6-7 ガイア人の族長ガイ

 火星に帰ったサザンは、本当に久しぶりにラミアと再会した。ラミアは、怒るどころか、サザンに抱き着いた。


「この、浮気者」

 ラミアは、涙が止まらない。


「まだ、マーキングのなぞは、解けないんだ」


 二人の娘が、ラミアに近づいた。

 ウナは恐る恐るだった。ラミアは、二人とも抱きしめた。家族が、初めてそろった。


 祖母のナオミが、意識を広げた。


 巫女様


「パンドラさんね。たぶんアンがあなたの持ち主よ。どうしたい」


 暫くこのままでいいです


「サザン、聞いた」


「ちょっと待ってくれ、持ち主いるんだろ」


「魔力を持った人が怖いのよ。サザンとだったら、話もできる。レミーがいるから、そのうち慣れるわ。やっぱり、あなたは、女運がないわね」


「家族運は強いわ」

 ラミアが訂正する。


「そうね」と、笑う。


「笑い事じゃないです」



 ナオミは、サザンを無視して子供たちに話しをする。


「レミー、あなたはしばらく私と修行です。ウナ、サザンの面倒を見てください」

「おれが面倒見てるんだ」  

「サザンは、すぐ、女の人にちょっかい出されます。気を付けてね」

「わかった」


「おれの話は無視か」

「心配してくれてるの」

 そう言ってラミアがサザンの腕を取った。ラミアがいると、どうでもよくなるサザンは、黙ってしまった。


「ラミアごめんなさい。あなたが、サザンと一緒にいると、やはり嫌な予感がします。もう、行きましょう」


「待って、写真を撮らせて」


 ウナが携帯BOOKを出した。4人は、この家族写真を見るたびに、早く一緒に暮らしたいと思う。ナオミは、最初にサザンが巻き込まれた事件が、気になると言っていた。サザンはナオミが言っていたことが気になった。


 暫くしてレミーが帰ってきた。やはり、まだ、修行は、早いみたいだ。1年は、ウーナ草の効果で、パンドラとも話ができる。修行は、気長にやることになった。






 行きたくなかったプルコバに行ってウナのことが一段落し、レミーも帰ったと安心して家族三人で食事をした深夜、新たな訪問客が来た。


 ドンドンとアパートのドアを深夜ノックされた。それも、最初は、ドガンというからびっくりして起きたサザンは、眠い目をこすりながら、ドアを開けた。


「シャホシュ」


「うわー」


 目の前に、70㎝はあるハサミをカシャカシャさせている蟹型の亜人間が、ドアの前に立っていた。サザンは、アウトローだ。腰こそ抜かさなかったが、2、3歩後ずさりした。


「ショホフォフォ、レミ、シュワ」


 何を言っているかわからなかったが、レミーというのだけは、聞き取れた。


「どうしたの、お父さん」


「バッ、出てくるな」


 出てくるなと言っても、レミーとウナが寝ているところはロフトで、リビングと繋がっている。二人とも、父親の慌てた声に反応した。レミーが梯子を降りようとすると、また蟹型の亜人間が声をかけてきた。


「レミ」

「おじさん!」

「知り合いか?」

「うん」


 本当にこの娘(こ)達には驚かされる。サザンは、肩の力を抜いて、蟹型亜人間を部屋に招き入れた。


「ショオホホホ」

「出来るよ。ウナ、手を握って、本当は自信無いの」


 ウナが、レミーの手を握るとレミーが集中しだした。



「巫女修行、止めたのかい」


「うぅうん。巫女じゃないよ神官だよ。それに、まだ早いって」


「みんな待ってたのに来ないから、様子を見に来たんだ。大丈夫そうじゃないか」


 レミーが翻訳機代わりになるので、サザンも会話が聞こえるのだが、話が見えない。


「すいません、サザンです」


「おーラミアの。これは失礼。私は、ガイ。ガイア人のガイです」


「ごめんね、お父さん。今のは笑うところなの」


「いやいや、笑えないだろ」


 この名前を聞いたパンドラが反応した。サザンの左手が、焼けるように痛い。


「いつっ、どうした、パンドラ」


 サザン、私をガイに見えるようにして。


「いいけど」


 サザンはガイに左手をかざした。


 ガイ、私がわかる


「へっ?」


 パンドラよ


「え―――――――っ!」


「知り合いか?」


 この人が、ガイア人の長よ。私がクラゲから落ちたのに、探しもしないで。あなたが、私を放っとくから、バースは、滅びたのよ


「すまん、パンドラのことを知ったのは、火星に来てからなんだ。火星で復活した時、神官様に教えていただいた。オレの能力はそんなに高くないんだよ」


 知ってる。この、役立たず


「この通りだ」

 ガイが、土下座した。


 どうせ、仕事をさぼって格闘がどうのってやってたんでしょ


「・・・・・・面目ない」


 ああ、だんだんわかってきた。ガイは、レミーを迎えに来たんだ。それどころじゃなくなったがな


「お父さん、助けてあげて」

「そういってもな」

「お願い」


「ウナまで・・パンドラ、マイアに会いに行くか?」


 会いたい


「じゃあ、ガイを許してやれよ。クラゲに行くしかないだろ」


 ・・・・・・・、・・・・・・・、・・・・・・・、分かったわ。ガイ、もう謝らなくていいわ。マイアは無事


「ありがとう。いつか、挽回して見せる。マイアは、ガイア人の始祖になったぞ」


 始祖!


「鱗魚族(りんぎょぞく)だ。新しい魚人だよ。神官様の託宣で魚人に相性のいいのがいて合体した。海王様じゃないぞ、自然にだ」


 よかった


 ウナが、麦茶を持ってくると言った。4人で座って、パンドラの話になった。本当は、子供たちを寝かせたいのだが、興奮していて無理だろう。


「じゃあ、この時代に、パンドラの持ち主がいるんだな」


「そうだが、この世界になれるのに時間がかかる。ナオミさんに暫くこのままでいろと言われた」


「どれくらいだ」


「おれに聞くなよ。おれには魔力がないんだぜ」


「その割には、うまいこと回ってる」


「それは、そっちの解釈だ。パンドラにしても、ウナの本体にしても、おれから見れば、2億4千万年も苦しんでいたんだぞ。おれは地球人だ地球の暦だと気が遠くなる」


 同情してくれてたんだ


 しまった。本人と繋がってた


「いまのは?」


「ウナの本体だ。仕方ない、ガイとも挨拶しろ」


 ウナよ


「それだけか」


 私もガイのことは、怒っているの


「パンドラ、もしかして、こいつとよく話しているのか」


 今頃、気づいたの


 サザンが話せって言ったのよ


 ガイが、また、謝りそうになる。


「もう、謝らなくていいからな。ガイだけの責任じゃあ済まないのは、こいつらもわかってる。それに、済んだことだ。お前らも友達増やせ。クラゲに行くぞ」


 珍しく頼りになるんじゃない

 本当!


「レミー、ウナ、寝れないかもしれんが寝ろ。朝食任せたからな」


 アパートだけど、一応この家の主なんだよおれは


「ガイ、今日は、帰ってもらえるか。明日、ナオミさんと相談して、たぶんその後クラゲに行く」


「すまん、パンドラを頼む」

 それでもガイは、麦茶美味いなと言ってお代わりしてから帰った。肝が座っているのだけは、感心した。

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