第4話「スキル」
結局あの後、俺は自分の職業を『冒険者』にした。
選んだポイントはスキルだ。
普通職業を選ぶと手に入れられるスキルはその職業によって決まっている。しかし『冒険者』だけはありとあらゆるスキルを習得可能なそうだ。そのかわりにスキルに必要なポイントが多かったり能力が本職より劣ったりするらしいが、レベルを上げれば職業は転職可能らしいので、ならばエクス・カリバーを手に入れるまでは『冒険者』で使えそうなスキルを習得し、レベルを上げてから『ソードマスター』なり『クルセイダー』に転職すればいいのだ。
そう、エクス・カリバーさえ手に入れればきっと剣を使う職業に転職できるようになるはず!
「そうと、決まればまずは武器の調達かまたはスキルの習得だな……とりあえず、俺の攻撃手段が手に入らない事にはクエストもろくに受けられない」
俺が町中を歩きながらそう言うと、一緒に隣を歩くるりりんが抗議の声を上げた。
「何を言っているんですか! せっかく私とパーティーを組んだのですから、ここはさっさとクエストを受けに行きましょう! 大丈夫です! 攻撃手段ならこの私がいるので心配しないでください!」
あの後、俺は直ぐにるりりんに誘われてパーティーを組むことになった。確かにるりりんがいればアークウィザードなのだから攻撃手段に困ることは無い。
「うーん、だけど俺に攻撃手段がないと、るりりんが攻撃できなくなった時に手詰まりになるだろ? 攻めてスキルの一つか武器くらいはとっておきたいんだよな」
「そんなこと言っても、マサヤはお金もって無いでしょう? お金がなければ武器も変えませんしスキルに関しては……」
「そうなんだよなぁ」
そう、今の俺達は無一文だ。俺は転生したのだから仕方ないとはいえ、るりりんも無一文なのは何でだよ! っと、ツッコミたいのだが無一文の俺が言える立場でもないんだよな。
それにスキルを覚えるにしても普通ならカードに書かれているスキル一覧から選ぶのだが、俺の選んだ冒険者は全てのスキルを覚えられる代わりに誰かにそのスキルを教えてもらえないと覚えられないのだ。だから、現状誰にもスキルを教えてもらっていない俺はスキルを覚えられないのだ。
「手詰まりじゃねえか!」
「そうですよ! だから、さっさとクエストに行こうと言っているんです! クエストの一つでもこなせば手に入った報酬で武器も買えるでしょう! ますはクエストが先です!」
うーん、頭では分かっちゃいるんだがそれだと俺がクエストで活躍できないしな……せっあく異世界に来たんだから最初のクエストくらいカッコよく活躍したいのよ。
「そうだ! るりりんが俺にスキル教えてくれればいいんだよ! あのなんだっけ? 最初に出会った時にるりりんが使っていた魔法!」
「炸裂魔法ですか? あれはダメですよ。別に教えてもいいんですがあの魔法はスキルの習得ポイントがかなり高いんです。とってもじゃありませんが職業を選んだ時に手に入るスキルポイントでは足りませんと思いますよ。
マサヤが今使えるスキルポイントはいくらあるんですか?」
言われて俺は自分のカードを確認した。
「10ポイントだな」
「でやっぱり足りませんね」
「じゃあ、他のスキルでいいよ。何か他に攻撃魔法のスキルあるだろ?」
「ありません」
「……は? 何が無いんだ?」
今、コイツ……なんて言った?
「…………私は、炸裂魔法しか使えないです。他には、一切の魔法が使えません」
その言葉を聞いて一瞬、俺とるりりんの間に気まずい空気が流れた。
「…………」
「…………」
「あ、あはは……う、ウソだぁ~」
「あ、あはは……ほ、本当です」
「マジか?」
「マジです」
あれ、でも待てよ……
「お前、炸裂魔法は習得するスキルポイントが高いとか言ってたじゃん。それだけのポイントを貯めるまでに他の魔法は習得しなかったのか?」
「実は……これには事情がありまして」
話を聞くと、紅魔族というのは上級魔法というのを習得して一人前と呼ばれるらしい。里の紅魔族達はその上級魔法の習得スキルポイントが溜まるまでは学校で学ぶというのだ。
「ですから、それまで紅魔族の者は上級魔法以外の魔法を覚えないのです」
「じゃあ、何でお前はその上級魔法も覚えてないのに炸裂魔法なんて覚えてるんだよ」
「実は……スキルポイントが溜まって上級魔法を習得しようとした時に……誤ってくしゃみをしてしまいまして――」
「もしかして、間違って炸裂魔法を覚えちまったのか?」
るりりんは顔を真っ赤にして頷いた。
どうやら、紅魔族の間では炸裂魔法を含めた『炸裂魔法』『爆発魔法』『爆裂魔法』の爆発系統の魔法は習得も難しければ、威力は高すぎるし魔力の燃費も悪いため軽視されているそうなのだ。
中でも一番の威力を誇るが燃費が悪すぎて打てても一回とか言われている『爆裂魔法』なんかは『ネタ魔法』とか言われているらしい。
この、るりりんは自分が覚えたのが炸裂魔法だと知られれば皆にバカにされると思い。上級魔法を覚えたふりをして里を出たのだという。
だから、こいつの目的は旅で強くなりスキルポイントを貯めて上級魔法を習得することなんだそうな。
「しかし、よく炸裂魔法だっけ? 覚えれたな。なんだかその系統の魔法は習得が難しいんじゃなかったのか?」
「私の父が土木関係で解体業をしているんです。爆発系統の魔法は建物の解体には役立ちますから……その影響で私も幼いころちちに爆発系統の魔法は全て教わっていましたので」
「習得できちまったというわけか……でも、別にそんな隠すことでもないだろう。俺を助けてくれた時のるりりんの魔法は正直カッコよかったぞ?」
俺がそう言うと、るりりんは顔を赤く染めてうろたえた。
「な、何を言っているのですか! そもそも、女の子に向かってカッコいいなんて言われてもう、嬉しくなんてないんですからね!」
そう言いながらも、るりりんの口元はニマニマとにやけていた。なんてチョロい奴……
「はっはっは、そうか? むしろ、いっそ爆裂魔法を習得するなんて言うのも俺はアリだと思うけどな。一撃必殺の爆裂魔法を操る紅魔族……! なんて言うのもカッコいいだろ?」
「何を言っているんですか……まったく、爆裂魔法なんかを使う頭のおかしい紅魔族がいるわけないじゃないですか!」
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