第33話「妥協案」



「マサヤ、私はこれでも本当に心配したんですよ? 本当にマサヤが負けて私達があんないけ好かない男のパーティーに入ることになったらどうしようと……」

「なぁーに、結局は勝てたんだから良いじゃないか! それにやっと俺の武器も取り戻せたしな!」


 俺達はミツルギとの決闘に勝利した後、戦利品のエクス・カリバーを貰って報復とかリベンジとか面倒くさい事を言われる前にとっとと逃げてきた屋敷へ帰ってきた。

 すると、マリアがニマニマと笑みを浮かべながら声をかけてきた。


「そうよね~~勝ててよかったわよね~~だって、私達『美少女』なんだもんね~~プープププのプー♪」

「うなっ!」


 そう面白そうに笑うマリアの声を聞いて俺の思考は完全に停止した。


「ああ、そう言えば言ってましたね。マサヤが私達は『美少女』だと!」

「う、うむ……マサヤ? その気持ちは嬉しいのだが私達は仲間であってだな……」

「だぁあああああああああああ! わわわ、分かってる! ただ、あれはだな! そのあのムカつくイケメンがお前らを仲間にしようと言うのが気に入らなくてだな!」


 すると、またマリアが余計な事を口走った。


「そうよね~~だって、マサヤは私達が他の誰かに取られちゃうのが嫌なんだもんね~~プッププのプー♪」

「ま、マサヤ……別に私はそんな好意をぶつけられてっも嬉しくなんか無いんですからね?」

「わわわ、私はだな! 確かにあんな男の仲間になるならお前の仲間の方がいい! しかし、それは騎士としての決意であって!」

「あああああああ! だから、違うって言ってるだろう! るりりん、体をくねくねさせても説得力がねぇんだよ! アプリ! さっきからお前の無駄なツンデレがウザイ! それに、マリアいい加減にしろ! いや、マジでもうお願いします……」


 そして、落ち着いて約十分後……


「しかし、マサヤ。あの勝負で使っていた『動くな』とか『目を開けろ』などの命令はなんだったのだ? 何故か相手はマサヤの言うとおりに行動したしたし最後もマサヤの命令で自爆したじゃないか」

「ああ、アレは俺の新しいスキルだ。少し前に親切な『大道芸人さん』に教えてもらったんだよ『ヒュプノ』ってスキルで相手を簡単な催眠状態に出来るんだ。お前らにはこのスキルのこと言い出すタイミングをすっかり忘れていたよ」

「ふへ~~中々便利なスキルじゃない」

「なるほど、そういうスキルだったのか」

「親切な『大道芸人さん』ですか……」


 俺の説明にマリアとアプリは納得した様子だったが、るりりんだけは俺の言う『大道芸人さん』に心当たりがあるような表情をしていた。紅魔族は頭がおかしいが知能は高いというし、案外るりりんは俺にこのスキルを教えてくれた悪魔に気付いているかもしれない。

 まぁ、気付いていたとしても悪魔嫌いのマリアと頭の固いアプリにバレなきゃいいや。


「さて、私はもう風呂に入ったので今日は部屋で休ませて貰う」

「ああ、お休み」

「「おやすみなさい」」


 アプリがそのまま自分の部屋に行ったのでこれで今日は解散の空気となり、るりりんもマリアも屋敷の中でごろごろとしだす。俺はそれを見て自分も風呂に入って寝ようと思い屋敷の浴室へと足を向けた。


「あれ、マサヤもこれからお風呂に入るんですか?」

「ああ、マサヤもってるりりんも?」

「ええ、私もこの後直ぐにお風呂に入るつもりでしたから」

「ええ~~マサヤもるりりんもお風呂入るの? 正直、私だってアプリに先にお風呂入られちゃったから今すぐにも入りたいんですけど? ねぇ、入るんだったらどっちが咲きでも良いから、ちゃちゃっと順番決めてよね?」

「うーん、そうだな……じゃあ、るりりんが先に入るか? 俺は正直言ってマリアの後、一番最後でもいいぞ?」


 皆の残り湯を味わえるからな。


「その心配は要りませんよ」


 しかし、るりりんは俺の提案を却下した。


「え、まさか……浴槽のお湯を全て流す気なのか?」

「へ? マサヤは何を言っているんですか?」

「いや、何も……」

「ちょっと、マサヤさん……?」


 怖い! るりりんは俺の失言に気付いていないけど、マリアの奴は無言の笑顔で何かを察した顔をしてやがる! その笑顔怖いです!


「そ、そんなことより! 心配はいらないってどう言う事だよ。るりりん?」


 すると、るりりんはとんでもない提案を俺達に出した。


「どう言う事も何も、この三人で皆一緒にお風呂に入ればいいじゃないですか?」


「「ええええええええええええええええええええええええええ!」」



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