6-2 レミーはウナのお姉さん

 火星と木星を行き来する大動脈は、5つある。そのうちの一つが、ベスタ航路だ。ケレス連邦と月、地球、金星合同のバーム連合の航宇域との境にある航路で、とても栄えている。中間にあるスペースコロニーのエゴラスから少し離れたところにベスタはある。ここは、ケレス連邦だ。


 入国手続きを済ませた二人は、もう一度、宇宙艇バダに乗り込んだ。バスーが教えてくれた座標を確認するためだ。本格的な探査は、明日からになる。


「内殻につながる洞窟があるな」


「何で、ケレスは、これを放っておいたんだ」


「さあな、とにかく明日だ」


 二人は、洞窟には入らずコロニーにとんぼ返りした。


 この時、周りの宇宙空間は、大変な騒ぎになっていた。ケレス、火星、バーム軍の戦艦が、宇宙艇バダに見つからないように大移動して、ベスタの裏に集結した。

 この洞窟にしても、実際は、最近採掘されたものだ。ベスタテイルと命名された洞窟を採掘するのに、ほとんどの魔女魔導士が導入された。機械だと何年もかかるものを数か月で掘り切った。


 だが、ここを探査したいと言う冒険者はいなかった。なんせ、何十年も挑戦して死体の山を築いたダンジョンだ。少しぐらい状況が変わっても、最初の生贄になりたいやつなどいない。ましてや、プルコバのウーナ草がらみだ。神官クラスの力を持った者ですら怖がった。


 しかし、巫女の託宣は、下された。このアウトローな二人が選ばれた。


 夜は、酒場で、女あさりだ。ものすごい美女達を捕まえたのだが、寸でで逃げられている。それもそのはずだ、彼女達は腕利きのスパイだった。仕事にしても、女にしても話がうますぎるのに、分からない二人。そのあたりは、ラミアと、ラミアの母親で、ガイア人の巫女ナオミがよく知っていた。いいように手の平で転がされていた二人だ。翌朝、同じような目に合った二人は、自分の失敗を相棒の失敗として、大笑いした。


 ラミアに言わせれば、「本当に単純なんだから」と、あきれられただろう。



 サザンは、いまだにラミアのマーキングのなぞを解けていない。二人は一緒にいられなかった。しかし、たった二回の合体で、ラミアは、身ごもった。そのことがわかってからラミアは、白い蛇に変身せず、出産するまで、ずっと人形で通した。娘が生まれてからも、このことを公にせず、サザンにさえ黙って育てた。サザンには自由でいてほしかった。


 ところが、サザンが、ニレンから、6歳の女の子を連れ帰って自分の娘にした。怒ったり泣いたりした挙句、家族会議になった。そのとき、あろうことか、娘が「私もお父さんと暮らす」と、言いだした。相手の娘もクローンの成長過程で考えると自分と同じ6歳で、姉妹になりたいと言う。


 最後は、ナオミおばあちゃんの託宣を聞くしかなかった。


 しかし、こんな時に限って託宣が出ない。ナオミおばあちゃんは、レミーに、

「あなたのことが公になると、研究所には通わなくてはいけなくなるし、ガイア人の全氏族に、挨拶をしなくてはいけなくなる。とっても大変よ」

と、くぎを刺したのだが、聞かない。


 レミーは、もう、この時、神官の兆候が出ていた。母親と祖母に、初めてテレパシーを使って、それでも行くと訴えた。二人はため息をついたが、祖父マークの決断で、レミーをサザンに預けることにした。


 ニレンからサザンについてきたウナも魔法時代の記憶を持った少女だとコアな人の間で有名になった。それも、ウナ本人と繋がっているとあって、強制力を発動しそうな勢いだった。しかし、サザンがトーマに相談して一計を案じたので、強権は発動できず。ウーナ草は、火星で有名になってしまった。トーマがウーナ草をやめていたのが大きかった。



 ウナは、最初、本人と繋がっていただけに、大人びた発言を繰り返していたが、今の世界に興味津々でいろいろなところに行きたくて仕方なかった。


 そこに、レミーが現れた。


 最初はサザンを取り合っていたが、地元で、いろいろなところを知っているレミーと一緒に遊ぶうちに仲良くなった。そして、ちょっとだけお姉さんのレミーが作った料理に興味を持ち、今に至っている。ウナは、匂いに敏感で、それを操る能力を持っている。研究所の話では、たぶんその気になれば、相手に幻覚を見せることもできるだろうと言っていた。


 ウナは、レミーのいい匂いがする料理にはまった。


 周りの大人が、二人の実態自体は隠したので、地元で、伸び伸びと育つことになる。ただ、まだ学校に行けていない。二人とも今の時点で、ハイスクールの学力がついてしまったが、普通の友達も欲しいと言う。姐さん達の子供も年が近い。いいんじゃないかと、サザンは思っていた。

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