1-3 始祖

 朝起きると、ラミアは、全裸で、横に寝ていた。人形に戻っており、天使の寝息を立てていた。可愛さに、このやろうと思って鼻をつついた。


「おはよ」

「元に戻ったな」

「朝食作るね。サザン向こう向いて、着替えるから」

「わるい」

 いつもの会話になった。


 結局昨晩は、ラミアを抱いて寝た。まあ、高級な抱き枕だ。それなりに抱き心地がよかった。朝食を食べながら、ラミア族の話になった。


「おまえ、ラミア族のくせに、ラミアって名前、変じゃないか」

「私が、始祖みたい。だから両親がいないの」

「始祖って、偉いんじゃないのか」

「わかんない。だって16よ」

「同い年だったのか。でも、そうだよな、そんな感じだ」


「魔法時代に、白蛇石と人が重なって今みたいになったんだけど、私には、記憶がないの。だから、巫女様預かりになって育ててもらった。今は、人の中に居場所を見つけなさいって言われた。ここにいていい?」

「いいよ。飯、うまいし。巫女様直伝なんだな」

「そうよ」


「ちょっと聞きにくいこと聞いていいか」

「うん」

「なんで、興奮すると、白蛇に戻るんだ」

「子供を作るためよ」

「そりゃそうだが、人形のままでいられないのか」

「サザンのエッチ」

「だってそうだろ」

「そうね、でも、キスはできたわ」

「それ以上は」

「わからない。今晩試してみる?」

 まるで、新婚の会話だ。初夜は、無理そうだけど。




 また、酒場で、姉さんたちに囲まれた。


「昨夜は大丈夫だったでしょう」

「どうだった」

 また正直に話した。

「キスした」

「うんうん、それで」

「ベッドで抱いた」

「やったじゃん」

 また背中をバンバン叩かれた。

「サザンも、やっと一人前になったかー」


 などと、勝手に了解して行ってしまった。でも、ラミアの本性は、話せない。これでよかったと思った。


 ところが、酒場の親父は、もっと聞いてきた。親父には、ラミアのことを話してしまった。それを聞いた親父が慌てた。


「サザン、ラミアをここに連れてこい。話したいことがある。それから、みんなには、本当の名前を言うなよ。ラミーだったか、近い名前だがそれでいい。解ったか」と、怒るように言われた。


 普通そうだよなと、思ったが、名前を秘密にすると言われて、ちょっと安心した。


 携帯BOOKで連絡を取るとラミアがすく酒場にやってきた。親父に、「ちょっと借りるぞ」と、言われ、ラミアを預けた。そして、戻ってきた親父に言われた。


「サザン、ラミーもここで働く。家庭料理ができるそうだ」

「知ってる」

「なに、御嬢さん方の夕食を作ってもらったら帰すさ。それに、ラミーが働いた分だけ、早く上がっていいぞ。空いている娘(こ)に手伝わす」

「本当か」


「1ヶ月、1ヶ月だけだからな」

 期限付きの意味は分からないが、特例っぽい。もっと火星をガイア人を知らないといけなかった。




 その晩も挑戦した。やっぱりキスまではうまくいくが、興奮するとラミアが本性を現した。その上、噛まれた。キスマークのようなものだ。翌朝には消えていた。それで、気づいたんだが、いつの間にか、左わき腹にもその痕があった。たぶん、初日のだろう。この痣だけはいつまでも残った。


 ある日などは、何もしないでベッドに入った。しかし、抱きついてくる。当然胸は当たるしいい匂いもする。つい胸をもんでギュっとした。

「せっかくうまく行ってたのにー」

「バッ、おれだって男だ。プラトニック、ラブなんかできるか」

「じゃあ、明日は後ろ向く」


 そして次の夜、本当にそうしたのだが、えー、あそこにテントが立った。

「なあに、これ」

「バッ、触るな」

「エッ、エェッ?」

「だから、振り回すな」


 普通に寝ることができない。その日は、ラミアが積極的になった。シュルシュルッと、おれの体に巻き付いて離れない。それもぎゅうぎゅう締め付けてくる。仕方なく、それよりはましな方法を試した。


 ラミアは、始祖だ。変体するのは2段階ある。1段目は、頭が、かろうじて人の面影を残している。それを超えるとただの蛇に見える。

 おれは、無理やりキスした。ちょろちょろ出す舌を思いっきり吸った。思った通りラミアは大人しくなり、おれにされるがままになる。


 もうちょっとなんだけどなー

 などと思いながら、気持ちのいい抱き枕を抱いて寝た。




 昼間は、グラシアスオアシスの観光をした。遊園地に行きたいというからついて行った。水族館は、ジュラ紀の生物展で、にぎわっていた。本物の生きた化石に驚いた。


「この子たちって、私の時代の生き物たちなんだって」

「記憶ないんだろ」」

「うん、でも、博司おじさんが教えてくれた」

「博司おじさんって?」

「この子たちを保護した人」

「じゃあ、ガイア人」

「そうだけど、ちょっと変わってて、人間がベースなのよ」

「ラミアもそう、見えるんだけどな」

「そうなのかな、そうだといいな」


 なかなか合体できない二人だった。

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