群雄割拠
「それではスモウワールドカップ二次予選で各ブロック2位までの成績を残し、スモウワールドカップ三次予選へと進む通過者を振り返ってみましょう」
アナウンサーがそう告げると、また画面は別の映像へと切り変わる。
画面には土俵の上、雲龍型の土俵入りを見せる奔王悟理がアップで映っている。
これまでの奔王の戦いがハイライトで次々と切り替わる。
アナウンサーのRRスタインと解説の玉竜鬼で番組は続く。
「言わずと知れた大相撲第99代横綱、奔王悟理選手。奔王宣言によりスモウワールドカップに革命を起こした張本人であり、優勝候補の一人。一次予選でアメリカ代表クリフ”テンペスト”ウィリアムス選手やコンゴ民主共和国代表ダビデ選手などの強敵と名勝負を繰り広げ、二次予選ではシンガポール代表、備前丹・呉・歩の操縦するパワードスーツタイプのロボット、機甲力士・雷電と対戦し、取り直しからの危機一髪の勝利で一次予選と二次予選を全勝で通過しています。玉竜鬼さん、奔王選手は今後どう戦っていくと思われますか?」
「参加選手それぞれがどう攻略するかを作戦を考えている相手が奔王関ですから、奔王はすべての選手を侮ることなく戦わなければなりません。奔王の課題は思った以上に重たいと見ていいです。日本人としては優勝に期待したいところですがねぇ」
映像が変わり、今度は雷電のハイライトが流れる。
「続きまして、先ほど話に出ました、シンガポール代表の機甲力士・雷電。プロゲーマー志望でシンガポール工科大学の大学生、備前丹・呉・歩の廃人的操作能力と同大学院生パウル・ガラグインの設計とプログラムにより奔王の動きをトレースできるハイテクノロジー力士です。奔王戦の最後にはゲームキャラクターのような動きも見せたあたり、まだ引き出しがあるのではと予想されます」
「最後の正拳突きですが、ゲーマー志望ということなので立ち技も得意なのかもしれませんね。打撃戦の打ち合いも少し楽しみですね」
「なお、ガラグインの設計したアンドロイド、ウジェーヌが操縦する量産型雷電も予選を通過しております。量産型雷電も雷電同様のプログラムが使えるということで侮りがたいです」
続いて入場するアダムの映像が映り、取組のハイライトが流れる。
「スイス連邦代表、20万グラムの赤ん坊、アダム選手。堅実かつ思い切りのいいパワフルな相撲で全勝通過です。同じように堅実な相撲が売りであった量産型雷電を堂々たる真向からの相撲で勝利しています。気になる選手ですがスイス連邦政府の機密で生活している選手ですので情報は非常に少ないです」
「この頭のでかさと胴体のずんぐりむっくり具合は力士に向いてますね。これは強いですよ!」
土俵上でラリアット、クロスチョップを繰り出し、大騒ぎしているのはジョルジオ・ブラックタイガーだ。
「先ほどの取組では惜しく? も負けてしまいました、メキシコ代表ルチャリブレのスーパースター、ジョルジオ・ブラックタイガー選手です。有識者の間では実力ある選手として有名なのですが、盛り上がりを優先して足元をすくわれることもしばしばなのだとか」
「いやー私は好きですよ。ロープをくぐるジェスチャーで土俵に上がるのはこの男ぐらいのものです。私なんかがやったら親方から殺されますよ」
続いて一撃必殺の拳でKOのハイライトが絵になるアンドウ・オホリ。
「同じく先ほどの取組ではなんだかおかしいことになってましたが、この人も屈指の実力者です。ブラジル代表、空手界の銀河王子、アンドウ・オホリ。打撃系力士というジャンルでは最強の存在とも謳われています」
「空手世界大会観たんですが、アンドウは実は蹴り技も得意なんですよ。
巧みなボクシング技術と連携が生きる膝蹴りにローキック、強烈な打撃攻撃で相手を破壊する男はヴィケトール。
「一次予選ではまさかのハイキック一閃で猛龍に敗れましたが、リベンジ猛龍の一念で二次予選では全勝通過。デンマークからやってきたヴァイキングの末裔、ヴィケトール・ニールセン」
「攻撃力重視ですが、組まれた時に押し負けない腰の強さも素晴らしいですね」
デニムを履いたゴリラが雑誌を読みながらエスプレッソを飲んでいる。ダビデのオフシーンだ。
そして取組、お手本のような王道の相撲に独自の技が織り込まれる。
「奔王をギリギリまで追い詰めたゴリラ、コンゴ民主共和国、ダビデ選手。
「とにかく今大会で注目の選手ですね。人気が凄いですよ。うちのかみさんもダビデグッズ集めてますからね」
映像はなぜか牧場。
角のはえた雄々しい牛と力比べの押し合いをし、牛を転がしている汗だくの農夫。健康的に小麦色の日焼けした巨体の男だ。
取組では仕切り直後の強烈なかちあげをかまし、押し相撲で重量級の力士を易々と土俵の外へ追い出す。
「オーストラリアの大農場、ホッズマンビーフの専務兼力士、オーストラリア代表、カントリー・ホッズマン選手。全身筋肉のように品種改良した煮込み用ブランド牛ゴールデンワーク牛を育てる際に、牛のホルモンを活性化させるためにホッズマンは牛と相撲を取っているそうです。一次予選、二次予選ともに押し相撲で全勝しています」
「かちあげが物凄い威力です。これは下手に直撃したら首が吹き飛びそうですよ」
次はうって変わって突っ込んでくる相手をひらりとかわす。変化相撲が巧みな使い手だ。
立ち合いの瞬間に右へ左へとかわし、腕や頭をさばいて相手の態勢を崩す。
「またも偶然牛関係の力士です。スペイン代表、副業はマタドールの力士、パブロ選手。184センチ93キログラムと力士としては小柄ですが、驚異的な瞬発力で相手選手を翻弄します。ちなみにイケメンであることも相まってスキャンダルが絶えない色男です」
「牛と力士とスペイン女を同時に何人も相手してるんですね。情熱の国スペインの男を象徴しているようですなぁ」
宙に浮く樽。宙に浮く樽。それを放り投げている男。
土俵の上、力士を放り投げる男。
「樽投げ世界一、ドイツ代表、レオンハルト・ヒューズト選手。蒸留所勤務の素朴な印象の大男ですが、樽を投げさせればこの高さ。そして、この腕力を生かしての相撲は、掴まれたら最後、回避不可能の真後ろに放り投げる『うっちゃり』が待っている。一次予選、二次予選ともに全勝で通過です」
「この背筋を見てください。これはすごいですよ。優しい顔したモンスターですよ。彼と組んでしまったら終わりです」
立ち合いで勢いよく突っ込む力士を紙一重でかわす、長い髭の小柄な老人、触れるか触れないかぐらいのところ、手で撫でるように相手力士を転ばす。自らの意志で宙に飛び込んでいるかのように力士たちは転がっていく。
「中国代表、謎の老人、
「詳しいデータが知りたいですね。気になります」
陸上競技場、数百キログラムあろうかというコンクリートの塊をバーベル状に加工したものを持ち上げ、顔を真っ赤にして走る男。
土俵上の力士を立ち合いで吹き飛ばし、組み合ったら楽々と投げ飛ばす。
「カナダ代表、ストロングマンコンテスト世界一、ザ・ビッグダディ、オーガット・コーリング選手。単純明快な怪力で気持ちよく勝利してくれる力士です。一次予選、二次予選ともに全勝」
「わかりやすい強さには好感が持てますね。立ち合いで変化された時に空回りしてしまうと一転してピンチになりそうなとこが玉に傷ですが、そこさえ注意していれば攻略の難しい力士でしょうね」
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