第5話「人としての心=プライスレス」
るりりんとクエストを受けに行くためギルドに向かっていると、俺は道の端に財布らしきものを見つけた。
「何だこの財布? 落し物か?」
「そうみたいですね。うわっ! 結構な金額が入っていますよ!」
気になって財布を除くとそこには約30万エリスが入っていた。
この世界の金銭の単位は1円が1エリスなので、つまり日本円にしてもそのまま30万円分の現金が入っているのである。
「すっげぇえええええええええええ! よっしゃああ! るりりん、これで武器が買えるぞ! 今から武器屋に寄っていこうぜ!」
「何を言っているんですか! そんなことしたら泥棒ですよ! この財布は責任をもって私達が持ち主に届けてあげましょう!」
「いいか、るりりん? 落し物を拾ったら2割は自分の物になるルールがあるんだ。だから、この財布を拾った俺には財布の中の二割……つまり、6万エリスを貰う権利があるんだよ!」
「一体どこの国のルールですか……そんな決まり聞いたことも無いですよ」
「俺のいた世界、日本て国のルールだ」
「あーそーでした。そーでした。マサヤは異世界から来たんでしたね。そういう設定でしたね」
「設定じゃねえよ! 本当だよ!」
その後、俺はるりりんに財布を奪われてしまい。ギルドにいくついでにこの財布もギルドに届けようと言う事になった。
「あーあ、せっかく旅の軍資金が手に入ったと思ったのにな」
「そんな事をしたら、お金の代わりに人としての大切な何かを捨てていますよ……」
「それで、6万エリスが手に入るなら俺は喜んでその『人としての大切な何か』を手放すけどな……俺の『人としての大切な何か』6万買取! ってか?」
「貴方の『人としての大切な何か』安すぎませんか!」
「うぅ~本当に何処に落としちゃったんでしょう…………あれはお店の仕入れに使う大切なお金なのに……」
すると、ギルドに入った俺達は受付の辺りで頭を悩ましている魔法使いみたいな格好をした巨乳のお姉さんを見つけた。
「ねぇ、マサヤ。あの人どうやらお金を無くて困っているみたいですけど、もしかしたら――って、あれ! マサヤがいない! そして、いつの間にか私の手に持っていた財布も無い! まさか、マサヤ……持ち逃げを――」
「お姉さん! 何かお困りですか? 実は先ほど町中で財布を拾ったのですが、もしかしてこのお財布お姉さんのだったりしませんか?」
「あああ! それそれ! それです! それ私のお財布です! ありがとうございます! ありがとうございます!」
「HAHAHAHA! 礼には及びませんよ。人として当然のことをしただけです。ああ、心配しなくても中身に手は付けていないので安心してください」
「ほ、本当だぁ……良かった。お金全部あります。拾っていただいて本当にありがとうございます! あの、な、何かお礼を――」
「いえいえ、そんな! 俺はただ落し物を拾っただけです。お礼なんて受け取れません」
礼? そんなもんいらないね。だって、お礼ならお姉さんが『ありがとうございます』と頭を下げるたびに揺れるその巨乳を見れただけで十分だからさ!
「こ、この男……どの口が『人として当然のこと』ですか! マサヤはついさっきその『人としての大切な何か』を6万エリスで捨てようとしてましたよね!」
るりりんが後ろで何か騒いでいるが気にしない。今の俺には目の前で巨乳を揺らしながら「それでもお礼を!」っと言っている美人なお姉さんの声しか聞えないのだ。
「うーん、そうですね。そこまで言うのでしたら……お姉さん!
是非、貴方のお名前を教えてください!」
「へ! わ、私の名前ですか……? そんなものでよければ……はい。
私の名前はウィズと言います」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます