6-9 神官アイサ
クラゲに行く事になり、ガイ、フォブ、海人、メイが、宇宙艇バダに乗り込んだ。お客を乗せ、海中に入る。海は、ガイア人のテリトリーだ。そこに、水棲のガイア人が、いっぱいいた。バダ号を歓迎して、後をついてくる。だから、スピードは上げず、パレードのようになった。
クラゲは、巨大だ、全長24キロメートルはある。しばらく、迎えに来たガイア人ギャラリーに付き合ったが、途中からスピードを上げ、クラゲの下部、口の部分に向かう。ここから、海底都市トルポに入る。
クラゲは、触手を何本も出してる。長いものは、何十キロにも及んでいる。この触手からもクラゲに入れるのだが、ガイア人以外が入ろうとすると、取り込まれて、出ることができなくなってしまう。入った場所が悪いとガイア人も巡回していないので、助からない。
火星政府に、クラゲに行くと、届け出があれば、捜索隊も組織するのだが、届け出れるのなら、普通に口から入るわけで、そうでないから、触手で遭難する。大概は、犯罪者が、そうなるのである。
クラゲには、宇宙の宝石という宝がある。それを狙う人間の犯罪が後を絶たない。ガイや海人は、そんな犯罪者に立ち向かえる戦士である。
クラゲの口は閉じたり開いたりしている。バダ号は、クラゲに飲み込まれるようにトルポの街を目指した。
トルポの入り口近くには、甲殻人と魚人の大きな町がある。
アイサは、魚人の透明ドームの中にいる。
ひときわ大きなバブルの中に入り、更に中に内包されたバブルをくぐると、そこは、空気のある街になっていた。魚人たちは、ここで、地上に出る準備をする。
白い巻貝のような家が立ち並ぶ町の中心に、白亜の神殿がある。ここに神官がいる。神殿前の広場に停泊を許されたバダ号は、反重力ホバリングしながらゆっくりと町の上空を進んだ。
町の住人は、未来の神官を見ようと、みんなバダの後を追い神殿に向かった。
この神殿の主は、魚人族長、海人の娘サーヤなのだが、23代目ドリトル・ガバンの嫁に出してしまって不在だ。ガイア人の寿命は長い。また戻ってくるだろう。代わりにアイサがここにいる。キーンは、パリシャのことが何とかなってはいたが、宇宙艇から出ない気だ。タラップが降り、お客と共にサザンたちが、魚人の町に降り立った。
魚人は、ほとんど半魚で、足が魚みたいな感じなのだが、そこに、全身うろこの、とてもきれいな人型の女性がいた。
パンドラは、サザンをそちらにひっぱった。
「イテ、イテ。おい、焦るな。ちゃんとかざすから」
サザンは、パンドラをかざしながら、マイアの許に向かった。マイアは、サザンの手を取って胸に抱きしめた。サザンは役得を喜んだ。パンドラが、マイアに触れると、マイアの魔力が伝わり、パンドラは、ここに大きなフィールドを展開するのであった。
「会いたかった」
二人は、ともに泣いて喜び合った。
アイサは、姉妹を歓迎していた。町の人たちにレミーを見せながら、ウナを褒める。
「ウナのお母様が手伝ってくれたからと言って、そうそうキーンのことがうまくいくとは限りませんでした。あなた、将来有望ですよ。大きくなったら、私のところで、修行しなさい」
何となく頷くウナ。この話が聞こえているサザンが、何の修行だと揶揄したくなる。
レミーは、パンドラのフィールドを感じて、楽していた。自分のテレパシーは使わないで、普通に話ていたので気楽だ。だから、アイサに興味を持った。それを感じたアイサが、レミーにも言った。
「あなたも、将来有望です。ウナと一緒に修行に来るのですよ」
なんだかうれしいレミーは、うん、と、返事するのであった。
家族をアイサに取られそうなサザンは、焦ったが、今は、動けそうな感じではない。そこで、近くにいたひょろっとした感じの人と話をすることにした。
グリーンは、ニコニコしながらサザンに声をかけた。
「サザン君でしょ。何歳まで地球にいたの」
「16までです」
「へー、じゃあ、特選戦隊シリーズ見てた?」
こんなところで、地球のことが分かる人に会うと思わなかったサザンは、肩の力を抜いた。
「見てました。でも、13の時に少年院に入れられてしまいましたから、新しいシリーズは、たまにしか見れませんでした」
「いいんじゃないかな。10年前の出来が最高だったんだよ。たしか16歳で、火星に来たんだよね。良く、ここまで逃げられたね」
自分の事情を知っている。神官の関係者に違いなかった。でも、こんなに話しやすい人は、初めてだ。サザンは、今までラミアと巫女ナオミにしか話したことがなかった話を話し始めた。
「運が良かったです。火星のある人が、密航を手引きしてくれたんです」
「トーマ君でしょ。トーマ君は、地球の封権主義が嫌いなんだよ」
「知っているんですか」
「彼、出は、アウトロウだからね。ぼくは何でも屋なんだ」
「すごい、初めて、何でも屋の人に会いました。自分、何でも屋、目指しています」
「そう? ナオミもマークもそうだよ」
「初めて聞きました」
「アイサもそうだよ。アイサ―、サザン君、何でも屋になりたいんだって」
「そうですの!」
アイサが嬉しそうにやってきた。美人で、噂とは、ずいぶん印象が違う。
「初めまして、アイサですの。あなたに託宣を授ける役目は、わたくしのようです。グリーン、手伝ってね」
この人が、グリーンさん。あの無表情なラミアの父マークの親友。
「知ってた? 宇宙の宝石が、フィールドを張っているとき、その関係者の声は、フィールド内にいる全員に筒抜けなんだよ。パンドラの身内は、サザン、レミー、ウナに、今、話しているマイアだよ」
サザンが粗相をしないように、先に警告してくれた。
「ありがとうございます」
「粗相があったほうが面白いのに」
アイサが、茶目っ気を出す。
「じゃあ、ぼくたちが、そうする?」
そう言われたアイサが、グリーンに寄り添った。
「実は、アイサが懐妊したんだ。初めての子なんだ。だから、レミーとウナは、この子のお姉さんになるんじゃないかな」
それで、さっき
これを聞きつけた長たちが一同に集まった。二人の手を取って口々に祝福する。この二人の結婚は、マーク達よりずっと早かったと聞く。待望の一子に恵まれた。ここには、ガイア人の始祖たちも大勢いる。サザンの周りは大変な騒ぎになった。おかげで、姉妹は、サザンの許に来ることができた。
「お父さん、また、ここに来たい」
今から予約するウナ。
「私も」
「飯もうまいらしいぞ。メイさんと作るんだろ」
二人とも、嬉しそうな顔をした。
レミーのことも何とかなったサザンだった。
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