第22話「依頼」





「全く! 酷い目にあったぞ! お前達、この私を囮にして逃げるとはとんでもない奴だな!」

「まぁまぁ、結局は助けたんだしいいじゃないか」

「そうよそうよ。むしろ、クエスト失敗したのにわざわざアプリを助ける為にただ働きしたんだから、アプリは私達に誠意としていくらか払うべきじゃないかしら?」

「仲間に助けてもらっただけで私は金を払わなければいけないのか!」

「アプリもまだまだですね。マサヤやマリアの言うとおりですよ。冒険者であるのなら自分の身は自分で守らないと話しになりません」

「るりりん……それは魔力が切れてマサヤにおぶってもらっているお前が言えるセリフではないと思うのだが……」


 すると、るりりんが反撃でとんでもない爆弾を投下した。


「アプリ、そう言いますが私もこう見えて大変なんですよ? だって魔力が切れると必然的に体力のあるマサヤにおぶってもらう事になるのですが……マサヤは一見普通に私をおぶっている用に見えて、堂々と私のお尻を掴んでいますからね」


「な、何だと――って、マサヤ! 本当にるりりんの尻を掴んでおぶっているではないか!」

「はぁああああ! 何やってるのよ。このロリコン!」

「ちょ! おま! るりりん、気付いていたのか!」

「マサヤ……いくら、私でもこう堂々とおぶられながらお尻を摑まれれば流石に気付きますよ」

「いや……むしろ、何でるりりんはマサヤにお尻を摑まれながらそんな堂々としているの? 私だったら罰金で50万エリスは余裕で奪うわよ?」

「こんなのいつもの事なので慣れました。そもそも、お尻を摑まれておぶられたくらいで何も減るもんじゃありませんしね」

「る、るりりんって変なところで男らしいな……流石に騎士の私でもそこまで割り切れないぞ」

「な、なんだよ……るりりんの奴気付いていたのか。てか、お前ら勘違いするなよ! こ、これはあれだ! ケツを摑んでいたほうが背負いやすいんだよ! そうだ! るりりんのケツは小さくて摑みやすいからちゃんと背負う為に摑んでいるだけなんだから勘違いするなよ!」


 別に、俺はろろろ、ロリコンじゃ無いんだからな!


「マサヤ、アンタその言い訳かなり苦しいわよ」

「マサヤ、あまりそのケツとか言わないで欲しいのです……あと、気付かれているからってドサクサにまぎれてお尻を揉まないでください。流石に私でも怒りますよ?」

「けしからん! マサヤ、私がお前のその腐った根性を調教しなおしてやる!」

「止めろバカ! 俺にそんな趣味はねえ!」


 何故かるりりんより先にアプリが切れて俺が逃げようとすると、そんな俺達に声をかけた奴がいた。


「少々よろしいでしょうか?」


 声の方を振り向くとそこには40歳くらいの背の引くいおっさんがいた。すると、そのおっさんは俺に背負われている、るりりんを一瞥して話しかけてきた。


「お取り込み中すみません。もしかして貴方がこの町にいる紅魔族のアークウィザードで間違いないでしょうか?」

「はぁ、確かにこの町にいる紅魔族のアークウィザードは私しかいないはずですが」

「おお! よかった。やっと、見つかりました! 実は貴方に依頼したい仕事があるんです」


「「「るりりん、個人に依頼!」」」


「ねぇねぇ、マサヤさん。るりりんって個人で依頼を受けるほど有名なの?」

「いやいや、そんな事は無いぞ。今まで一緒に行動してきたけど、こいつは炸裂魔法しか使えないポンコツだ」

「多分、紅魔族の存在は珍しいからそれだけだと思うのだが……しかし、それで個人に依頼が来るだろうか? しかも、るりりんにだと?」


「おい、お前達……そんなに私個人に依頼が来る事がおかしいのか? あと、こそこそ話していますけど、私がマサヤにおぶってもらっている状況だとまる聞えですからね」


「おい、おっさん。悪いことは言わないからその依頼は止めとくんだ。この、るりりんはアークウィザードと名乗ってはいるが炸裂魔法しか使えない『なんちゃって魔法使い』だからな」


「誰が『なんちゃって魔法使い』ですか!」


「炸裂魔法が使えるなら十分ですよ! 是非、私は貴方に家の解体を依頼したいのです!」



「「「「家の解体?」」」」

 

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