ホームなのにアウェイ
妹が家に住むようになってから数日が過ぎた。
そんなとある日の学校での事である。
「なあ勇気モブってなんだっけ?」
親友の勇気に、普通の人なら、何言ってんだこいつ。と言われかれない意味不明な質問をしていた。
「はぁ?、そんなのお前と真逆の境遇の人のことに決ってんじゃん。」
「お前から見て、今の俺ってどう見える?」
「主人公だな。」
バッサリと言われてしまった。
でも、そうだよな。転校生と幼なじみで積極的にアピールされ、更には妹と家で二人暮らし。
これを主人公と言わずに何というのか。
「だって、泣いている葵ちゃん慰めたりしたんだろ、そんなの主人公以外に何て言えばいいんだよ。」
「そうだよな。」
ちょっと待て、何で知ってるんだよ。こいつ、どこで見てたんだよ。
「勇気、俺と立ち位置変わらないか?」
「嫌だよ。そんな胃に穴が開きそうな立ち位置。それに、傍から見てた方が楽しいしな。」
親友なのに冷たいやつだ。こっちは既に心身ともに疲れ果ててきているのに。
「主人公様の出番が来たみたいだぜ。」
勇気がそう言っていると、俺の後ろから【八重桜葵】がやって来ていた。
すると唐突に目の前が真っ暗になった。
「だ~れだ?」
どうやら、葵に目隠しをされたようだった。
「誰だもクソもこんな事やるのは、クラスに一人しかいねーよ。」
「その子は純平くんの将来のお嫁さんです。さあ、だ~れだ?」
なんと高度なトラップ、答えたら結婚待ったなしじゃねーか。
その間もずっと、俺の目の前は真っ暗のままである。
「絶対に答えないからな。答えたら婚姻届持ってくるに決まってるからな。」
「答えてくれるまで、やめないからね♡。」
「プッ、良かったな純平、結婚決まって。ププッ。」
俺が苦しんでいる時、勇気は笑いをこらえるのに苦しそうだった。
こいつ、いつか仕返ししてやる。
「そう言えばね、勇気くん、この前私が教室で泣いていたらね......」
勇気が俺の行動を知っていたのは、幼なじみが原因だったようだ。
目隠しされて困っていると、授業開始のチャイムが鳴った。
「ほら、授業始めるぞ。みんな席に戻れ。」
化学の先生が叫んでいた。
「お前ら早く戻れよ。」
「えー、仕方ないな。授業が終わったらまたやろうね、純平くん。」
「やらないし、早く戻れ。」
やっと目の前が明るくなった。
ほんとに最悪の朝だった。
「じゃあ今日はここで終わろうか。宿題の化学式のプリントは来週までだから、提出忘れないように。」
やっと終わった。てか、化学とか目に見えない物をどうやって理解しろってんだよ。
「おい、純平ずいぶんとお疲れじゃん。」
「朝は誰かに襲われて、それを見て楽しんでる友達のおかげで疲れてたんだよ。」
「誰だ!?、そんなひどいやつは。」
こいつ、本当に覚えておけよ。いつか仕返ししてやる。
「純平くん、おっ疲れ~!。って、ずいぶんと疲れてるね。」
なんで、俺の席の周りではこんなに賑やかなのか。
「お前、席隣なんだから聞こえてただろ?」
「うん、聞こえてたよ。でもぉ、純平くんの口から聞きたいかな~。」
「うるさい。帰れ。」
「うわ~、ひど~い。純平くんそれがレディに対する態度?」
「お前がレディーなら世の中の全ての人が、レディーになるよ。」
「私の初めてを奪ったのに...」
あっ、こいつここでそんな事言うと。
「な、な、な、なんだと純平!!、お前葵ちゃんの初めてを奪ったのか!?」
ほら、やっぱりこうなったか。
「そうなんだよ、勇気くん。あの日の放課後のにね......」
まずい、今のうちに逃げておこう。
そろ~り、そろ~り。
「ドコイクンダジュンペイ。」
「ち、ちょっと、ト、トイレに。」
「イカセルワケナイダロ。詳しく説明しろー!」
しっかりと勇気に捕まってしまった。そして、話を聞きつけたクラスの人も集まり、完全に敵しかいなくなってしまった。
「わかった、わかったからサソリ固めはやめて。本気で体がいかれるから。」
「なら、早く説明を。」
そして俺は全てを言わされた。それも、クラスのほとんどの人の前で。
勇気は教卓の前に立ち、俺はクラスの教卓の前の席に座らされた。
「それでは純平、判決を告げる。」
「えっ!?、裁判だったの?」
「うるさい!、裁判してやってるだけありがたいと思え。」
えー、めっちゃアウェイじゃん俺。
「純平、お前は一週間、俺と葵ちゃんのパシリだ!」
周りがずいぶんと盛り上がっている時、一人の女神が囁いた。
「さ、さすがにそれはかわいそうじゃないかな。私にも責任はあるわけだし。」
しかし、裁判長?は許してくれなかった。
「葵ちゃんは悪くないよ。原因は全てこいつにあるから。」
もうちょっと頑張ってくれ。助けれるのはお前しかいない。
「え~、でもさすがにパシリは...」
「仕方ないな。じゃあ、俺と葵ちゃんに一週間昼飯奢るってのはどうかな?」
「それいいね。パシリじゃないし。良かったね純平くん。」
「それでは、これにて裁判を終了とする。」
これって、完全に魔女裁判じゃないか。
「それじゃ純平、食堂に行くぞー!。カツカレーの大盛りでも頂くとするか。ほら、葵ちゃんも行こうぜ。」
「お言葉に甘えて私も頂こうかな?」
「お前ら鬼かー!!」
俺の悲しい声がクラスに響き渡った。
モブになるのはまだ先になりそうだ。
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