第4話

私達が裏路地の角からこっそりと様子を伺うと、やはり黒服たちがゴミ山の前にたむろしていた。二人はゴミ山を調べ、一人はあたりの様子に気を配っているようだった。

「やはり居るな。連中は何なんだ」

「あいつらは僕の星の政府の手先だよ。僕が持っている機密は統合政府の体勢を揺るがすものだからね。連中は躍起になってるんだ」

「なるほどな。権力の犬どもというわけか。いけすかん」

「で、どうするんですか」

「こういう時は下手な小細工は意味が無い。正面突破だ」

 そう言ってツグミさんは路地におどりでた。

「ちょっ、何やってんだよ」

 慌ててシノが止めに入るがもう遅い。というかシノも姿を晒してしまった。シノは青ざめる。仕方ないので私も路地に出た。何というか流れに乗ったのである。一人だけ仲間はずれは嫌である。

 黒服たちは私達を見ると動きを止めた。見張りの男は棒立ちで私達を見つめ。調査をしていた男たちも手を止め、私達を見た。

「お前ら、そこをどけ。それはこの男のものだ。返してもらう」

「ちょっ、何言ってんだよ」

 男たちは何も答えない。だんまりである。しかし、不意に懐からさっきのごつい銃を取り出した。銃口はまっすぐ私たちに向けられている。

「ふん。やはり話し合いなど無駄か。まぁ、はなからこっちもそのつもりだがな」

「どどどどうすんだよ」

「力づくだと言っただろうが」

 そう言ってツグミさんは砲身を展開した。3つの光のレールが現れる。

「やられる前にやるってことか。しびれる」

「そんな野蛮な思考は持ち合わせていない。大体、もう構えてるんだからどう足掻いたって撃たれるんだ」

「え、じゃあ、僕達どうなるの」

「安心しろ。大丈夫だ」

 ツグミさんはそう言うがシノはあまり納得できていなかった。そして黒服たちはそんなことはお構いなしにごつい銃をぶっ放した。緑色い光線が3本、私たちに向かって飛んできた。

「わぁあああ。本当に大丈夫なのこれ」

 シノは情けない声を上げながら思い切り尻から倒れた。情けない姿だった。3本の光線が真っ直ぐそれぞれ私達に飛ぶ。

「ぬるい」

 ツグミさんが言うとその周りの3つの砲身がぐにゃりと曲がり半円を描いた。そしてそれは三本の光線をそれぞれ受ける。するとその砲身に沿って光線は軌道を変え、そのまま飛んできた方向、すなわち黒服たちに飛んでいった。砲身は光線を跳ね返したのだ。

 元通り戻ってきた光線を二人は躱したが、一人はあえなくうけることとなった。その一人はもんどり打って地面に倒れる。ピクピクと痙攣して動かなくなった。

「捕獲用の装備か。それにしても反応のない連中だ。もうすこし私の能力に驚かないのか」

「連中に感情はないよ。僕の故郷では社会を維持するために人間から感情が奪われているんだ。だから何も感じないのさ」

「大したディストピアだな」

 対する残りの黒服たちは再び銃を構える。まだやる気らしい。普通なら大した根性というところだが、感情がないから機械的に職務をこなしているだけなのだろう。

「めんどうだな」

 そう言ってツグミさんは砲身を再び直線に伸ばした。その上に長細い光球が発生する。

「その装備ではこの砲弾には勝てんぞ。とっとと帰れ」

 ツグミさんは言うが黒服たちは動じない。引き金に指をかける。しかし、光線が出ることはない。その銃身が丸い光球に覆われたからだ。それは青白い火花を散らしながら光り、やがてそれが消えると銃身はきれいさっぱり消え去っていた。断面はきれいなものだ。これがツグミさんの砲弾だった。

「そら、とうとう装備もなくなったぞ。まだ続けるか」

 男たちはしばらく黙って突っ立っていたが、やがてくるりと向きを変えた。そして倒れている一人を背負うと車に乗り込み去っていった。戦略的撤退というやつだろうか。勝てる見込みがゼロになったので去ったのだろう。

「やれやれ、大したことはなかったな」

「す、すごいなあんた。オリオン船団のESPはここまでのものなのか」

「邪魔者は消えた。とっととブツを回収しよう」

「あ、ああ」

 シノはゴミ山に向かう。ツグミさんは「ふぅ」と息を漏らした。

「ツグミさん疲れたでしょう」

「まぁ、大したことはしてないから、ちょっと走った程度だがな」

「はい、おしるこ」

「お前、これ冷えてるじゃないか。あったかいのはないのか」

「ないよ」

「そうか・・・・」

 ツグミさんは諦めておしるこをすすった。

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