6-8 レミーの顔見せ
翌日、レミーの祖母ナオミは、大喜びで、サザン一家を送り出した。コムリンクで、礼を言うガイに「ねっ、私が間に入るよりうまくいったでしょ」と言っていた。また、手の平で、踊らされたサザンだった。これを知っていたら、女運が悪いのは、あんたも含めてだと怒っていたに違いない。
現在クラゲには、火星で超有名人の神官がいる。巫女のナオミより有名なんて、おかしいと思うだろうが、巫女はガイア人の巫女であって人の巫女ではない。神官は、ガイア人の神官であるが、人の神官でもある。影響力がすごいのだ。それも、火星を束ねている御三家の一人なのだから大変だ。
この人のことを、仮にAさんとしよう。Aさんの趣味は、恋愛だ。今、クラゲは、未曽有の結婚ブームである。当然火付け役はAさんで、ほとんどのカップル成就が、この人の手にかかっている。
だから、感謝しても、感謝しきれないほどの恩があるのだが、何となくその気持ちになれない。なぜなら、擬音にすると、ズケズケ、ガツガツなのだ。あるカップルなどは、一室に二人で閉じ込められたことがある。ある人など、引き合わせてもらったのだが、最初は拉致同然という強引さだ。
これは、クラゲに限ったことではない。人の世界でも同様である。御三家筆頭の23代目ドリトル・ガバンが、ガイア人と結婚したのは、有名な話である。
だから、恋愛の秘密を抱えているキーンなどは、Aさんの周囲10キロメートル以内に近づきたくもないわけだ。
Aさんは、神官だから勘がいい。今言っている噂話も嗅ぎつけてくるだろう。そうすると、「さっきから聞いていれば、拉致だとか、監禁だとか、犯罪者扱いじゃありませんか。だいたいなんです。わたしは、Aさんなどではありません。私は、アイサ・ミドガルドです」と、お怒りになるのは、間違いないだろう。
えー火星の御三家に、ミドガルドは、いない。アイサは、世が世ならベロア家の当主になっていた人だ。それが、ヒョロヒョロのグリーン・ミドガルドに嫁いだ。これが世に言う、火星七不思議の一つだ。
アイサの旦那は、アイサの言いなりだ。この二人が持っているツインスターの性格もグリーンと変わらず、アイサの言いなりなので、影は、薄いだろうが、たぶん二人もクラゲにいるだろう。ツインスターは、浮遊アイテムだ。
ツインスターのすごいところは、浮遊能力ではなく、状態把握能力の方である。これを使って、アイサは、BさんとC子さんを結びつけるのである。
クラゲの道行き、バダ号を操縦してくれるキーンにお礼を言った。
「自分事に付き合わせて、わるいなキーン」
「何でも言ってくれ、おれの天使達も一緒なんだ。どこへだって、連れてくぞ」と、キーンは、ニコニコだ。
キーンは、間接的ながら、パリシャに、告白した。ウナが持って来たパリシャの伝言を真に受けて、キーンは、ウナとレミーについてきてもらいパリシャに会いに行った。
ウナが、「お姉ちゃん、あの話」と、耳打ちすると、パリシャが、面白がってキーンに聞いた。
「ここに来たってことは、やっぱり何か隠し事があるのね」
ショックを受けたようなしぐさをした後、キーンは、「なんにもない」と、言い張った。そこで、ウナ本体が、ウナに代わり、暴露した。
「うそよ。パリシャのことが好きなくせに」
これには、膝をついて、土下座寸前になったキーンが、祈る格好をした。
「知ってたわよ。どうしたい?」
パリシャは、これに対し、あっけなくそう言った。
口を、パクパクするキーン。
「付き合いたいんじゃない」と、ウナ本体。
「それじゃあ、今まで通りじゃない」
これもさらりと流す。パリシャは、キーンを指さして命令した。
「いい、次に会うまでに、ちゃんと言いたいこと言うのよ」と、言って後ろを向いた。
そちら側にいたレミーは、パリシャが、真っ赤な顔をしているのを見てしまった。
結局、その時は、自信がなくて、告白ができなかった、ダメなキーンだった。しかし、次にキーンがパリシャに会ったときは、なけなしの勇気を振り絞って告白するのだろう。
キーンは、アイサを恐れる必要がなくなったのだ。
クラゲは、火星のユートピア海辺りにいる。エリシウム島北端に浮上して天体観測をしている。エリシウム島は、ガイア人が住む島だ。ガイア人特区になっているが、最近、人も住み始めた。ガイア人は、この島から出ることはない。ラミアは特例である。まだまだ、試行錯誤で交流しているのが現状だ。
何故なら、A、おっとアイサが、ガイア人の始祖カップルを作りまくり、全く先が読めない状態にしたからだ。だから、もう、別の場所に転居できそうなガイア人もそれを手伝っている。
バダ号は、エリシウム島北端の甲殻人が住む町に降り立った。それを待っていたガイア人氏族の族長達や、未来の神官を見ようと言うギャラリーで、町は、とんでもない騒ぎになった。
地上に降りたレミーに挨拶する族長たちを横目にサザンは、レミーが能力を開放しているのを利用して、こそこそガイに聞いた。
「Aさんは?」
「バカ、それ、すぐばれるからな」
「ちょっとは、大丈夫だろ」
「気持ちは、分かるが、後が大変だ。説教の時は、正座だぞ」
「分かった、止める。それで、アイサは?」
「クラゲだ、手ぐすね引いて待ってるぞ。お前もだ」
「おれも?」
「そうだ。オレは、それ以上、首を突っ込んでいないからな。解るだろ」
レミーは、ウナに手を繋いでもらっている。だから、妹にも注目が集まった。ウナは、初めて嗅ぐ匂いに興味津々だ。しかし、ガイア人の知識があるため、姉のサポートを一生懸命やっている。
ヤドカリみたいな甲殻人が来た。
「この人、前の族長のフォブさん。物知り」
魚人で、2足歩行している人が来た。
「この人、魚人族の長のカイトさん」
「カイトおじさんは、会ったことある」
次にタツノオトシゴみたいな容姿で、宙にふわふわ浮いている人が来た。
「水龍族の人?」
「うん」
「初めまして」と、女性の声
「あっ、分かった。モイさんの子ね」
「メイです。地上は、私がまとめています」
メイは、まじまじとウナを見たが、誰だか思い出せない。
「私のお母さんは、風の神殿にかくまってもらっていたことがあるの。そこで、ワールドに隔離されてた」
「あっ」
メイは、泣きながら、ウナと握手した。
「お母さんも一緒なんだ。今度ゆっくり話したいって」
「お役に立てなくて・・・でも、忘れたことは、ありません」
「メイさんは、料理が上手」
「教えてもらいたいです」と、レミー。
「教えるだなんて、一緒に作りましょう」
姉妹は、お姉さんの知り合いができたと喜んだ。姉妹の方は、順調に進んでいた。サザンは、Aさんに、呼ばれたことがわかり、ちょっと黄昏た。
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