第2話「炸裂魔法を操りし者」




「ほーっ! ここが世界かーー……って、森の中じゃねええかぁああああああああああああああああああああ!」


 祝、始めての異世界は何だかよく分からない森の中で始まりました。


「え! てか、マジでここ何処だよ? 普通こういうのって始まりの町的な所から始まるんじゃないの?」


 意外な転生場所に驚きながら自分の装備を確認するが、転生したと言うのに俺の服装は高校に行く時の制服姿だった他には財布以外すべて持っていた鞄に入れていたのだが鞄は何処を見ても見当たらない。

 そういえばアクアとかいったあの女神のいる死後の世界にも俺の鞄は無かったからきっと死んだ時に俺の手から離れてしまったのかもしれない。


「はぁ、あの鞄の中には昼休みに食べようと思っていたポテチが入っていたのに……もしや、あの女神、鞄隠し持って俺のポテチを食っていないだろうな?」


 しかも、財布はあるとはいえ、どうせこの世界では日本の金は使えないんだろ? むしろ、使える方が驚くわ。


「こんな森のど真ん中で転生させるとかあのアクアという女神何考えてんだよ。もし、こんなところでモンスターにでも襲われたら即死じゃ――……」


「ギャウ?」

「…………」



》》野生のクマみたいなモンスターが現れた《《



「ぬわぁああああああああああああああ! モンスターか? モンスターだよな? よし、モンスターだな! 出たなモンスターめ! ふふ、本来の俺ならこんな大型クマみたいなモンスターを見たら即刻逃げるが、今は違う!」


 そう、俺は逃げない! 何故ならこの異世界に転生した俺にはあのクソみたいな女神から貰った伝説剣エクス・カリバーという伝説級の武器が――


 何故か俺の手元に無かった。


「あれ? ウソ……だって転生する時に……」


 貰って無いじゃん俺! 武器! そうだ! 武器を指定したはいいがあの後、俺とくに指定した武器を貰ってないんだけど! おい、どう言う事だあのクソ女神ッ!


 すると、空から一枚の手紙がヒラヒラと俺の目の前に落ちてきた。


「何だこれ」


 そこにはこう書かれていた。


『ゴッメーン♪ アンタの選んだ剣、渡すの忘れてたわ~一応直ぐに送ってあげたんだけど、その時に座標を間違えちゃったみたいでアンタと剣を別々の場所に送っちゃったみたい(テヘペロ♪) 剣は「トライアル」って町のどこかにぶっ刺さったみたいだから、適当に行ってチャチャっと回収しちゃって! あ、心配しなくてもどこかに刺さった剣はアンタ以外に抜けないし扱えないから誰かに取られる心配はしなくてOKよ!

 じゃあ、よろしく~♪

 アクア』


 なるほど、なるほど……剣を渡し忘れちゃったのかぁ~しかも、自分で取りに行かないといけないのかぁ~この目の前のクマを倒して? 武器も無いのにどうやって?


「あんっの! 駄女神がぁあああああああああああああああああああああああ!」


 俺が我慢できずそう叫んだ瞬間、目の前のクマも我慢が出来なくなったみたいで俺に襲い掛かってきた。


「ガウゥウウウウウ!」

「ヒィイイ! もう、ダメだぁああああああああ!」


 そして、俺が早くも二度目の死を覚悟したその瞬間――



「プロージョン!」



「グガアァアアアアアア!」


 突如、襲い掛かってきた熊の腹に小さな爆発が起こり、クマが後ろにぶっ飛ばされたのだ。


「い、今の爆発は……誰が?」


 俺が声のした方を振り返ると、


 赤く輝く真紅の瞳。

 黒くつややかな肩ぐらいまで伸ばした黒髪。

 そこにいたのは、黒いマントに黒いトンガリ帽子、黒いローブと黒いブーツに杖を持った。典型的な魔法使いの格好をした少女だった。

 顔は整っているがどう見ても12~13歳くらいにしか見えないロリっ子魔法使いだ。


 まぁ、異世界だし子供が旅とかしても不思議ではないのか?


 すると、その子柄で細身の少女は黒いマントを突如翻し名乗りを上げた。



「我が名はるりりん! 紅魔族のアークウィザードにして、炸裂魔法を操りし者……!」



「…………舐めてんのか?」

「ちゃ、ちゃうわい!」


 それが、俺……安藤マサヤとるりりんの始めての出会いだった。




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