、もう、レベル60なので、あるイベントをこなせば、2体目の召喚獣を得ることができる。2体目は、エルフだ。強回復系で、シン(罪)に侵されたエネミーを回復という形で攻撃する。エルフがいると、生存率が、ぐっと上がることになる。まず、このイベントをこなすことになった。

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