CrystalCherry

永遠に枯れない桜の木は、結晶でできている。


その桜は透き通り、そして光を反射して美しく咲いていた。


それは戯れに人の心を動かして。

それは徒に人の視線を惹きつけている。


故に、だからこそこの花は咲く。

だって、この花は子供を造らない。


悠久に咲き誇る桜の花が、いつか巡った果て。


この桜の花は舞うことがなく、そして劣化する事はない。


これはただ其処に咲いている。

これはなぜ此処に咲いている。


然し、なおもこの花は此処に咲く。

其処に、この花は咲くと決めたのだ。


最後に残らない桜の枝の、最後の願いを聞く。


この桜の枝は、そして枝を揺らし願いの調べを響かせた。


あれは美しい生命いのちで自分自身である。

あれは醜い幻想ゆめでも自分自身だった。


きっと、この桜は自分を知ったのだ。

愛を、散りゆく事と咲き誇る事を。


最後に残った色とりどりの、欠片と破片に光射し。

照らされた桜がふわりと舞って、輝きながら消え去った。

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