そうして何回か遊んでいるうちに、やがて僕とSさんは二人で会う様になったんだよ。二人で買い物をしたり、郊外を散歩したり、時にはバアにも入ったりね。君は、さっきと話が違うじゃないか、と思うかもしれないが、僕とて健全な青年だったんだ、やはり気になる女性には惹かれてしまったんだよ。ただし、この時は恋だの愛だの言う感情じゃなかったのも確かなんだ。ただ二人で話していると落ち着けると言った程度のものだったんだね。それは丁度僕と君の関係の様なものだったかもしれない。

 そのうち僕が実は男女間においては、今話した様な関係が一番危ないという事に気付いた時にはもう既に遅かったんだ。僕は彼女がいないと生きられない人間になってしまい、一人でいると、何というかこうフワフワとしてしまってね、幽体離脱とでも言えば良いのかな、何かが足りない、何かが欠けている、そんな心許ない気持ちになってしまっていたんだ。

 一度そうなってしまうと寝ても覚めても彼女の気持ちが気になるものでね。何をしても彼女と結びつけて考えるようになってしまったんだ。例えばボウリングをしていても、次がストライクだったら僕は好かれている、とか、ビリヤアドをしていても、次のボオルを落とせたら僕は好かれている、とかね、自分自身と賭けをしたりしていたんだ。そうして成功した時は良い気分になり、失敗した時は今の賭けは無かったことにしよう、なんて考えてね。そんな浮かれた日々を過ごしていたんだ。

 そんなある日、僕は彼女に出会わせてくれたMにお礼を言おうと思って、僕の気持ちを打ち明けたんだ。同時に僕がSさんとしばしば二人きりで会ってることもね。するとMは一瞬だけ真剣な顔をして、

「変だな……。実はね……僕も……Sさんとはしばしば二人で会っているんだ」

 そう言ったんだよ。さらにSさんから『私はあなたがいないと駄目なの』と言われたとも付け加えたんだ。

 そのMの言葉を聞いた僕は塞ぎこんでしまってね。疑心暗鬼になってしまったんだ。怖くなってしまって、しばらくMともSさんとも会えなくなってしまったんだね。きっと僕のことを好いてくれていると思っていた女性が、実は悪友のMのことを想っていたと分かったんだから、あの時の僕の行動は今考えても仕方無かったと思う。

 それからしばらくはMとは繋がりの無い男友達とばかり遊んでいたんだよ。

 そうして、どれくらい経った頃かな? 僕はもうSさんのことは諦めようと思って、忘れるための努力をしていたんだけどね。一月か一月半程経ってから、突然Sさんから連絡があったんだよ。『大切な話があるから少しだけでも会えないでしょうか?』と言った内容だったと思う。実は僕は恐ろしくて最初は躊躇したんだけどね。やはり男としてけじめだけはつける必要があると思い、緊張しながらも出かけたんだ。

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