第5話
私が目覚めると、そこはベッドの上だった。
そうか…私気を失ってたんだ…。
「やっぱり私もか弱い乙女だからね…何度も耐えられるわけないか…」
「いや、耐えてたがな。実際あの後すぐ起きて何事もなかったように動いてたがな」
…くそぅ、シューちゃんのせいで今からつくろうとしてたか弱い設定が台無しじゃないか。
私はベッドから上半身を起こすと、ムムム…と不満そうな顔でシューちゃんを睨んだ。
因みに私が今いるこの部屋は、王様から用意してもらった部屋で、あの王様の大きなお城の中にある場所である。
そして、なぜかそこでシューちゃんも暮らしていた。シューちゃんが言うには見張りだとかなんとか。
「ここまで私のことを考えてくれてるなんて…やっぱりあの王様は私のことが…」
「大丈夫だ。それは絶対にない」
「デスヨネー」
因みに私は修練場でシューちゃんから剣術を教えてもらっていたのだが、私のあまりの馬鹿力…肉力のせいで、訓練は即中止となった。シューちゃんもそれだけの力があったらもう何も教えなくていいだろう…とか言ってたけど、多分どんどん壊れていく修練場をみてそうするしかなくなったのだろう。
全く困っちゃうよねー、誰かに守ってもらう系女子でいようって思ってたのに、超怪力なんでも壊しちゃう系女子になっちゃうんだからさー。
これも全部肉力のせいだよ。私がお肉大好きなせい…いや、この世界のせいだよ!あーお肉お肉!
「あぁぁ!お肉食べたいっ!」
「まだ起きたばかりだろう!?そんなに朝から肉肉言う人は初めてだ…」
「うるさいよシューちゃん!そんなこと言われたら私がお肉しか食べてないみたいに思われるじゃん!」
「え…違うのか?」
「違わないよ!お肉しか食べてないよ!!栄養バランスありえないぐらい偏ってるよ!!」
私はなんとなくどんと胸を張ると、自慢げにシューちゃんのほうを見下ろした。
いや、見下ろすためにベッドの上に立ち上がり、それでも足りなかったためシューちゃんの枕も下に重ねて、その上に立った。
が、身長は足りなかった。
…私の身長は140…いや、四捨五入して150。
それに対してシューちゃんは見た感じ軽く170は超えていた。
「うぁぁぁ!!シューちゃんのバカぁぁ!!その無駄にある身長を私によこせぇぇぇ!!」
「本当に毎度毎度うるさい奴だな…」
私の渾身の飛びつきはシューちゃんの片手に、まるでハエ叩きで叩くようにはたき落とされた。
「ゲフ…さすがシューちゃん…1本とられた…よ…」
「あぁもう…、私は先に行くからな。いつまでも貴方に構ってなどいられない」
「えぇ〜まってよシューちゃーん!」
呆れたように頭を押さえながら部屋を出て行くシューちゃんを見て、私は慌ててその後を追う。
この世界にきて2日目、まだよくわからないこともたくさんあるけれど、この世界のほうが私には合ってるんじゃないかなーと思ってきた気もする。
まあ、そりゃあここはお肉しかないからね。そんなこと当たり前なんだけど。
私は部屋から出ると、出たところで待っていてくれたシューちゃんに向かって無邪気な笑みを浮かべた。
「…この城は広いからな。別に、貴方を心配しているわけではないが、一応な。一応だぞ!」
「あはは〜、ツンツンデレデレしちゃって〜。シューちゃんがそんなことしたって誰も得しないよ〜?」
「…コロス」
「いやぁぁぁ!!まってシューちゃん落ち着こ!?超需要あります!ありますから!!ツンデレバンザーイ!!」
急に殺気があふれ出たシューちゃんを目の前して、私は廊下を全力で走り、逃げ出した。シューちゃんはその後を物凄い勢いで追ってくる。
しかも、ツンデレって言ったところでさらに加速したよぉ!!
誰かぁ!誰かシューちゃんがを止めてぇぇ!!
私がそう願いながら走り続けていると、前を見ていなかったためか、目の前にいた何者かと思いきりぶつかる。
その人は数十メートル勢いよく吹っ飛ぶ。そのまま気を失うかと思ったが、最後にバク転をし、見事な着地を見せつけた。
「フッ…こやつ…なかなかやりおるな…」
ぶつかったおかげで急停止できた私はその人に対してそう、なぜか偉そうに問いかける。この時私はその人物の素顔をよく見ていなかった…。
しかしよく見ると、そのバク転をした人は、なんと私の大好きな王様なのであった…。
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