第3話

翌日

――学校の昼休み

仕方ないアルファー能力の訓練でもするか。私はしぶしぶ、図書室の奥にむかう。

そこには朱次が居た。


「何で、電話したのに返事くれないの?」

「は?電話?そういえば変な着信が有ったね」

「それ、私だから」

「ゴメン、でも、普通は知らない着信には掛けなおさないよ」

「は?私なら掛けなおします」

これだから……イヤ、深く考えるのは止めよう。

「そうか、なぎさちゃんの番号か……お気に入り登録と……」

う?良いの、何だろう、この嬉しさは胸がドキドキする。

親友の部屋に来ている。名前は『西澤 ゆき』T大を目指して今も勉強中だ。

「ねえ、聞いて、私すごく格好イイ人と知り合えたの」

「聞いてるわよ、私は『天才』だから勉強中でもOKよ……」

ゆきは学年でいつも5番には入る秀才で、そして、努力家でもある。

なんか、いつの間にかに親友になっていた。どこで、どう知り合ったのかも忘れた。

うん?ゆきが突然止まる。

「時間だ!!」

ゆきはおもむろに部屋の隅にある柵に向かう。

「かおりん、ご飯ですよ『ハート』」

そうだ、私の親友はペットの兎を溺愛しているのだった。

「さて、勉強に戻るか」

ゆきは再び勉強しはじめるので話を続ける。

「それでさぁ、携帯の番号交換したの……」

「うん、なぎさって奥手だけどようやく初恋?」

「えぇ……?」

私が返事に困っているとゆきはぷるぷる震えだす。

「どうしたの?」

「イヤ……」

ゆきはスマホを見つめると……

「あぁ~イベントの時間だ!!!」

そうだ、ゆきはスマホゲーが大好きなのだ、普通の女子校生なら当たり前か。

ゆきはスマホを手に取ると嬉しそうにゲームをし始める。ゆきの凄い所はゲーム中だろうと勉強中だろうと普通に会話できる事だ。

うん???兎のかおりんを相手にしている時は例外だが……

「で、初恋なんでしょ」

うぅ……何て言おう、何だか分からないけど、もやもやと言うか、どきどきと言うか、彼の事を考えると桃色な感じ……

「ふ、その困った仕草は恋ね」

ゆきはスマホ片手に言い切ってきた。

「う、う、う、そうかも……」

ゆきはスマホを置くと再び勉強を始める、ホントにT大に行きたいのだな。

「相変わらず、頑張り屋さんね、私は少しアルファー能力の訓練をするわ」

「そう」

「はい」

こんな会話は何時もの事、さて、自分を浮かす訓練でもするか……

ゆきはカリカリ、私は『浮け、浮け』と心の中で願うがゆきのベットの上で座ったまま……

……そして、数時間、続いた。

すると、ゆきがまた、ぷるぷる震えだす。

あ、イベントの時間なのね。

私も何時間やっても体はびくともしない。

「私もダメダメだからゲームしたら?」

「うん」

ゆきは嬉しそうにゲームを始める。

私の『初恋?』以外は何も変わらない毎日のようだ。


翌日

……学校の図書室

私は朱次の漫画を読んでいた、内容は典型的なバトルアクションと言うジャンルらしい、主人公は仲間たちと力を合わせて、悪の組織と戦う話だが、何故か主人公の父親は事故で亡くし、母親はキャリアウーマンで世界中を飛び回っていてほぼ一人暮らしの設定の様だ。


「ねえ?この主人公、寂しくないのかな?」

「あ、それ僕がモデル、父親は居ないし、母親は仕事でほとんど会う機会が無いよ」

「……ゴメン……」

「大丈夫、気にして無いから、僕は孤独でも漫画が有るんだ、空想の仲間たちと冒険するそれだけでね」


朱次は何時もの輝きが無くなり、少し寂しそうになる。私はこころが痛んだ、優しい両親に何不住ない生活、私は……


「私はアルファープラスを目指しているのよ、朱次!!!見ていなさい」

私は本を机の上に置き念じてみる。


「この本を今からバラバラにするわ」

「なぎさちゃん……」

「話を掛けないで、気が散るわ」


すると、本はパラパラとページがめくれる。


「凄い……」

「うるさい、今……」

すると、本から一ページはがれて天上に突き刺さる。まるで鋼鉄の板のようだ。

「これが、今の私の限界なの……」

「ありがとう、やっぱり、なぎさちゃんは凄いや」

と……

「こら!!!何やってる、本を破りやがって」

しまった……


図書室の司書さんだ。


「お前は『千之川 なぎさ』じゃないか、うち学校の唯一のアルファー能力者が悪戯か?反省文だ」


最悪だ……


翌日

私は昼休みに図書室で反省文を書いていた。

私は反省文を書いた事が無いので

まさに、ブツブツです。

すると、朱次がやって来る。

そうだ!

朱次なら反省文の書き方知っているかな?


「ねえ朱次、反省文の書き方教えてくれる?」

「ゴメン、反省文は沢山書きすぎて、逆に分からない」

意外だな、朱次が反省文を沢山書いているなんて、

「そうね、反省文は自分で書かないとね」

朱次はカバンの中から紙袋を取り出し、漫画の原稿を丁寧に差出てくる。


「なに?」

「昨日、書き上げだ」


なにか照れ臭そうで、それとも困っているのか?


「ありがとう、読ませてもらうわ」

「僕は反省文だらけで君みたいな優等生が羨ましくて」

「は?私が優等生?普通に学校に来て、普通に勉強しているだけなのに」


朱次はさらに困ったようになり、よそよそしい。


「僕は夜中まで漫画を描くから、遅刻の常習犯なんだ」

「なら、私が毎朝、電話して起こしてあげる」

「ホント!うれいな」


私は朱次の意外な一面を見れてまた、ドキドキが止まらなく成った。


朱次にモーニングコール、うふ。

ベットの上でゴロゴロ、ゴロゴロ。

おっと、訓練、訓練と。

なにか新しい能力が出来そう。

そうだ、水を凍らせる事が出来るか実験してみよう。

コップに水を入れて、勉強机に置いて。念じる。

パリン。

やっちゃった。

そういえば、化学の授業で水って膨張するのだった。

翌朝

何時もより速く起きて朱次に電話、電話。


「おはよう、朱次」

「うん……おはよう」


やはり、朱次は眠そうだ。あ


「そいえば、朱次、コップに水を入れて凍らせるとどうなるの?」

「どうして、そんな事を聞くの?」

「いや、昨夜ね、アルファー能力の訓練中に割っちゃってさ」

――?返事が無い。

「とにかく、電話したよ、後で学校でね」


おっと、ごはん、ごはん。


――放課後

私はゆきを図書室に呼び出していた。


「ねえ、見せたい物があるんだ」

「どうせ、アルファー能力で本が数センチ、上がる距離が伸びたのを自慢したいのでしょう」


ゆきは退屈そうに言う、当たり前か実際にそうなのだから。


「違うよ、私コップを粉々に出来るようになったのだよ」

私はそそくさと準備をして、コップに念じる。

・・・・・

何も起こらない。


「なぎさ、ずいぶんと楽しそうね」

「は、は、あれ?」

「何時も通り、本でやってみたら?」

「うん」



私は本を立てて念じる。


パタ

調子が良ければ数センチ上がるのだけど……


「私、勉強があるから帰っても良い?」

「うん、私ここで少し特訓するかな」

「頑張ってね」

う、ぐ、ぐ、ぐ、頑張ろう。



今日も朱次にモーニングコールをする、ドキドキ。


「おはようございます」

「うん、今日は起きれていたかな」

「そうなんだ」

「ところで、こないだのコップが割れたのって、あれから出来る?」

「ダメ……」

「そう、そうなんだ。度の休みに一緒にWバーガーに行かない?」

え?ひょっとしてデート?イヤイヤ、普通デートでいきなりWバーガーはないよな。

「僕とじゃ嫌?」

「は、はい、もちろん行きます」

「ありがとう。後で、校で会いましょう」

「うん」


Wバーガーか、着て行こう……



私は悩んでいた。

ゴロゴロ、いつも以上にベットの上で転がる。何だろこの甘酸っぱい

気持ちは。悩んでいても仕方ない。

私はタンスを開いて、あれこれ、あれこれ。

ダメだ、見つからない。

う――???これは、学校のジャージ。

Wバーガーだしこれで行こう。

そうだ、化粧品は新しい物を買いに行こう。

普段、買っているファッション誌がこんなところで役に立つとは。

読者モデルだか、何だかよく分からない物まで出したかいがあった。


待ち合わせ当日

うぐ~早く来すぎてしまった。コーラを頼むのが三回目だ。

すると、朱次から携帯の着信がある。

ようやく会える、ふーう。


「何その格好?」

「え?学校のジャージ……」

「ダサ」


やってしまった!!!!!


「え、いや、その、家の洗濯機が壊れてこれしか無くて」

「は?」

「ごめんなさい、センスがないだけです」

「ま、いいや、一緒に食べよう」

「それが……その、早く来すぎて、お腹いっぱいなのです」


不味い、と言うより最悪な状態だ、完全に嫌われた。


「大丈夫、僕もお腹いっぱいだから、飲み物だけにするね」

あれ?さっきまで一緒に食べようと言っていたのに?

「それで、コップが爆発の話だけど瞬間的に凍るとかコップ自体に強い力が……」

なんか、いきなり難しい話になった、私は朱次とラブトークを期待してきたのにやはり最悪だ。




私は海にいた。そう、叫ぶ為である。


『ジャージのバカやろう……』


誰も居ない海に響く。


「楽しい?」


付いて来たゆきの冷たい言葉が心に刺さる。


「うん、泣いて良い?」

「私のムネでお泣き」

「はい、お姉さま」


私は感動して、抱きつく。


「きもい、ホントに抱きつくな」

「うぅ、うぅ、ヒドイ……」

「仕方ないな、お泣き」

「ありがとう♪」


う、う、柔らかい。


「きもい、触るな」

「ゴメン」

「もう、仕方ない、仕方ない、子猫ちゃん」

「ありがとう♪♪♪」


すると、スマホのアラームが鳴る。


「あ、時間だ」


ゆきはスマホを取り出し、真剣な顔で遊び出す。

ヒドイよ~




50年後

アルファープラスの人数は減少し、世界は混沌としていた。

そんな、時に『伝説の七人』に憧れる少女がいた。

彼女の能力は『炎』、火を自在に操る能力である。

しかし、その能力は極めて低くマッチ程度で何も役立たななく、本人も悩んでいた。

……

……

……

「なぎさ!まだ、寝ているの?遅刻するわよ」

うーん、なんだか変な夢を見たようだが??

げ!!ヤバこんな時間、急がなきゃ!!

私は急いで学校に行く支度をする。


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