6-4 初めての冒険

 3人で、バダのタラップを降りると光る空気が、バダの中に入ってきた。


「これは、光燐エアーと言って、魔法時代のバースに蔓延していたものだ。でもこんなに濃いのは、なぜかな」


「光燐石のガイア人がいたのよ。たぶんその性」

 ウナが、本体の知識で答える。


「吸っても大丈夫か?」


「光燐水が大丈夫だったぐらいだから平気よね」

 レミーが、おばあちゃんに聞いた話だと答える。

「そうなんだ」と、ウナ。


「そうか」と、頷きながら、アナライザーを見た。


 ここは清浄だと出ている。


「そうだな、事故があっても生還できそうだ。匂いもまだ感知できない。先に進もうか」


 二人の手を取って遺跡の内部に入ることにした。土の遺跡は、アリの巣のようなものだが、ここは、強化されて、外壁がある。重要物が置いてあったのは、間違いなかった。多分、この、ちぎれたような円形の外壁内部が、地下51層だろう。ほとんど、瓦礫しか見渡せない。


 3人とも、一番高級なハードのマスクで、息をするたびに、シューと、強制排気の音がする。


「レミー、ガーディアンの話は、聞いた事あるか」


「うん、生成クリスタルから、出てくるって。だから、倒しても倒してもいっぱい出てくるよ。でも、階の人数が決まってるからクリスタルから遠いとあんましいない。だけど、近いと、大変なんだって」


「そうか、何か感じるか」

「感じない」


「ウナは?」

「わたしも」


 サザンは、考えてみたら、この子達がいた方が、こういうところは、歩きやすいのかもしれないと思い始めた。


「父さんは、剣士じゃないからな。そんなのが出てきても戦えない。逃げるからな」

「うん」

「分かった」


「そうだ、ウナ、BOOKに映像を記録しろ。これで、25万クレジットは、いただきだ」


「やったね、お父さん」


 この子たちをアウトローに育てる気はないが、この年で、現場を踏ませてしまった。後でラミアたちに怒られるのは、必至だった。


「レミー、BOOKのウナを守るんだ。父さんが先頭を歩くから、後ろを頼む」

「そうする」


 自然とスリーフォーメイションができた。


 レミーが神官の特質を発揮しだした。後方が、魔法を使う。




「土の遺跡は、アリ族が作ったんだ。6代目巫女の遺跡だ。その割には、ここは、人間の建物っぽいな」

 サザンは、出来るだけ考えていることを口にするようにした。


「ここで、ゲートを開いてたんじゃないかな」と、ウナ。


「じゃあ神殿があったと言うことか、中央に向かうぞ」



「お父さん、何か感じる」

「レミー具体的に話せ」

「わからない」

「もっとわかったら、すぐ言うんだよ」

「うん」



 瓦礫で、道が悪い分、奥が良く見渡せる。中央は、広い空間になっていた。神殿だ。ここで、何かあったのは間違いなかった。今日は、ここまでにしようと思ったときレミーがまた何か感じた。


「お父さん、人が倒れてる」

「人だって、冒険者か」

「奥の、柱があったところ」


 3人は急いだ。しかし、人などいない。


「ここは、祭壇があったところだろう。確か、祭壇は、10メートルぐらいの柱の上にあった」


「あれよ」


 レミーの指さす先には、瓦礫しか見えない。でも、レミーが言っていることだ。そこ迄行き、瓦礫をどかした。ここのは、破片で、どかすことが出来る。三人は、いつの間に神殿の一番奥まで入っていた。


 一瞬きらっと光るものが見えた。サザンは、地球でやった事件を思い出してしまった。


「宇宙の宝石か、宇宙の宝石だな」


 宝石に話しかけても何も答えないのは知っているが、聞かずにはいられない。サザンは、これのせいで地球を追われた。


「この人よ」


「人だと?ガイアか」


「私には、光燐石に見えるんだけど」ウナが、この石の本質をとらえた。


「こんなにキラキラしている光燐石があるか」


「光燐石っていうガイア人よ」レミーもウナと同意見だ。


「おれも、宇宙の宝石に見える。こいつに意識があるんだな。とにかくこれは、レミーのおばあちゃんの仕事だ。連れ帰るがそれだけだ」


 そう言って、宇宙の宝石を拾い上げた。中で、光燐水が対流しているように見える。宝石としては価値あるものだが、サザンには、疫病神だった。


「帰るぞ!」


「待って、奥に階段がある」

 今度は、ウナだ。BOOKの役割をまだしていた。


「わかった、お手柄だぞ、レミーも」

 二人を撫でた。


「いいか、宇宙の宝石は、人を惑わすことがある。悪いものは、ほとんど魔法時代に光の海に帰されたが、全部じゃない。こいつがどっちかは、分からんが、魔法時代の崩壊とかかわっているかもしれない。だから、今日は、ここまでだ」


 二人は神妙に頷いた。今日は、ちょっと奥まで入ったし、成果もしっかりとあった。


 レミーと、ウナは、この冒険に興奮していた。それで、自分たちがごまかしていた時間をすっかり忘れていた。今日は、3日目だった。

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