天の宮の詩の音

ファルノーセット

声は誰にでも有る。

その種類は多様であり、似ているはずの色はなぜかそれぞれの銀を穢す。

感動を乗せて歌う。

夜空を砕くように歌う。

言葉が届くように歌う。

宝物を誇るように歌う。

勇気を灯すように歌う。

在処を探すように歌う。

魔法を掛けるように歌う。

情熱を届けるように歌う。

感情が溢れるように歌う。

奇跡が照らすように歌う。

旋律が駆けるように歌う。

時間を止めるように歌う。

空間を響かせるように歌う。

鼓動が染み渡るように歌う。

故郷を忘れないように歌う。

運命に誘われるように歌う。

静寂を切り裂くように歌う。

約束を守り抜くように歌う。

意味を無くせるように歌う。

幻想をこの陽炎の中に封じ込めるように歌う。

夢想をその揺らめきに抑え込んだように歌う。

激情をどこまでも綺麗なままで解き放つように歌う。

悲劇をきっといつの日にか忘れられるように歌う。

此処にある色彩を誰かに問いかけるように歌う。

恐怖を跡形もなく溶かしてしまうように歌う。

衝動を必死に未だ抑え切れないように歌う。

幸福を遥かに高く積み上げるように歌う。

絶望を吹き飛ばしてしまうように歌う。

希望が降り注いで満ちるように歌う。

ここに有るものを叫ぶように歌う。

物語を紡ぐ語り部のように歌う。

足跡を塗り替えるように歌う。

名前を繰り返すように歌う。

存在を教えるように歌う。

祝福を祈るように歌う。

意味を知らずに歌う。

未来を目指し歌う。

愛を願って歌う。

星を眺め歌う。

天を今歌う。

私を歌う。

今日、私は果てしない物足りなさを慰めるように歌う。