第4話
「とりあえず…、なぜ貴方が伝説のその剣を手に持っていたのはわからないが…そして、なぜそんなに雑に扱うのかわからないが…、まず貴方にしてもらわないといけないことがある」
修練場で、さっき落とした伝説の剣をクルクルと片手で回している私に対してシューちゃんはそう言うと、腰にさしていたレイピアを手慣れた手つきで私に向けた。
「シュ…シューちゃん?」
「貴方はまだ正式に鶏肉派になっていないからな。ここで私が倒す必要があるんだ。だから大人しくしていてくれ、すぐ終わる」
そんなことを無表情で言ったシューちゃんは、私に向かって剣を構えると、ものすごい勢いで突きを放ってきた。
それを私は間一髪、横に転がることでそれを回避する。
「ウギャァァァッ!?殺す気!?殺す気ですか!?」
「言っただろう?この世界で死ぬことはないと、すぐ終わるから大人しくしろ」
「そんなこと言ったって、他に方法はないの!?」
「ない」
そう即答したシューちゃんは、次は私が動く暇もなく手に持っているそのレイピアで私の心の臓を貫いた。
「シュ…シューちゃん…、私…シューちゃんのこと…、忘れ…ない…か…ら…。どさり」
「だから死なないと言っているだろう。それと最後の効果音はなんだ…ふざけているのか」
たしかに私は今ふざけました…。しかし、とてつもなく痛いです。いや、これ死にますから。地球だったら即死もんですよ、てか意識朦朧としてきましたよ!!
「うぅ〜鶏肉が一つ〜、鶏肉が二つ〜…」
「貴方の脳内はお肉畑か…、本当にこの者がチキン王国を救ってくれるのか…?王様は何か勘違いしているのでは…」
聞こえてますよシューちゃん…。
私は消えゆく意識の中…そんなことを最後に思ったのであった。
………………………☆完☆……………………
「って、終わらせちゃだめだよ!!私まだ何もしてないからっ!!」
「相変わらず目が醒めるのは早いな…。まあ、とりあえず貴方もこれで鶏肉派の一員だ。身体のどこかに鶏の紋章があるはずだから確認しておくように」
私の様子を見守っていたのか、壁の方で腰掛けているシューちゃんはそう言った。
そして、私はすぐ確認できるように服を脱ぎ捨てようとしたが、シューちゃんから慌てて止められてしまった。
「貴方には羞恥心というものがないのか!?」
「だって、こうしたほうが早いし…、どうせここ私とシューちゃんしかいないじゃん」
「たしかにそうだが…、しかし…なぁ。
…あと、そこ、左肩のとこ見てみろ」
「あ、あった!これでシューちゃんも私のことを三久様って呼べるね!!」
「呼ぶかっ!!」
私は着崩したせいで見えた左肩に鶏肉の紋章があることを確認すると、嬉しさのあまりその場で伝説の剣を振り回してしまった。
すると、私のドジっ子属性が発動してしまったのか、手に握っていた柄がスッポリと抜けてしまい、伝説の剣はすごい勢いで天井に突き刺さってしまった。
「おぉう…ナイスホームランっ!まさかボールじゃなくてバットが飛んでいくとは…」
「………」
シューちゃんはあまりの事態に頭が追いついていないのか、ただ呆然とその様子を眺めていた。
そろそろシューちゃんもツッコミ力が低下してきたか…、まあ、私だしね。こうなってもしかたな…
「ブホヘァだ!?」
突如上から飛んできた拳に、私の後頭部はかなりにダメージが入る。…めり込んでないかな…、後頭部にめり込んでないかな…。
私は後頭部に拳がめり込んでないことを祈りながら頭をさすった。ああ脳ミソは大丈夫だよ!もともとノミぐらいの大きさしかないし!
「貴方という人は…貴方という人は…!!」
「あ、やばいやつだこれ」
シューちゃんの全身から溢れでている殺気に私は身の危険を感じると、そのまま修練場から逃げ出そうとした。
が、そう簡単にシューちゃんから逃げれるはずもなく、私のは首根っこをシューに鷲掴みされた。
「この世界は…何度殺されようが、死ぬことはない…なあ?三久様…このことが貴方ならよぉくわかるよなぁ?」
「はい、存じております。本当テヘペロです。すみませんでした。マジテヘペロ」
あ、本当に謝りたい時はオススメだよこれ!マジテヘペロ。
…ていうか、今思ったけど、殺し合いとかないって最初言ってたのに普通に殺されようがとか言ってるよシューちゃん!!
いつの間に手にしていたのか、シューちゃんは修練場にあるありったけの剣を私に投げつけた。その剣は私の身体に百発百中し、私は本日2度目…いや、ジャーマンスープレックスを含めると本日3度目の失神を体験するのだった。
あとで傷跡とか残らなかったら…いいな…。
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