第四話/ざ、らいおん、すりーぷす、とぅないと

こんばんは。

菊千代きくちよです。


先程まで降っていた雨もあがり、今は夜空に星も瞬いている。

こちらはまだ雨期の真っ只中ですが、束の間の晴れ間が我々に、この世界の素晴らしさを、より強く示してくれている様に感じたりもします。

こんな夜はライオン達も狩りを辞めて、のんびりと眠っているのかもしれません。


地球では不夜城などと例えられたりする様に、夜であっても昼間と変わらずに過ごす事も出来ますが、こちらでは夜になったら真っ暗です。

勿論、火を焚く事はありますが、そんなに遅くまで起きている事は先ずありません。

基本的に暗くなったら寝て、明るくなったら起きる。


その様なリズムで生活をしているのです。

だから今この時間に、こちらの世界で起きているのは僕だけなのかもしれません。


それは決して大袈裟ではなく、寝付けているかどうかはともかくとして、殆どの人が床にはついているでしょう。

無理に起きていても何もする事はありません。

薪を無駄に消費するだけになってしまうのです。


恐らく地球でも数百年くらい前までは、この様な感じだったのかもしれません。

そう考えると、まるで数百年前の地球にタイムスリップした様に感じたりもします。


こんな事を言うと、こちらの世界の方が地球よりも発展が遅れている様に思われるのかもしれませんが、実際にはそうではありません。


こちらの世界では別次元の世界から人と共に様々な文化や、高度な技術も迷い込んで来るので、地球より技術力という点では遥かに進んでいます。

そうでなければ、次元の違う地球の皆さんに僕の言葉を届ける事は出来ないでしょう。


地球よりも遥かに進んだ技術を持ちながらも、その技術に寄り掛かったりはせずに、自然を大切にして、自然と共に生きる道を選んでいるのです。


僕はこの世界に迷い込んで来て、最初は戸惑いも大きく、地球に帰りたいと思う事も少なくはなかったのですが、高度な技術に依る豊かな生活よりも、自然を大切にする事に因って、豊かな世界を保とうとする価値観に大変に感銘を受けて、今では、この世界に迷い込んで来れた事を幸福にすら思える様になりました。


そんな幸福を地球の皆さんに少しでもおすそ分け出来たら、これに勝る幸いはないかと思ったりもする。


それにしても、本当に素敵な星空です。

こちらの人達は星空を愛でるような感覚はありません。

だから今この瞬間、この星空は僕だけのもの。


しかし私にも明日の生活があるので、そろそろ休ませて頂きたいと思います。


お休みなさい。

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