第6話「ウィズ」
あの後、ウィズが「やっぱり何かお礼をさせてください!」っと言うので、俺はウィズから使えそうなスキルを教えてもらう事にした。
「うふふ、私こう見えてもアクセルって街ではそこそこ有名な魔法使いなんですよ」
「へぇーそうなんですか! 因みに、その街ではどのようなことをされているんですか?」
「はい、アクセルでは魔道具なんかを取り扱うお店を経営してます。今日もこの街でお店におく新商品を仕入れに来てたんです」
「ああ、だからお財布に大金が入っていたんですね。それは危なかったですね……もし、ウィズさんがギルドにいなかったらそのお金は今頃……」
「おい、るりりん止めろ。めったなことは言うな」
「はい、本当に助かりました! それで、マサヤさんは冒険者なんですよね。
教えられる魔法使いのスキルはいろいろありますけど、マサヤさんはどのようなスキルが欲しいですか?」
うーん、スキルか……いざ教えてもらうとなると悩むな。しかし、今の俺のスキルポイントは10しか無いんだからここは慎重にいきたい。
「そうだな。まだ、本当に冒険者になったばかりだからスキルポイントが10しか無いんだ。だから、消費ポイントが少ない奴がいいな」
「うーん、消費ポイントの少ないスキルですか…………はい、二つほどいいのがありますよ」
そして、10分後。
「るりりん、いくぞ!」
「モチロンです! かかってきてください!」
俺はウィズが見守る中、早速教えてもらった二つのスキルを試す為にるりりんと模擬戦を始めた。
「まずは先手必勝です! 我が深遠の闇に眠る赤き力よ……その怒りを震わし敵を穿てっ! プロー――」
開口一番、炸裂魔法の詠唱を始めるるるりんに対し俺は直ぐにダッシュで飛び出し覚えた手のスキルを発動させた。
「くらえっ! フラッ――――シュ!」
すると、突き出した俺の手から眩い閃光が発生し、今にも魔法を放とうとしていたるりりんが両目を手で押さえ地面に転がり始めた。
「目ガァアアアアアアアアアアアア! ああああああああ! 目、目ガァアアアアアアアアアアアアああ!」
地面に転がって苦しむ、るりりんを見ながら俺はその新しく覚えたスキル「フラッシュ」の効果に関心した。
「おお、凄い効果だな! しかも、魔力も全然減ってないぞ!」
「はい、そのスキル「フラッシュ」は込める魔力によって光の強さを変えられるんですが、今みたいに強い光でも一瞬だけの使用なら殆ど魔力を使わないんですよ。さらに、暗いダンジョンなどでは魔力を流し続ける限り、弱い光を持続させて明りの代わりにすることも出来るので初心者の冒険者にはオススメなんですよ」
「そうなんですか! 流石は有名な魔法使いって言われるだけありますね! いやぁ~何処かの炸裂魔法しか使えない魔法使いとは大違いだ!」
「……おい、その炸裂魔法しか使えない魔法使いとはもしかしなくても私の事だな? 私のことですね? いいでしょう……そこまで言うのなら今すぐ模擬戦の二回目を始めようじゃないですか! 深遠から寝る赤よ……空舞い降りる青よ! 闇と光を捻じ曲げ我が血筋への道となりゆかん!
これぞ、我が必殺の魔法! プロ――」
俺はのんきに長い詠唱を始めるるりりんに向かって再び右手を向けた。るりりんはそれをみてとっさに目を瞑った。
なるほど、またフラッシュが飛んでくるかと思って目を瞑ったか。しかし、甘いなるりりん! 俺がウッズに教えてもらったスキルはもう一つあるんだよ!
「キャプチャーッ!」
「ふぎぉっ!」
すると、るりりんの頭に背後から大きな酒樽が飛んで彼女に頭に激突し、るりりんは再び頭を押さえて地面を転がった。
「痛たぁああああああい! あ、頭ガァアアアアアアア! く、くそう……何故、背後からこんな酒樽が?」
俺は飛んできた酒樽を掴みながらるりりんに答えた。
「フッフッフ! これこそ俺がウィズさんに教えてもらった二つ目のスキル「キャプチャー」だ!」
「このスキル「キャプチャー」は自分の手から離れた場所にある物を手元に引き寄せる魔法なんですよ。引き寄せる物の重さや距離に応じて込める魔力は変わりますが、これも「フラッシュ」と同じで消費魔力は少ないんです」
そう、このスキルの説明はウィズの言ったとおりだ! さっきの攻撃は俺がキャプチャーでるりりんの後ろにあった酒樽を勢い良く手元に引き寄せたのだ。
ウィズに教えてもらった二つのスキルはどれも攻撃的ではないが、その反面小回りが聞きそうで覚えて損は無さそうなスキルだし、何より駆け出しの俺にとっては少ないスキルポイントの消費で二つもスキルを習得できたのだから大満足だ。
「ウィズ、ありがとう! これなら駆け出しの俺でも使いようによってはクエストの役に立ちそうだぜ!」
「はい、お役に立ててなによりです!」
「ではマサヤもスキルを覚えたことですし、今度こそクエストを受けに行きますよ!」
「おい、早くクエストに行きたいのは分かるから腕を引っ張るなよるりりん! 制服が伸びるだろ!」
「嫌です! 私は先ほどの模擬戦で溜まったイライラを早くクエストに炸裂魔法を放つことで発散させたいのです!」
なんて、アブねーストレスの解消法だ……
すると、ギルドに向かおうとする俺達をウィズが呼び止めた。
「マサヤさんはこれからクエストを受けに行くんですよね?」
「ああ、そうだけど」
「では、よければこれをどうぞ」
すると、ウィズは俺達に一つの魔道具を渡してくれた。
「ウィズ、これは?」
「それは「カエル殺し」と呼ばれる魔道具です。きっと、駆け出し冒険者のマサヤさんならこの時期はジャイアント・トードと呼ばれるモンスターの討伐クエストが多くありますから役に立ちますよ♪」
なるほど! モンスター討伐に役立つアイテムか! 俺が遠慮なく受け取ろうとすると、るりりんが申し訳無さそうに口を開いた。
「そんな! モンスター討伐用の魔道具なんて高いんじゃないですか? そんな高価なものをタダで貰うわけにはいきませんよ!」
えぇー? せっかくタダでくれるって言ってるんだし貰っておこうよ?
「いいえ、これはお店の新商品にどうかと言われて渡された試供品ですから、それに試供品なら私が持っているより実際の冒険者の方に使ってもらった方が助かるんです。もし、それを使う機会がありましたら是非、感想を聞かせてください。いい魔道具であれば私も自分のお店に仕入れようと思いますので♪」
そういうウィズさんはまるで本当の女神様みたいだった。
うわぁ~こんなに可愛くて巨乳で、おまけに性格もいいなんてこの人は本当に女神様なんじゃないだろうか? まったく、俺がこの世界に来る時に出会ったアクアとか言う駄女神にも見せてやりたいぜ! このウィズさんに比べたらあの駄女神なんか女神じゃなくてむしろリッチーとか悪魔系のモンスターがお似合いだぜ! 名前もアクアとアクマで似てるしな!
「そう言う事でしたら、ありがたく貰いますね」
「スキルを教えてもらうだけじゃなく、こんな魔道具まで貰って本当にありがとうな! ウィズ、この魔道具使ったら必ず感想を伝えに行くよ!」
「はい、よろしくお願いします」
こうして、俺達は心優しき女神のような女性、ウィズと別れた。
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