昔、提督。いま、店長。(文末付録 第二章までの、あらすじ、登場人物、施設)
「で、どういう事だ三島」
カメクラ店長の神崎こと俺様は、リアルにカメクラ店内におわします、我が妻の現し身を横目で見つつ、ニライカナイ基地司令の三島に電話をかける。
用件はもちろん、
威? あいつは来ると思ってたよ。言われてみれば琢磨と似ている。
『閣下、ご用件は何でしょう』
「しらばっくれんな!」
『えー……っと、何の件でしょうか』
「ふざっくんな! 瑞希だよ瑞希! いまここにいんだけど!?」
『……あっ』
「あっ、じゃねえ! 今来い! すぐ来い! 秒で来い!」
『わ、わかりました!』
それにしても、ああ、なんということだ。
寸分違わぬその愛らしい姿は、生前のままだ。浴衣がとても似合っている。
しかも髪型までほぼ同じとは、やはりご両親が意識してのことか。
非常に複雑な気分ではあるものの、瑞希姫へのリスペクトが隅々まで行き渡り、愛情をかけて育てて下さったのがよく分かる。その点に関しては、彼女のご両親に本当に心から感謝したい。
百年前、俺がここに島流しに遭ったと思ってる奴が多いが、実際は……瑞希と二人になりたかっただけなんだ。ただ、それだけだった。
俺は瑞希と一緒になるために、仕方なく軍に手を貸した。一日も早く二人で暮らしたかったからだ。他の理由は一切ない。
終戦を迎えて、やっと一緒に過ごせると思ったのに、俺を皇室に連なる者にしたくなかった連中が瑞希に手をかけた。――護れなかった。この俺が。
結局、俺が瑞希を殺したようなもんだ。
今になって彼女の艶姿を俺に見せつけるとは……。
これはやっぱり俺への罰なんだろう。もう、いっそ殺して欲しい。
永遠に苦しむのは、イヤだ。
俺はあと何百年、何千年、お前を弔えばいい?
どうすれば俺は許される?
教えてくれ、瑞希。そして、殺してくれ。
誰でもいい。俺を。
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付録 第二章までの、あらすじと登場人物と設定
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✅あらすじ
・ニライカナイ基地に着任した主人公とヒロイン、島民に大歓迎される。軍宿舎の準備が出来るまでの間、島のリゾートホテルに滞在し、観光を楽しむ。
・地元神社の祭りに遊びに行く二人。そこで出会う神社の巫女、そして何かに取りつかれたようになったヒロイン。巫女はヒロインを瑞希姫と呼ぶ。
・主人公はヒロインを連れて神社を後にし、休める場所を探してマンガ喫茶を併設するゲームショップに入店する。そこでこの島の所有者であり、かつての大戦の英雄神崎提督と出会う。彼はヒロインを自分の無き妻と見間違える。
・翌日ヒロインがウェディングフォトを撮影しようと、主人公をホテルのチャペルに呼び出す。が、仲たがいの末に主人公を怒らせてしまう。
✅登場人物
・人外が普通に、少数存在する世界。一部の神も人間同様の実体を持って存在する。
►主人公(南方威) 軍神。行方不明の兄の代わりにイクサガミとして海軍に入る。いじめでPTSDを発症しており、大勢の前に出ると過呼吸になる。ヒロインの自分への態度に不満が募り、ついに爆発してしまう。
►ヒロイン(橘みなも) 人間。女子高生。主人公とペアの戦巫女として海軍に入る。憧れの戦巫女にはなれたが、島に来てから主人公との間に軋轢が生じ始める。不可解な体調不良が原因かもしれない。
►ホテルのコンシェルジュ 人間。神崎元提督の経営するリゾートホテルに勤める女性。主人公たちを精一杯もてなす。
►市場の食堂のおじさん(八坂) 人間。漁業を営む諏訪丸の船長。食堂は家族経営。主人公の兄と親しく、遭難後は諏訪丸で捜索に協力している。娘がマンガ喫茶でバイトしている。
►難波 元宅配屋のお兄さん、実は主人公とヒロインの警護役の海軍将校。着任後も引き続き主人公とヒロインの警護をする。
►巫女 神楽殿で舞う宮司の娘。ヒロインを瑞希姫と呼ぶ。舞う姿を主人公に天女に見間違われる。神族にしか見えない力がにじみ出ている。
►店長(神崎有人) ゲームショップの店長。実は皇国の救世主・神崎提督の成れの果て。妻の瑞希姫を弔いつつ日々を怠惰に過ごしている。
►マンガ喫茶のウェイトレス(八坂伊緒里) 八坂船長の娘。弟が三人いる。
✅施設
►ホテル 神崎元提督の経営するリゾートホテル。五つ星クラスの設備がある。
►神社 皇女・瑞希姫を祀っている。また瑞希姫の墓所でもある。ご利益は海難除けや戦勝など。
►カメハメハクラブ 主人公の親友・吉田の父が経営する大型ゲームショップチェーン。神崎元提督がニライカナイ支店の店長を務めている。フランチャイズ店舗のため、本土にはない施設が併設されている。カラオケボックス、マンガ喫茶、バーなど。八坂伊緒里はこの店の併設飲食店でウェイトレスのバイトをしている。
►ニライカナイ基地 民間空港と滑走路を共有している皇国海軍基地。第一列島線最南端に位置し重要な国防拠点となっている。
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