第4話

「ゆき、最近さらにアルファー能力が落ちているのよ」

「季節の加減でない?私も集中力が落ちているみたい」

「春先だからか」

ゆきは考え込んだすえ、コンタクトを外して眼鏡をかけるゆきであった。

「う~ん、賢さがアップされた感がする」

「そう?やはり、勉強の時は眼鏡かな」

「いいな、アルファー能力に眼鏡は関係ないし」

「とりあえず、このぬいぐるみでまた、特訓しら?」

「やはり、近道はないのね」

と、私はぬいぐるみに動けと念じるがまったく動かない。

昼休み

私はゆきとお弁当を食べていた。

「今度は朱次とホントにデートしたいな」

「あれま、惚れたか」

ゆきはお弁当の最中も勉強していた。

そして、会話も出来る秀才である。

「うぅ~かな?彼のこと考えるとむねが痛いのよ」

「なら、いいものあげる」

ゆきは鞄の中から遊園地のペアチケットを取り出す。

「えぇぇ、良いの?うれ、うれ、嬉しいよ」

「もれなく、お化け屋敷のただ券付きよ」

「うぐ、お化け屋敷?」

「何で?」

私は途惑った、言うか、嫌?怖いのが苦手なので。

「う?いらない?」

「そ、そうね、朱次が怖がって、抱きついて来たら困るでしょ」

ゆきは何か言いたそうだがここは断るべきだな。

「なら、この本を持ち上げられたら、諦めるわ、持ち上げられなければ、大人しくお化け屋敷に行きなさい」

……

しくしく、お化け屋敷に行くはめに……



遊園地

朱次は遊園地に誘うと喜んで一緒に行く事になったので、ここに居る。

「私は、とりあえずジェットコースターに乗りたいな」

「は、はい」

うん?ひょっとして朱次はジェットコースターが怖いのかな?

よし、ここまま、お化け屋敷は無かったことにしよう。

『ブルブル』

う?スマホの着信?

げ、ゆきからだ。

「はい、こちら、なぎさお留守番サービスです」

「アホなこと言ってないで、お化け屋敷は?」

「い、今、朱次がお化け屋敷よりジェットコースターに乗りたいって話してた」

「そう?必ず行くのよ」

「はい」

そう言うと電話を切る。

「え?僕はジェットコースターよりお化け屋敷の方が良いな」

が、が、が、が、ぁ、聴かれた。

「そ、そうね、お化け屋敷行く?」

「うん」

とほほほ、結局行くのね。


遊園地の帰り道


今日はやってしまった、

お化け屋敷で大騒ぎ、滑って、人工池にドボン。

そのまま、帰る事に、でも、朱次は優しかった。

何も言わず服を貸してくれた。

そして、家まで送ってくれている。

「ごめん、お化け屋敷に誘って」

「う、うん」

朱次の様子がおかしい。

いや、私も……


朱次は不自然に近づき、そして……

言葉は無かった。

それは、何年も付き合っている。

恋人の様に……

二人の手は繋がっていた。

何だろ?

これが特別な時間?

違う、何かが、違う……。

このむねの高まりを感じて。ただ、歩いていた。

この帰り道が永遠に続く事を願った。


その夜

でへ、でへへへ……。

私はベッドの上で変な笑いが止まらなかった。

「なぎさ、今日のトレーニングは終わったの?」

げ、下から母親の怒鳴り声が聞こえる。

仕方がないトレーニングをしよう。

そうだ!ひいおじいちゃんの空間に干渉する、アルファー能力を試してみよう。

さっそく……。

????????

何をどうすれば良いの?

するると、母親が部屋に入って来て、

「何、ぼーと、しているの?」

「イヤ、空間に干渉出来るか試していたの」

「もう、ひいおじいちゃんは、物理学を猛勉強したのよ。ばかな言い訳したバツとして、今度の小テストが悪かったら、お小遣いを減らします」

とほほほ、学校の勉強も真面目にやらなければ。






ゆきの部屋

「母親に怒れたから勉強教えて?」

「はい、英語はどうも苦手で……」

うぅ、ゆきが不機嫌だ、当たり前か勉強を教わるのは初めてだから。

「まず、この英文をノートに全部写す」

ゆきが見せたのはド長い、これ英語?と疑いたくなる難解な文書だった。

「解らない単語だらけなのですが」

「単語は辞書で調べる!文法はこの程度なら学校で勉強しているはず」

「いや、苦手だからさね」

「とにかく写す!」

間違えた、教わる相手を、うぅ、うぅ。ゆきはT大を目指しているのだった。

それから一時間ほどたってようやく写し終わった。

「終わったわね、次は解らない単語を辞書で調べる!」

「は、はい……」

さらに三十分ほど地道な作業が続くとゆきがプルプルと震えだした。

「時間だ」

ゆきのハマっているネットゲーのイベントの時間のようだ。

そそくさと、ゆきはスマホをいじりだす。

なんだかな~でも、ゆきは普段猛勉強してるし。

そうだ。

「『ゆきリン』?この単語辞書に載って無いのheart」

「『リン』はヤメて気持ち悪い!!!」

「だから『ゆきたん』heart」

「『たん』も絶対イヤ。ハートも解らないの?破門だ!勉強はもう教えない!!」

助かった。でも、自分で勉強せねば。




















図書館

テストも無事終わりアルファー能力の訓練を始めようとすると、朱次が机に向かってうずくまっている。

「どうしたの?」

「あぁ、テストと漫画の短編の応募が重なって、両方ボロボロなんだ」

こんな朱次は見たこと無い。

「僕は、僕は、あんな駄作を投稿するなんて漫画家を目指す資格すら無い」

「うん……」

「こんなダメな僕を見て幻滅したかい?」

「そんな事無いよ、誰だって落ち込む事もあるよ」

「ありがとう」

その、純粋な言葉に私は今までに感じた事の無い気持ちがあふれて来た。

―――……それは愛しく……せつなく……

『お・も・い・や・り』の言葉が思い浮かんだ。

「今日は私の夢を話したいな、何時も朱次にいろんな事を教えて貰っているから」

「夢?アルファープラスになる事だろ?」

「違う、私は『小さな子供たちの夢』に成りたい」

「夢?」

「アルファープラスは確かにみんなの正義の味方……でも、でも、私は能力が少ないから……」

「なんとなく、分かる気がするよ」

「えへへへ、偉そうな事を言っちゃった」

「ホントらしくないよ」

その後、私たちは笑い合った。




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