第3話
ミリがパリにいったのは昨年だ。恋人と2人で行った。パリに決めた理由は深い意味はなかった。欧州で行きたいのは、イタリアかフランスで。それはきっと日本の20代の女性のおおよその見解とははずれていないだろう。たまにイギリスかスペインが入るくらいで。そして、たまたま安いチケットが取れたのがフランスだった。旅行でフランスといえばパリであり、南欧であることはない。滞りなく準備をし、滞りなく空港に向かい、何事もなくパリに到着した。お互い休みをあわせた年末の一週間の休みだった。マッサージは年末は実はそんなに混んでいない。人は、忙しい時には自分の疲れさえも忘れてしまうのだ。ゆえにミリは心置きなく年末に休みをとった。彼はどんな仕事をしているのか知らないが、有給の1日か2日をぶつけると休める仕事だったのだろう。2人は長期宿泊型のホテルにとまった。すなわちキッチンがある。2人はマルシェでトマトを書い、チーズを買い、クレソンを買った。そしてパン屋ではバゲットを買い、酒屋でワインを買った。幸せなパリの日々だった。昼は美術館を訪れ、あるいは、町中を散策した。2人ともなぜかエッフェル塔や凱旋門には興味がわかず、外から眺めるだけだった。それよりもセーヌ川の辺りを延々と歩くのを好んだ。あるいは、古本屋で英語の本を探して、読めもしないのに買って、その肌触りを楽しんだ。
そんな2人の幸せな日々に変化が訪れたのは4日目のことだった。
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