35日目

 ソキの旅日記 三十五日目

 最近、リボンちゃんが日記を書くのを邪魔してくるようになったので、こっそり書くことにしましたです。

 ソキは、いまは楽音の国の、国境に一番近い都市にいます。

 楽音の国の都市は、国境にくっついていません。

 国境線は山の中にあって、そこに都市が作れなかったからです。

 たぶん、これからも作れないままです。

 国境を越えれば、楽音の方向にも、星降の方向にも、すぐ都市があるので、そんなには困らないですが。


 花舞の国、というのは、国の名前の通り、お花がたくさん咲いている国です。

 都市のどんなに細い通りにもお花が飾られていて、都市を出て移動する道にも、木の花や草花がたくさん咲いています。

 まだ世界が広かった頃、妖精がどこにでもいた頃、この国はとても愛されていたそうです。


 リボンちゃんも、ニーアちゃんも、お花がとっても好きみたいです。

 この国に住めないのが、来るたびに残念、ってリボンちゃんが溜息ついてました。

 どうして住めないですか? って聞いたら、アンタたちだって都市以外に住めないじゃない、それと一緒よってリボンちゃんは言いました。

 ニーアちゃんが、そーっと、体を悪くしてしまうの、空気とか、水とか、妖精には毒になってしまうものが多いからって教えてくれました。

 ……星降の国では、そんなことがないみたいです。


 妖精さんたちは、星降の国に住んでいるのもいますが、だいたいは中間区に住んでいるそうです。

 リボンちゃんのお家も、中間区にあるそうです。



 今日は、これから、次の都市に移動します。

 リボンちゃんの分と、ニーアちゃんの分、お砂糖をいっぱい買ったですよ!

 ニーアちゃんは、自分で持ち歩けるように、ちいさな布の袋も買いました。

 リボンちゃんのはソキが持って行きます。

 お砂糖、かわいいんですよ! 角砂糖の上に、お砂糖でつくったお花が乗ってるんですよ!

 それを、リボンちゃんとニーアちゃんが両手で持って食べるですよ!

 かわいいです、かわいいです……!


 お値段はふつうのの、三倍くらいしましたです。

 ニーアちゃんが青ざめてたですが、リボンちゃんが肩を掴んで

『いいから見なかったことにしなさい……!』

 って説得していましたです。


 えっと。

 ニーアちゃんとは、次の、その次の都市まで一緒に行くことになりました。

 たぶん、四日間くらい。一緒です。

 ニーアちゃんは、星降の国境近くにある、入学予定者さん(ナリちゃんさん)の所に戻らないといけないみたいです。

 よく分からなかったですが、飛ばされてきちゃったって言ってましたです。


 次の、次の都市が花舞の首都になります。

 首都についたら、ソキは王宮へ行かないといけないみたいです。

 リボンちゃんが、

『アンタ、よく考えなさい。これまで全部の王宮に顔出してるのよ? ここだけ行かなかったらどうなると思う? 暇を持て余したアホ王宮魔術師どもが盛大に拗ねるわよ? そうするとめんどくさいでしょ? アタシが。だから、寄れ』

 って言ったです。

 ……ソキ、リボンちゃんのそういう所は、すごいと思うですよ。


 あ、リボンちゃんとニーアちゃん、お散歩から帰ってきたです。

 馬車の乗り場に移動するですよ。


 今日の日記はこれでおしまい。

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