体への侵入者
「じゃあね、純平くん、桃華ちゃん。」
笑顔で手を振る葵を見送った。
「葵さん、私は負ける気はありませんよ。」
「そっか、私たちライバルだね。」
「正々堂々、正面から戦って勝ちますから。」
こいつらは何の話をしているのか?、俺には理解出来ない女性の友情ってやつか?。
「気をつけて帰れよ。」
「純平くん、今日はありがとう。」
そして、葵は歩いて行った。俺達はその姿が見えなくなるまで手を振っていた。
「そろそろ、家に戻るか。」
姿が見えなくなってから、家に戻った。
次の日の朝、俺は高熱と喉の痛みにうなされていた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。」
「そうには見えないけど。」
まさかの風邪である。
先週からいろいろあり、全然休んでいなかったのが原因か。
「桃華、そろそろ家を出ないと間に合わないんじゃないか?、俺はいいから学校に行ってこい。」
「わかったよ、無理はしちゃだめだよ。」
そんな時、インターホンが鳴った。
「純平くん、学校に行こー、遅刻しちゃうよ。」
だるくてふらつく体をなんとか制御し、玄関までたどり着いた。
ガチャ、扉を開けると、いつもと同じ元気な八重桜葵が立っていた。
「純平くん遅刻って、どうしたの?、ふらふらしてるよ。」
「悪いちょっと体調が良くないから、今日は先に行ってくれ。」
「えー!?、大丈夫なの?、すごくしんどそうだけど。」
そんなに辛そうな顔をしているのか俺は。確かに立ってるのも辛いが。
「学校には電話でもしておくよ。来てもらったのに悪いな。」
「気にしないで、それよりしっかり寝て早く治してね。」
そのタイミングで、ちょうど桃華が学校の準備を終えて出てきた。
「あっ、桃華ちゃんおはよー。」
「葵さん、おはようございます。」
「そうだ、桃華ちゃん駅に行くんだよね?、途中まで一緒に行かない?」
俺達が通ってる学校は、駅に行く途中にある。
「いいですよ。」
「じゃあ、純平くん私達行ってくるから、何かあったらすぐに連絡してね。」
二人を見送って再び家に戻った。
その後、とりあえず学校に電話して、今日は休むと伝えておいた。
「しんどいし、少しだけ寝るか。」
寝室のベッドに入ると、俺は五分もしないうちに深い眠りに落ちた。
「おはよー、葵ちゃん。」
学校に着くと、今日も元気な勇気くんが挨拶してきた。
「おはよう、勇気くん。」
私が席につくなり、勇気くんは不思議な顔をしてこちらを見てきた。
「勇気くん、どうしたの?」
「いやー、今日は純平と一緒じゃないんだな。喧嘩でもした?」
「喧嘩なんてしてないよ。なんか純平くん風邪みたいでさ、多分今日は休むんじゃないかな?」
「年がら年中元気な純平が風邪とか、明日は吹雪でも吹くんじゃね(笑)」
勇気くんが言ったように、純平くんが休むのは珍しい。
「ほんとにね、明日に地球滅亡でもしそうだね。」
本人が居ればキレの良いツッコミが来るのに、誰もつっこんでくれないと、少し寂しい気がした。
「でも、さすが主人公様だな純平は。こんなに主人公行動しておいて、未だにモブがなんだかんだと言ってるんだからな。」
「勇気くん、純平くんはモブじゃないよ。かっこよくて、優しくて、穏やかな気持ちにさせてくれるもん。私にとってスーパーヒーローだよ。」
「くっそー、純平めこんなに思ってくれてるのにモブとか、本当のモブにボコボコにされろー!!」
「勇気くん、純平くんと喧嘩しちゃダメだよ。」
「葵ちゃん、大丈夫だよ。一発殴るだけだから。」
「全然大丈夫じゃないよー。」
「それはそうと、せっかくだし俺と葵ちゃんでちょっと御見舞に行かないか?」
「あっ、それいいね。風邪だと何をするのも大変そうだから、手伝いに行ってあげようか。」
「それじゃ、放課後に一緒に行こうか。」
その時、一時限目の始まりを告げるチャイムが鳴った。
あっという間に放課後になっていた。
「勇気くん、純平くんのお見舞いに行く?」
「そうだな、ちょっと顔を見に行こうか。」
「準備早くー、置いていっちゃうよ。」
「どんだけ愛されてんだよ。」
「ん?何か言った?」
「いや、何でもないよ。お待たせ、それじゃ行こうか。」
葵と、勇気は純平のお見舞いに行くため、二人で純平の家に向かった。
あまりに体調が悪いため、ゆっくり寝ていた。
その時、家のインターホンが鳴り響いた。
「純平ー、お見舞いに来たぞー。」
「純平くんしんどいんだから、そんなに騒がしくしたらダメじゃない。」
どうやら、勇気と葵がお見舞いに来てくれたようだった。
しかし、俺は玄関にたどり着く間に三回ぐらい倒れそうになってしまった。
やっとたどり着いた玄関、扉を開けるといつも通り元気な二人が、フルーツを買ってきてくれていた。
「純平くん、今日の連絡とフルーツ買ってきたよ。」
「わざわざ悪いな。」
「どうしたんだよ純平、お前が風邪なんて珍しいな。」
「最近少し無理しすぎて、体がだいぶやられていてたようだわ。」
「そんな状態じゃ料理とかしんどいでしょ?、私が料理作ってあげるよ。」
まさにできた女性だ。
俺は、その言葉に甘えることにして、二人をリビングに案内した。
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