第23話「アクシズ教徒」
「実は私、このトライアルで住宅の販売などをしております」
「なるほど、不動産屋ってことか」
あの後、俺達は近くの酒場によって詳しくおっさんの話を聞くことにした。どうやら、話を聞くとこのおっさんはこの町で不動産屋をしているらしいのだが、つい最近になって販売中の屋敷に大量の幽霊が住み着くようになったのだ。
最初はただの迷い霊だと思い町に住むエリス教のプリーストに除霊を頼んだのだが、どう言う事かその屋敷には除霊しても直ぐに大量の幽霊が住み着いてしまうのだ。
困ったおっさんは他のプリーストに除霊を頼もうかと思い悪い意味で有名なアクシズ教のアークプリーストに除霊を頼もうかと思ったけど、ギリギリで考え直して再びエリス教のただのプリーストに除霊を頼んだ。しかし、結果は同じで除霊しても再び幽霊が住み着き、困ったおっさんは思いつめて、この町にいる唯一のアクシズ教のアークプリーストに除霊を依頼しようとしたけど、アクシズ教のプリーストに除霊を頼むくらいならいっそのことそんな屋敷は壊してしまえ! っと、思ってギルドに屋敷の解体を相談したのだと言う。
「なるほど……それでギルドからこの町で唯一、炸裂魔法の使える紅魔族のアークウィザードの私が紹介されたと言う事ですか」
「はい、そういうことなんです」
すると、話を聞いていたマリアが口を出してきた。
「ねぇねぇ、さっきの説明さりげなくアクシズ教をディスってないかしら? てか、今の説明にアクシズ教のくだりを入れる必要性無いわよね? しかも、このおっさん三回も私に依頼しようとして考え直しているのだけど、これはケンカを売られていると取っていいのかしら?」
「あ、あの……この方は?」
マリアの言葉に戸惑うおっさんに俺はマリアの事を紹介した。
「コイツは俺のパーティーのマリアだ。因みにアクシズ教徒のアークプーストでもある」
「どうも~♪ この町で唯一の悪い意味で有名なアクシズ教のアークプリースト、マリアちゃんでーす♪」
「ひぃいいいいいい! あくぁああああ、アクシズ教徒! 悪霊退散! 悪霊退散!」
紹介した瞬間、おっさんがものすごい気負いで地面に伏せてエリス教のお守りを握り締めマリアに突きつけた。
「ちょっと、誰が悪霊よ! てか、私の扱いおかしくない! 私はこれでもこの町で一番実力があるアークプリーストなのよ!」
「っと、言っておられますが……アプリ、どうしてマリアはこんなに恐れられているんだ?」
「ふむ……そもそもエリス教が国教となっているこの国ではアクシズ教と言う存在自体が畏怖すべき存在になっていると言っても過言ではない。しかし、ここで勘違いしないで欲しいのはこの国の人間がアクシズ教徒だからと言って彼らを恐れているわけでは無いのだ。むしろ、エリス教の人間は『アクシズ教』という教え事態は、まぁ信仰する教えは人それぞれだよね。っと言って達観さえしている。では、何故アクシズ教の人間がここまで恐れられるのか? それは一重に言ってこいつらアクシズ教徒自身の所為といっていいだろう」
「そうですね。エリス教徒はアクシズ教徒なんか気にしませんが、逆にアクシズ教徒はエリス教徒を目の敵にしていますから、彼らにエリス教徒だと知られるだけでありとあらゆる嫌がらせをエリス教徒は受けてしまうのですよ。だから、エリス教徒はアクシズ教の人間を恐れているのです」
アプリと、るりりんの二人は断言した。
「おい、マリア……それは一体どう言う事だ? もしかして、お前もこの町でエリス教の人達に何かしていたりするのか?」
「な、何よ! 別に私は何も悪いことなんかしていないんだからね! ねえ、おっさんそうでしょ? 私別にエリス教に変なことしてないわよね!」
切れながら尋ねるマリアにおっさんは恐る恐ると――……
「先日エリス教の教会に行った時にアクシズ教を名乗るアークプリーストが『アンタ達! そんな教えを鵜呑みにしたらいけないわ! エリス教の教えは嘘八百よ! 何故なら、エリス教で崇められる女神エリスは胸をパットで誤魔化しているから! 自身の可愛い信者でさえくだらないプライドで胸のサイズを誤魔化す女神エリスの教えが真実であるはずが無いわ!
そう、本当の教えはアクシズ教なの! 我らが女神アクア様こそがこの世界で唯一無二の正しき教えなのよ!』っと、言って乱入し抑えようとした信者を殴り飛ばしてあわや乱闘騒ぎに……他にもエリス教の集会があるたびにさまざまな妨害工作と言う嫌がらせを……」
語るおっさんの表情はそれはもう苦労が沁み込んでおり「ああ、このおっさん本当に苦労したんだな……」っと、無条件に俺を納得させた。
「お前……ちょくちょく、集合に遅れると思っていたらそんなことやっていたのか?」
「しょうがないじゃない! エリス教徒への妨害はアクシズ教徒としては立派な義務なのよ! それに女神エリスの胸がパット入りなのはアクア様の名言をまとめたアクシズ教の教本にも書いてあるくらいの名言なんだから本当なのよ!」
ウソつけ……いくらなんでも女神が胸をパットで誤魔化すかよ。むしろ、俺からしたらあのアクアって駄女神の方が他の女神を陥れるためにウソをついているって思うわ。
「本当、ウチの駄プリーストがすみません。これからそんな事が無いようによく監視します」
「ちょっと! 誰が駄プリーストよ!」
お前だよお前! お前以外に誰がいるってんだ!
「は、はぁ……それで、依頼は受けてもらえるんでしょうか?」
「うーん、るりりん。実際に屋敷の解体とかできるのか?」
「どうでしょうね。やり方自体は私の家がその手の職業ですし分かりますが、屋敷の大きさにもよります」
「じゃあ、とりあえずはその屋敷を見て見ないとな」
「ありがとうございます!」
「ちょっと! こんなエリス教徒の依頼を受けるって言うの! 屋敷の解体とか壊すだけじゃなくて片付けとか面倒なのよ? 私、あまり肉体労働は嫌なんですけど!」
「うるせぇえ! 半分は日頃、お前が迷惑をかけているお詫びもあるんだよ! いいから付いて来い!」
こうして、俺達はその屋敷へと向かうことになった。
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