第3話
こんにちは。王様の部屋ナウの私、三久である。一つ思ったことがあるんだけど、あれだね。王様って全員髭もじゃもじゃのおじさんってわけじゃないんだね。
私は目の前で見るからに高そうな椅子に座っているイケメンな青年を見てそう思った。
なんと王様は金髪碧眼、色白高身長…ここまで完璧な人はいるのだろうかというほどの美少年だったのだ。
「いや、私が知ってる王様はこんなんじゃない…まさか貴方は王様の替え玉ですか!?」
「こらっ!?何て失礼なことを言っているんだ貴方は!?」
突然の私の言動にシューちゃんは珍しく慌てながら私に注意してきた。シューちゃんの反応からして、本当にこの人が王様なのか…。もらっちゃダメなんだろうか…この王様。
「はは…、思ってた通り面白い奴だな。どうだ?ここはどこを見ても肉だらけ…、お前にとって快適な場所だと思うが」
「はいっ!!よければ王様のお肉もいただきむごめが」
途中でシューちゃんに口を塞がれた私は、言いたいことを最後まで言えず、そのまま押さえつけられた。
私は!本能のままに行動するのです!離せっ!離してくださいっ!!
「王様…本当にこの者で大丈夫なのでしょうか…」
「大丈夫だ。面白いじゃないか、最近退屈だったんだ、この者がいると多分それも和らぎそうだ。それに、シュバルムも感じるだろう?この者の肉力を」
「確かに…、肉力だけは測りきれないほどの力を感じますが…、他にいろいろと問題があるでしょう…」
「まあ、細かいことは気にしないことだ」
王様はまた「ははは」と魅惑の笑みを浮かべると、近くに置いてあった…、ワインだろうか。何か飲み物らしきものを口につけた。
私はそんな王様の様子など見る暇もなく(いや見たかっけどさ!)、いまだに上に乗っかっているシューちゃんの腕を退かすと、酸素を求めて大きく息を吸う。
「息できなかったじゃん!?シューちゃん!!殺す気ですか!?」
「ハイ」
即答してるしっ!!
「王様を危険にさらすような人を生かすわけにはいかないからな」
「ちょっ、ちょっとまって!?シューちゃん!?一旦落ち着こ!?ね!?」
「…冗談だ」
シューちゃんはそう言うと、私から離れ、はぁ…とため息を吐いた。
今のは本当に冗談だったのだろうか…、シューちゃん、さっき目が本気だったよ!?
「とりあえず、もうここで立ち止まってる理由もない。貴方には戦ってもらわないといけないし、今から貴方にここでの戦い方を教える。ついてきて」
「おお!?ついに魔法を伝授してくれるときがきたのですか旦那!!」
私は両手でにぎにぎとねだるような動作をしながらシューちゃんに近寄ったが、シューちゃんはそんな様子の私を完全に無視して外へと出て行った。
ついにシューちゃんも無視という技を身につけたか…、でもそんなことで私を大人しくできるなんてお、思わないでよね!?
「ここだ。ここ、チキン王国の主な戦い方は剣術。肉力を剣に宿して戦うんだ。
そんなに魔法が使いたいんなら豚肉派の豚共に殺られて仲間にしてもらってこい」
シューちゃんと一緒に数十分ほど歩いてやっと着いたのは何かの修練場らしき場所だった。
「えぇ!!ヤられてこい…ですって…。こんなピチピチの女子高生を…。しかも豚共に…。嘘でしょ…、嘘だって言ってよシューちゃん!!」
「もういい、さっさとヤられてこいビッチが」
「ひどいよ!?冗談通じてっ!?」
呆れた表情で私を追い返そうと手で払ってくるシューちゃんの衣服に、私は必死にしがみつきながらそう言った。
「あ、そうそうシューちゃん。私もシューちゃんって呼んでるからさ、そろそろ私のことも三久様って呼んでよ」
「どうして私が…ってなんで様づけなんだ!!」
「えぇっ!?私からたちそういう関係じゃなかったの!?」
「どういう関係だ!!」
明らかに眉間にシワを寄せるシューちゃんは、この後私の方へ手の関節をポキポキと言わせながら近寄ってきた。
そーろそろシューちゃんも怒ってきたっぽい、最初のときと比べるとだいぶ私の扱い雑になってきてるよね〜絶対。
「シュ、シューちゃん?そんなに眉間にシワを寄せたら、せっかくの可愛いお顔が台無しだぞ☆」
私はそんなシューちゃんをさらに挑発するように舌をペロっとだして腕は腰、バッチリとウインクを決め、かなり上出来なぶりっ子ポーズを繰り出した。
「ほぉ…そうかそうか…。そんなに死にたいか…」
「…ゴメンなさいゴメンなさい。許してください。シューちゃんが隠れぶりっ子だと言うことは誰にも言いませんから」
「いっぺん死ねぇ!!」
シューちゃんからのジャーマンスープレックスが完璧に決まり、私の首が一瞬どこかへ逝った気がした。
そして、私の意識がどこかへと飛んでいった…、私は誰…私は三久…ここはどこ…ここはチキン王国…。
「はっ!!」
「うぉ、意識もどるの早いな」
「世界1周した気分。肉力が身体から溢れ出てくるよ…」
私は謎の、急にみなぎってきた力に感動しながらシューちゃんの方へ顔を向けた。
ちなみに、私が気を失ってから起きるまでにかかった時間は5秒である。
「たしかに…、謎の肉力が貴方の身体を包んでいる。これだけの肉力があれば、もしかしたらあの剣も扱えるかもしれない…」
「あの剣って?もしかしてこの剣?」
私は、触るな危険という札が貼ってあるなにやら訳ありの剣を、軽々と持ち上げると、それをシューちゃんに見せた。
その剣はつばが鶏の形をしていて、その他のところはだいたい日本刀と同じような見た目であった。ただ、異常なくらいに…軽い。
これ、何かの偽物とかそういうのじゃないかな…。
「三久…貴方、どうしてその剣を…、というか、この世界で1番重く誰も扱うことはできないと言われているその剣を…なぜ軽々ともちあげているんだ…!!」
「へ?これが1番重いの?」
私は、さらなる疑問を感じながらシューちゃんのその今まで見た中で1番の驚いた表情を見て、これはヤバイと確信した。
すぐさま片手で持っていたその剣をすごく重たかったように地面に落とすと、「あはは〜、本当重いよね〜これ。全然持てないよ」と、必死に隠しながらその剣から離れた。
どうしよ、絶対ばれたよねこれ…、みんなこんな剣が持てないってどういうこと?私のひ弱っ子設定がそんな簡単に崩れるなんて…。
私はそんなことを考えながら、頭を抱えるように腕を近寄せると、そのままシューちゃんの方へと近寄って行った。
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