3話 なりきりのシャアナ

1・セーラちゃんアプリと命名っス

【異世界・エムストラーン】

 場所・異次元

 宇宙には存在しない、全く違う世界。

 空は結界が張られてあり、宇宙を映している。地球が大きく見える。 


【目的】

 エムストラーンにいるモンスター。

 モンスター=バイラスビースト(略・バイストにする)。

 『脅威ある者』と呼ばれていた。

 クサカーリ、サラダルス、など。

 名前は、地球人が付けている。


【原獣】

 エムストラーンの動物。

 原獣使いなら、仲間にできる。

 レベルも原獣がアップする。つまり、ポケモンのようなものか。

 原獣、バイストかを確認するには携帯のサーチ機能を使う。


 青=NG。原獣。食える

 灰=NG。原獣。食えない

 黒=OK。原獣。食えない。

 茶=OK。原獣。食べる

 赤=OK。バイスト。倒す。


 NGは、倒しても金が入らない。

 OKは。倒したら金が入る。


 OKは、サーチで賞金額が表示される。

 バイストのほうが高値。


【バイラスビーストの狙い】

 ユリーシャの光の破壊。

 それはエムストラーンが滅びるのを意味する。

 結界の向こうに何兆とバイストがいる?


【異世界転送機】

 地球人を異世界へ転送する装置。

 ATMの役割。

 異世界で稼いだお金は、ここで受け取れる。

 手数料10%。

 円からギルスなら手数料なし。

 クレジット払いなら全商品5%引き。


【ナビの妖精・セーラ】

 15センチほど。羽あり。胸は普通(自称D)。

 キンパツ。口癖は「ッス」。超かわいい。

 大食い。体は小さいのに人間の一人前は食う。

 ナビ料・30%

 一度断れば、永遠に会えなくなる。

 ナビは一度死んで、新しいナビとして転生する。

 元はヴェーダの巨像にいる妖精。

 エムストラーンの危機に、ナビとして派遣させられた。


 ナビを連れていると素人扱いされる。

 ナビ料が高いのもあり、大半の人は冒険に慣れたら別れる。


【スロット】

 カルマ&マルカ。

 二人合わせてカルマカーズ。

 スロットの場所・転送先のロビー。

 ケータイで呼べば、やってきてくれる。


 無料スロットは一日一回。

 外れはない。最低でもレベル3あがる。

 平均は5。

 最高で99だが、確率は0.000001パーセント。

 ステータスの運によって高確率になる。

 6の俺は絶望的だ。


 2回目以降は、3000ギルス。

 クレジット払いなら2500ギルス。


【職業】

 ・戦士

 剣、槍、斧・銃など武器をメインにして戦う。


 ・魔法使い

 魔法を使うことができる。


 ・パラディン

 剣と魔法、両方を使える。バランスはいいが、中位までで上位技は使えない。


 ・原獣使い

 原獣をパートナーにして代わりに戦ってもらえる。

 パートナーの原獣はサーチすると白。


 の四種。


 火、水、土、風、雷、毒、闇、光。

 8つの属性がある。


 4(職業)×8(属性)で32種類。


【浅田一吹=イブキアサダ】

 戦士の土属性。

 武器が剣。防御力が高い。


【アイリス】

 魔法使いの光属性。

 見た目は中学生のガキ。

 治癒、姿を消す、テレポートなどサポート系が得意。

 攻撃魔法は持っていない。

 コミュ障。喋るのが下手。そのため、一人で冒険。

 廃人でエムストラーンに入り浸っている。

 中身は、ひきこもりのロリコンだろう。

 ルルという、殆ど喋らないナビがいる。


【街・ネオジパング】

 エムストラーンに来た人間が集まる唯一の街。

 食事したり、道具を買ったり、泊まったり、仲間を探したり。

 地球人の休憩所。

 永住する者もいる。

 塗装された道は少ない。広場に点々と家が建っている。

 ただし、かなり広い。一日では回りきれないほど。

 人がまばらなのもそのためだろう。

 原獣使いの原獣が見張りをして、バイラスビーストから街を守っている。

 町長など代表的人物はいない。


【エルザの酒場】

 ネオジパングにあるレストラン。

 仲間を探したり、募集することができる。

 味はまあまあ。地球の味を再現した料理が売りだが、上手くいっていない。

 値段は安い。


【エルザ】

 パラディン。属性不明。火?

 見た目は二十代後半の巨乳美女。Fぐらいか。

 エムストラーンは、タバコと料理のために来ている。

 表の仕事が忙しくて、まれにしか来ない。


【モグッポ】

 原獣。マークは青。美味い。弱い。

 知能があり、言葉を喋り、器用。

 農業、家畜、建築、料理と、ネオジパングの貢献者。

 地球人のお手伝いをしている。


【ケータイ】

 地球から唯一持って行けるアイテム。

 ただし使い道が変わる。


 ・異世界に転送。

 ・原獣&バイストのサーチ。

 ・フレンドと連絡。

 ・ID入力でメールのやりとり。

 ・地球上でも転送機の近くにいればセーラと会話が可能。

 ・地球側から急用が入れば呼び出しがかかる。

 ・メモすることが可能。

 ・セーラと通話できるアプリが追加される。




「セーラちゃんアプリと命名っス」


 セーラが、俺の肩に乗って、ケータイをのぞき込んでいる。

 転送機からロビーにやってきた俺は、地べたに腰を下ろし、ケータイを弄り、親指を細かに動かして文字を入力している。書き心地は悪い。紙とペンが欲しかった。


「略してセーラップリにするか」

「それ略っスかねぇ?」

「さらに略してセーラの屁」

「略じゃねぇ!」


・セーラと通話できるアプリ(セーラップリ)の追加。


 と、入力した。

 ケータイのセーラップリにあるメモ機能なら、地球でもエムストラーンでも使うことができると知ったので、俺はエムストラーンについての情報を書き込んでいく。


「なんで、うちのおっぱいサイズなんて書く必要あるんスかねぇ。自称ってなんスか。セクハラですよ……」


 分からない箇所があれば、のぞき見をするセーラが説明してくれるので、助かっていたが、いちいちうるさかった。


「おまえ実はBだろ」

「Dっス!」


 妖精でも、胸については気になるお年ごろのようだ。


「それを言うなら、超かわいいなんて書く必要ないだろ」

「事実っス。セーラちゃんはイブキさんを虜にする可愛さなんスよ」

「虜になっていいのか、興奮して、ハァハァ、セーラちゃんたまらんと、チ○コ出したらどうする?」

「そんな貧相なもの見せてきたら、フッとあざ笑ってあげるっスよ」

「おまえの胸より立派だぞ」

「Dあるっス!」

「はははははっ」

「おかしくねぇっス!」


 こんな下らない掛け合いができるのもセーラの良さだろう。

 エムストラーンの存在を知って、尤も良かったのは、お金が稼ぐことより、こうやって、人と話す機会が増えたことだ。

 たった三日間で、俺はこの一年間で喋った回数を超えていた。

 特にセーラのように、ちゃんとレスポンスがくるし、不快を感じさせない、バカを言える相手は、社会人になってからは滅多になかった。人間関係がギスギスとしていて、神経を使ってばかりで、胃の痛みに悩まされる日々だった。

 セーラと無意味の会話をするのが楽しかった。自分でも意識してなかったけど、俺は人恋しさに餓えていたのかもしれない


「これぐらいかな。メモ機能があるのはありがたい」

「メモは重要っスからねぇ。ないよりマシって低機能だけど、多くの人にありがたがられています。あと、絵を描くこともできるっスよ」

「描く奴なんかいるのか?」

「写真を撮れない代わりに、エムストラーンをスケッチする人は多いんですよ。そういう方は、スマホよりも二画面のゲーム機を使ってますね。タッチペンが内蔵されているから、持っていくことができるし、感度が違うようで、描き心地が良いらしいっス」

「スマホは静電式だからな。たしかに感圧式のゲーム機のほうが優れている」

「へぇ、タッチでも色々あるんスねぇ……」


 機械についてさっぱりなのだろう。感心していた。


「そういえばアイリスさんはゲーム機を使ってましたね。絵を描かれるんっスかねぇ?」

「ロリコンオタクっぽいからロリな絵でも描いているんだろ。あいつのことは二度と口にするな」

「彼女は、イブキさんのパートナーとして良かったんですけどねぇ」

「彼だろ。あいつの中身は男だ」

「んー、そうっスかねぇ……」


 セーラは逆の考えのようだ。


「俺は、裏切り者が嫌いなんだ」

「それで、裏切りのない、お仲間さんはいつになったら来るんですか?」

「知らん」


 昨日の夜にフレンドリクエストがきたシャアナという火の魔法使いとメールで連絡を取り、朝の10時にロビーで待ち合わせの約束をしていた。

 のだが……45分過ぎてもこなかった。

 フレンド登録済みなので、地球にいるのは分かっている。通話をしても、電波が届かない。転送機の近くにいなければ、通話ができないのだから、あって無いような機能だった。


「今時こんなツンデレ文を書く人なんているんですねぇ」

「昔もいないだろ」

「炎の魔法使いさんは魅力的だけど、怪しいので別の仲間を探しましょうよ」

「といっても、他にフレンドリクエストが来なかったんだ」


 我慢するしかない。


「待たせたわね!」


 奴が来たのは、11時を回った時だ。


「ヒロインは遅れてやってくるって、いうじゃない!」


 17ほどの真っ赤な長髪をした少女。

 Yシャツに赤ネクタイを付け、カーディガンを腰に巻き、下着が見えそうなチェックのミニスカートに黒ハイソックスと、学生服の格好だ。

 どっかで見たようなアニメの美少女がリアルに飛び出してきたという、そのまんまの姿だった。


「燃える炎を我が友に、絶望の宴を灰にする! 愛と正義に荒ぶる乙女、紅のシャアナここに参上!」


 この瞬間のためにわざわざ練習を重ねたらしき、決めポーズを取った。


「………」

「………」


 俺とセーラは目を合わせる。


「こないっスねぇ……」

「こねぇなあ……」


 俺たちは見なかったことにした。

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