第10話 夢
俺は自分の部屋に飛び込むと後ろ手で扉を閉めた。
ベッドに座り込むと、どうしたらいいんだ、と頭を抱える。
もちろん殺されるのは嫌だ。
だけど、このままじゃ、キアの国は魔王に滅ぼされてしまうんだ。大勢が死ぬ、キアの大切な人も死ぬ、もしかしたらキア自身も――。
ベッドの上で思い悩むうちに、俺はいつの間にか仰向けになって眠っていた。
眠りながら夢を見た。
学校に行くのに街中を歩いていると、突然周囲の人たちがばたばたと倒れて死んでいく。
驚いていると、向こうからキアが駆けてきて叫んだ。
「間に合わなかった! 魔王は世界を滅ぼしたのだ! だから、こちらの世界でも
そんな――と思った俺の後ろで、また誰かが倒れた。
俺は振り向き、ぎょっと飛び上がった。
それは母さんだった。道路に倒れて息絶えている。
向こうの世界で母さんの
俺は目を覚まして跳ね起きた。
夢だったとわかっても、しばらくは心臓が早鐘のように打っていて動けなかった。
そうだ、このままだと本当にそうなっていく。魔王がキアの世界を滅ぼしたら、こっちの世界だって滅ぼされてしまうんだ……。
窓の外は夕暮れだった。紫の空に梢の若葉が白く透けて見える。
すると、居間で、ガチャガチャと硬い音がした。
ドアの隙間からそっとのぞくと、キアが鎧兜を身につけていた。
母さんは自分の部屋に行ったのか、そこにはもういなかった。
キアが女騎士の姿に戻っていく。
俺を殺しに来るつもりか――?
俺の背中を冷たい汗が流れ落ちる。
だけど、キアは俺のところへは来なかった。
装備を終えると、俺と母さんの部屋を振り向いて、黙って頭を下げる。謝るように、感謝をするように。
そして、玄関を開けて外へ出て行く。
キア!
俺は思わず部屋を飛び出すと、彼女の後を追いかけていた――。
(次回完結)
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