平穏は与えられない
やっと帰ってきた。
今日ほど大変で、疲れた日は久しぶりである。
とにかく、彼女が笑ってくれたこと、悩んでいて泣いたけど、やっぱり彼女には笑顔が似合ってるな。
そのことを考えると、なぜか自分も笑顔になり、ほんわかとした気分になれる。
しかし僕はその感情の名前を知らない。
「やっぱりあの時、師匠に相談して正解だったな。」
実は彼女を探しに行く前に、俺が師匠と呼んでいる【らふぃ先輩】に相談しておいたのだ。
師匠はイタリアと日本のハーフで帰国子女であり、とても頼りになる人生の大先輩である。
「師匠、いきなりですいません。少し助けてほしいんです。」
「どうした純平?俺ちょうどゲームしようと思ってたんだけど、まあかわいい弟子のお願いなら断れないよな(笑)」
「ありがとうございます師匠。それでですね、女の子が泣いてる時にどうやって慰めたらいいですか?」
「はぁ?純平そんな事で電話してきたのか?」
「僕は経験なくてどうしたらいいのかが、まったくわからなくて.....」
「純平、一つ質問してもいいか?」
「なんですか師匠?」
「お前にとってその女の子は大切か?」
「もちろんですよ!」
「なら、俺が言うことは無い。純平、平穏を求めるのも悪くは無いが、お前は大切な女の子が泣いているのに放っておくほどヘタレじゃないだろ?」
「すいません師匠、ありがとうございます。」
俺はすぐに電話を切って走り出したのだ。
「ふぅ~、さすがに頑張りすぎたかな。」
普段からあまり運動をしない人間にとって、今日の全力疾走はきつすぎた。
そんなことを思いながらベットに寝転がっていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。
ピーンポーン!ピーンポーン!ピーンポーン!ピーンポーン!
「ふぁ~、うるさいな、今行きますよ。」
まったく目覚めの悪い朝だ。
イライラしながらも玄関まで行き、眠い目をこすりながらドアを開けた。
開けると同時に、前からの衝撃によって尻もちをついてしまった。
「お兄ちゃん、会いたかったよ~」
「痛っ!!」
「お兄ちゃんどうしたの?、大丈夫?」
「お前が原因だろ『桃華』、何があっていきなりで飛びついてくるんだよ。」
「一秒でも早くお兄ちゃんを感じたかったの、仕方ないよね(ゝω・)キラッ☆」
「『(ゝω・)キラッ☆』じゃねーよー!」
「ほらほらお兄ちゃん私の紹介を読者の人にしなくていいの?」
「バカヤロー、そんな事言うなよ。キチ〇イとして紹介するぞコノヤロー。」
私の名前は【広澤桃華】、お兄ちゃんと相思相愛の実の妹だよ。
「お前、変な紹介しただろ?」
「ギ、ギクッー、そ、そ、そんなことないよー(棒)」
「わかりやすいんだよ!、今どきギクッーとか言うやつなんていないだろ。」
「そんなことより、可愛い妹が帰ってきたんだよ。何か言うことあるでしょ?」
「何で来たんだよ?」
「何って電車とバスだけど。」
これはつっこむところかと思ったが、面倒だから放置しておいてやろう。
「お兄ちゃんつっこんでよー!、完全に私がすべったみたいになってるじゃん。」
「みたいじゃなくて、実際にすべってるから。」
なぜか、桃華と喋っていると彼女のペースになってしまうのだ。
「そんなことより、お兄ちゃん私お腹減ったよ。」
「ちょっと待ってくれ、俺はシャワー浴びたいから、リビングでテレビでも。」
「一緒にお風呂とかお兄ちゃんのエッチー!」
「どうやったらそんな想像が出来るんだよ。」
「でも、お兄ちゃんが求めるなら私...」
「おいおいおい、さすがにまずいから。」
どうやらこの世界は、どうしても俺をモブにしたくないらしい。
「おとなしくリビングで待ってろよ。」
俺がシャワーを浴びていると、脱衣室のドアが開く音がした。
「お背中ながしましょうか~。」
はぁ、面倒だなこいつは。
「じゃあ、桃華も一緒に入るか?」
「えっ!?、一緒にって私も脱ぐの?」
「あたりまえだろ。風呂に入るのに服着ているわけ無いじゃん。」
「わ、私とお兄ちゃんが裸で…。そ、そんなのダメー!」
走って逃げていった。やっぱりあいつを追っ払うのはこの方法が一番だな。
静かになったので、俺はゆっくりとシャワーを浴びることが出来た。
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