第3話「練習の町トライアル」
「いらっしゃいませ! 見習い冒険者が集う練習の町、トライアルへようこそ!
お仕事の案内は奥のカウンターへ、お食事のお客様は空いているテーブルにお座りください」
あの後、るりりんに助けられた俺は彼女に道案内を頼み森を抜けて近くの町トライアルの冒険者ギルドに来ていた。
「ありがとうな、るりりん。おかげで助かったよ」
「いえいえ、ちょうど私もこのトライアルを目指していた所でしたから問題ありません。それで、マサヤは冒険者ギルドに来たと言うことはギルドに登録するんですか?」
「そうだな。ギルドに来たのは他にも目的があるんだが……せっかくだし、登録しておくか」
そうだ。せっかくの異世界に来たのだからここは定番のギルドに登録するのも悪くは無い。るりりんは俺が異世界から来たと言うことは話してあるのだが、それを伝えても「へーそうなんですかー凄いですね(棒読み)」みたいな反応しかされなかったので信じていないと思う。しかし、こうして一緒にここまで案内してくれた所を見るば名前と中二病的な言動を除いて意外といい奴なのかもしれないな。
「いらっしゃいませ、今日はどのようなご用件でしょうか?」
本能的に3つある受付のうち一番美人なお姉さんのいる受付にすすむと、受付のお姉さんが花のような笑顔で出迎えてくれた。
「あ、はい……実は冒険者になりたいんですけど」
「登録ですね! ただいまの期間は一撃熊が現れたせいで冒険者の数が激減したため、登録手数料無料キャンペーンをおこなっておりますので手数料は大丈夫ですよ」
おおおおお! あっぶねえええ! 冒険者の登録って金取るのかよ! 俺、金持ってないから速攻で積むとこだったじゃん。
……ん?
でも、ちょっと待って……今、なんとか熊の出現で冒険者の数が減ったとか言った? それってどういう意味? てか、熊ってまさか森で出会ったアイツじゃねえよな?
「マサヤ、良かったじゃないですか。ギルドの登録手数料が無料になるなんてよっぽど多くの冒険者が不幸な事故で亡くならない限り起きないんですよ!」
「え! やっぱり不幸な事故ってそういうこと! てか、一撃熊ってさっき、るりりんが倒したクマじゃねーの?」
「ええ、そうですよ」
「やっぱりか!」
「しかし、マサヤ。私がアレを倒したと言うのは勘違いです。いくら私でも、一撃熊をあの魔法一つで倒すのは不可能です。あれは精々吹き飛ばして気絶させるのがやっとですからね」
「なるほど、そういえば登録は無料らしいがるりりんはギルドに登録しないのか?」
俺がるりりんにそう尋ねると、彼女はおもむろにローブから一枚のカードを取り出して俺に見せてきた。
「心配ありません! 紅魔族は幼い時からすでにギルドカードを作成しているのでいまさらギルドに入る必要は無いのです!」
すると、それを聞いた受付のお姉さんは驚いたように声を上げて俺の隣にいる、るりりんに目を向けた。
「えええええええええええええええ! その子ってあの紅魔族なんですか!」
紅魔族?
「そういえば、るりりんが最初にあった時にそんな事を言っていたけどそれ何? 凄いの?」
俺が尋ねると受付のお姉さんは興奮したように教えてくれた。
「凄いってもんじゃないですよ! 彼女達紅魔族は生まれつき高い知力と高い魔力を持って、大体は魔法使いのエキスパートになれる素質を秘めているんです!
特徴として紅魔族はその赤い瞳とへんな名前をしていると有名なんですから!」
「おい、コラ……私の一族の名前が何だって?」
なるほど、最初は「るりりん」とかふざけた名前だと思ったが、そういう名前が揃っている一族なのか。え、じゃあ紅魔族の連中は皆こいつみたいに中二病全開の連中ばっかりなのか?
「それはそれで嫌だな……」
「おい、コラ! それは一体なんの事を言っているのか教えてもらおうか?」
その後、俺は受付のお姉さんから冒険者についての簡単な説明を受けて書類などを記載し、ついに俺の冒険者カードの作成に入った。
「では後はこちらにカードに触れてください。すると、マサヤさんのステータスが表示されるので、その数値に応じて成りたい職業を選んでいただくと登録は完了になります」
言われたとおり、俺は差し出されたカードに触れた。
「はい、ありがとうございます! アンドウマサヤさんですね。ステータスは……うーん、魔力と敏捷性はそこそこですが、後はどれも平均的ですね…………
ああ! で、でも、幸運がそれなりにいいですよ! あと、知力もそこそこですね! これなら……えっと、そのぉ~~どうしましょう?
なれる職業が基本職の『冒険者』か『占い師』か『盗賊』の三つしかありませんが……この幸運では商売人でやっていくのも微妙ですし……」
あれ? おかしいな……普通こういうイベントってすっごいステータスが出てどんな職業もなれますよ! 的な展開じゃないの?
それに本来なら俺にはあの駄女神から貰った伝説剣エクス・カリバーがあるはずなんだからこういうのは『ソードマスター』とか『クルセイダー』とか最低でも『剣士』くらいは選択肢にあるべきだろ! なのに、何で剣を扱いそうなのが最弱職とか言われている『冒険者』だけなの! くっそう! これも全部あの駄女神が俺の剣を渡し忘れやがったのがいけないんだ!
きっと、あのエクス・カリバーさえあれば俺の職業に『ソードマスター』が出たはずなんだからな!
「マサヤ、悩むのはいいですが……早く決めないと後ろが並んでますよ?」
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