【忍者】【館】殺人事件
第35話
掛け軸に落雁が二筋描かれている。裏から透かして見れば其々先頭から三羽目と四羽目が浮かび上がる。
それが目印で、この地下通路はとある一般家庭の家屋、二階の一部屋へと通じている。
めくって中に侵入すると、家の住人と目が合った。
「ひいっ何ですかあなた達。」
眼鏡をかけた痩身の男だ。
男は歳の頃30代後半、部屋の片隅には学習机が置かれている。刺激しないよう、ゆっくりと身振り手振りで説明する。
「落ち着いて。我々七人はバウハウス忍者と申すデス。」
「なんだそうなのか。そのバーモンドハウス達が娘の部屋に何用ですか。」
「実は貴方に家を売ったのが我々の父デス。」
嘘を吐いた。確かに家を建てたのはバウハウス忍者で、ドイツ忍法デザイン学の粋を集めた建築は住むだけで忍者としての素養が身につく造りとなっている。だがバウハウス忍者は血縁でなく徒弟制により継承される。つまり、この家の住民、西大寺冬彦に家を売ったのは我々の親方(マイスター)だ。
だが西大寺冬彦は我々の嘘に納得したような顔をした。
「成る程、あなた方は十年前にこの欠陥住宅を売ったあの胡散臭いドイツ人の息子達なのですね。」
西大寺冬彦は何も理解してないようだ。興味もないのだろう。
「そういう事デス。実は我々は今とある教育機関に雇われてましてネ。」
「へえ、その血縁者ばかりの欠陥建築事務所が教育機関に雇われ何の用ですか。娘は今年でまだ13歳。家庭教師の宣伝ならタダじゃおきませんよ。」
「そんな事ではありまセン。いわば我々は競合他社と代理戦争の状態でしてネ。この家を利用させて貰いたイのデス。」
「なんだそんな事か。」
冬彦の許可は得た。親方(マイスター)の設計した忍法教育デザイン都市理論は壮大で、この家や錦城高校のみならず、街全体の家々、建物の一部が秘密の地下通路で繋がっている。これは甲賀忍者百地八右衛門も知らぬ極秘情報だ。
「お許しを得られタようで何よリ。戦いは三、四年は続くでしょウ。」
「三、四年というと、娘の千秋が高校生になる頃合いですなあ。」
「その頃には娘サンも錦城生かもネ。」
「愛娘に勉強なんて不自由させませんよ!」
「HAHAHA!日本人愚かネ!」
「ハハハ!」
冬彦は快笑しながらビール瓶を煽った。
「ナンデあんた愛娘の部屋で酒盛りしてんダ。」
その時部屋の襖が開いた。
「父上、おつまみ持ってきたぞよ。」
娘は我々を見た。
「…っえ」
「おっト、我々は退散させて貰いましょウ。」
我々は掛け軸の秘密通路から部屋を後にした。
「…アレが西大寺千秋か。とても鍛えられてるように見えんネ。」
帰り道、地下通路内で兄が言った。
私は頷く。
「まあ、多少は鍛えられてないと困りますネ。あの家が戦場になる日も来るでしょウ。自分の身は自分で守って貰わないト。」
「そういう事ダ。青龍サンの依頼も面倒だ。甲賀と事を構えるトハ。」
「EU知識人コミュニティの中でも我々の理論は最も優れている。自分達の力を信じヨウ。」
シュタインメッツの言葉は力強かった。
嗚呼、可哀想なシュタインメッツ。シュタインメッツの最期は酷いものだった。あれから我々は緩やかに敗走を遂げた。この街を思い通りに設計していたつもりが、逆にあの百地八右衛門に操られていたのかもしれない。七人いた仲間も半期毎に数を減らした。
三年後には、メンバーは私と兄だけになってしまった。
「ついにグレイザーとシュタインメッツまでいなくなったナ。」
兄は呟いた。
「だがあの甲賀忍者を追い詰めることができた。俺は行くぞ。」
「待て早まるな。」
その後どうなったのか。背後から出現した両手に私は生け捕りにされ…
煙のように現れた八右衛門。捕らえられた私は曖昧な意識の中、時間と身体の感覚を剥奪され、最低限必要な生命活動を続けていた。隣に兄。我々は終わった。
「君の名前は。」
「西大寺千秋です。」
「ではコードネームは。」
「宝蔵院お春です。」
「よろしい。では君に任務を授けよう。」
その後どうなったのか。
落下、閃光。私の首は崩れ落ちた。
「さらばだ女子高生よ。」
青龍が後ろを向いた。遠くでサイレンの音が聞こえる。虚無僧がよろめきながら青龍に駆け寄る。
「お見事でした。」
「そちらは君らしくもないダメージだな。」
「危うく即死でした。」
再び私は連れ去られた。どれくらい経ったのか。次に目が覚めた時、私はまた、高校生になる夢を見ていた。
「えっ」
「いやはや、嫌がる女の子を分解なんて不本意だなあ。」
「いやいや、やっぱ止め!今日は調子悪い!マジで止めろおいっあっアギィィギギギガガガガガガゴリゴリゴリ」
そこからもう、私の意識は存在しない。
海潮音が聞こえる。だが見渡す限り海はないく、板張りの床と壁そして黒板がここにあるだけだ。どうやら何処かの教室にいるらしい。いつのまにか西大寺千秋は席に座っていた。
ふと千秋は、自分自身が夢の中にいると感覚した。
隣の席には男が一人。
「西大寺千秋さんですね。」
男は黒板を見たまま、千秋に語りかけた。骸骨のような顔面、氷のように顔が白い。
「お兄さん?」
「貴女はあのバウハウス忍者ではない。だから兄も存在しない。私は甲賀忍者です。」
「だれ?」
「果報矢文之介。」
彼は黒板を指差した。青龍がいた。
「この甲賀忍者はな、夢を見る忍法を持つ。だがそれが災いし校長復活をいち早く察知した。それ故、彼の精神は肉体を離れ、この場所に閉じ込められているんだよ。」
青龍は言った。
「時間がない。まだ二人いる。」
黒板には映像が浮かび上がった。千秋の意識は黒板へ吸い込まれる。
仏像に囲まれた中で幻覚作用のある煙を吸うのは、やはりいつもエキゾチズムに溢れている。
錦城高校のお堂。近代デザインとかけ離れたこの建物はバウハウス忍者の設計ではない。前に教頭に雇われた連中の物だ。ジョシュタラシューとか言った。
青龍によると、中国だか日本の古い宗教とか何とか。
私達兄弟はお堂で特製の葉っぱ入りのお香を焚く。教頭が現界してない現在、一般人が謁見するには精神を昂らせ幻覚として見た気分になるしかない。向こうは超常の存在なので、幻を通して話しかけてくる。
実際には弟がいるのだろう。だが青龍の幻はいつものように、確かに私達に声をかけた。
『契約は三月で打ち切りだ。四月からは新たに傭兵集団を雇う。』
「そんな、話が違いまス。」
『最早それどころではない。』
青龍の顔からは失望の色が見て取れた。
『君達は幾たびも役立った。十五年前、君達の親方(マイスター)も優秀だった。』
「ならば何故。先日の一件ですか。」
『そうだ。ゾンビは君達の手に負えまい。』
「殺された仲間達はどうなるのデス。」
何としても八右衛門の首級を上げる。私達兄弟の使命だった。弟はいくらか焦っているように見えた。
結局、青龍が契約を更新することは無かった。
「ゲッゲッゲ。残念でゲしたなぁ。」
翌日かの事である。
先走った弟を追おうとした直後、木陰から現れたのは小太りの男だった。
「お気持ちは分かりますでゲスよお。」
袈裟を被っていた。こいつが教頭との新たな契約者。
「誰だ?って顔ゲスね。初めまして。私は藤原和尚でゲス。」
「とても強そうに見えんナ。」
「ただの現地スタッフでゲス。」
藤原和尚は手をこまねきながらムーンウォークで此方にすり寄ってきた。
「何、ここはお互い協力しようと思いましてゲスねえ。つまり三月まではあなた方は教頭と契約している。私が甲賀忍者との戦いを手引きしてあげようと言う算段でゲスなあ。」
「随分とサービス精神旺盛ネ。目的は何ダ。」
藤原和尚はゲスな笑いを浮かべた。
「あなた方が三年間で掴んだ情報について…!」
「フン、良いでしょウ。どうせ三月までの仕事。引き継ぎやっかないとネ」
「ゲスゲスゲス〜では甲賀組の兵装について知りたいゲスなあ。」
「奴らの技術は電子組が一括していル。気になるのは最新兵器ダ。」
「最新兵器でゲスか?」
「サイボーグ式神計画。式神とは知っているカ?」
「実際にこの目で見た事はないでゲスな。」
「式神は常に術者と術式、そして媒体が存在すル。最も古い物では陰陽師が術式を紙に込め、自在に操るのがそうダ。」
「術を物に乗せて遠隔操作、という算段でゲスな!」
「そうダ。陰陽術も今は向上し、紙以外も媒体に出来ル。スーファミがプレステになったようなものダ。」
「さしずめソフトは術式でゲスな。」
「術式さえ正しければ何でも再現出来ル。人間の魂さえモ。」
「あぁ。ならサイボーグの"媒体"は」
"人間の死体でゲスな。"と、藤原和尚は言った。
それから結局、弟に追いつく事は無かった。私が見つけた時には既に、弟は黒いゴルフバッグに包まれ、八右衛門に拉致されていた。先程、藤原和尚に話した内容を思い出す。まさか、まさか奴は弟を。
だが建築忍法デザイン理論に基づく包囲網は確実に奴を仕留められる。弟も助ける。
だが、一点だけ気になる事がある。奴の足跡。これはあの家へと続く道程ではないか?全て知られていたというのか。まさかこの先には。
八右衛門に追いつくと、奴は脇に二人抱えていた。ゴルフバッグに入った弟と、西大寺千秋だ。
「人質をとったでござる。」
八右衛門は勝ち誇った。
「嘘だ。」
「何が嘘なものか。お主達がこの娘を忍者にしようという計画は十五年前から気付いていた。拙者はそれを密かに手助けさせて貰っていた。お主も甲賀の為に命を差し出せ。」
弁明の余地は無い。私は八右衛門に敗れた。
その後どうなったのか。
目が覚めると、千秋の首が転がっていた。
「弟の"脳"はまだ生きている。保存しておこう。」
電子組の白服が言った。
「お春殿新しい首はどうする?」
八右衛門が尋ねた。
「藤原和尚はまだ捕らえたばかり。幾らか調整が必要です。兄の"脳"を使いましょう。此方は顔面の再構成も済んでいる。」
その後どうなったのか。
私は西大寺千秋としての生活を始めた。
何故人間はかくも苦しみ続けるのか。
救いは突然訪れた。なんと川には仏様がいらっしゃったのである。
「ああああこれは御仏様ではないか」
「有難や有難やああ」
一同はその場にひれ伏した。八右衛門も。
私は、出家した。私はもう仏教徒なのだから。
ただ弟だけが気掛かりだ。最期に見た時は首だけになり、西大寺千秋の顔になっていた弟。きっと再び西大寺千秋にされてしまうのだろう。甲賀組にとって、私はもう役に立たない。サイボーグが死体を媒体とするなら、媒体の出家だけが私の救われる方法だったのだ。天国には行けない。
海潮音が聞こえる。ここで千秋の意識は再び板張りの教室へ舞い戻り、息もつかぬ間、再び黒板の中へ吸い込まれていた。どこへ行くかはもう分かってる。さっき、校庭の池で自分の顔をみたのだから。
「ゲスゥーッ!?」
藤原和尚は耳を引き千切られて拉致された。暫くして改造された。
サイボーグ化。陰陽組。耳。
電子組に、パワーアップして貰った時からだった。
水面に映っているのは藤原和尚の顔だ。
「あぁっアァアアア…でゲスゥ〜〜」
校長はほぼ再生しつつあり、起き上がっている。
藤原和尚は炭化して崩れ落ちた。
そこからもう、意識は存在しない。
海潮音が聞こえる。千秋の意識は黒板から、再び板張りの教室へ舞い戻った。
「最後の藤原和尚だけ雑じゃない?」
「ごめん、途中で疲れちゃった。」
青龍は言った。
「この空間は旧校舎だ。青龍が作り出した精神世界でもある。この場所には本来、校長がいる筈だった。」
矢文之介が言った。
青龍は黒板を叩いた。
「話をしよう。人間の魂の在り処とかについて。」
千秋は黒板を見た。
「人間の魂は何処に宿るのか?脳か?心臓か?それとも心という曖昧不定義な物なのか?それとも魂なんて物は存在しないのか?」
青龍は北を指差した。方角は分からないが、それは北だと思った。
「俺はお春殿の魂を見つけたよ。この出会いはそれを見つける為にあった。」
青龍はなんか成仏とかしそうだった。
「さあ、自分が何者なのか、もう分かるだろう。」
「私は宝蔵院お春だ。」
「良い答えだ。」
青龍は頷くと、片手を矢文之介、もう片手を黒板に掲げた。
「事件に黒幕がいる。」
矢文之介が震えだした。
「この男はそれを知っているからここに居るんだよ。」
「我々四教頭は事件の黒幕に興味がない。だが、誰が校長を復活させようとしたのかには興味がある。」
「わ、私は何も知らない。」
「だが心当たりはあるだろう?お春殿、最後にこいつの記憶を見て行くが良い。」
千秋は頷いた。忽ち、辺りの景色は薄らぎ、歪んで、しまいには何処かの日本家屋にいた。矢文之介は部屋を覗いている。
部屋では、メイド服の美女と少年が会話していた。
「葛城、いつも思うのだが、なぜあんな像がこの部屋に飾ってあるのだ?」
「坊っちゃま、私の事は似鳥とお呼び下さい。」
メイド服の美女は言った。美女とは言ったが、随分と若い。高校生くらいだろうか。少年は10代前半といった具合か。
下の名前で呼ぶよう言われた少年は、恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「似鳥、からかうな。答えよ。アレは何なのだ。」
「ふふ、アレは像ではありません。即身仏です。」
美女は似鳥と呼ばれると満足そうに微笑んで答えた。
「即身仏?」
少年が聞き返す。
「十二歳で即身仏も知らないとは愚かですね坊っちゃま。アレは家の守り神と聞いております。」
「似鳥、お前はいつも敬語だな。俺に気を使う必要はないのだぞ?」
「話を聞いておりませんね?」
「似鳥、お前は何故誰に対しても敬語で話すのだ。俺に対してくらい、普通に話してくれ。俺には対等の者がいない。」
「坊っちゃまは特別ですから。私が敬語で離すのは、その方がプロっぽいからですよ。」
「成る程な、なら俺も今度から敬語で話すとしよう。」
「その方が坊っちゃまの格が保たれますね。」
「ふん、格か。…なあ似鳥。お前、俺の嫁になる気は無いか。」
「私はただの家政婦ですよ。私と坊っちゃまはそう、親友ですね。」
似鳥が悪戯っぽくそう言うと、少年は納得したように頷いた。
「親友か。悪くない。」
そこへ矢文之介が乱入した。
「お前達二人とも来て貰おう。」
記憶はそこで終わりだった。気がつけば千秋は三たび黒板の前に戻っていた。矢文之介は焦燥しきって席に倒れるように突っ伏していた。
「あの女は…見たことがある。」
千秋は今しがたを思い出すように言った。
「あれは百地二右衛門?」
「俺は興味無い。だから答えは言わん。今のは褒美だ。」
青龍は優しげに言った。
「俺が保証する。お前は今まで四教頭が雇った中でも一番良い仕事をしてくれた。」
「仕事?」
「校長の事さ。あの方を女子高生にしてくれた。魂の在り処を示してくれた。」
青龍はドアを指差した。
「帰り道は一瞬だ。ここは旧校舎。体育館の地下と繋がってるから。」
千秋は黙って教室のドアに手を掛けた。
「ありがとう、青龍。」
そして旧校舎を出た。それはかつて体験したように一瞬の出来事だった。
現実に戻っていた。千秋はいつの間にか、校庭の池の近くで目を覚ましていた。
「お春殿、大丈夫?」
声を掛けてきたのは山田寺さんグループの人だ。
「昆虫館さん?」
「名前覚えててくれたんだ。なんか凄い爆発みたいなのがあって、人とか死んでるし。誰その人達。」
千秋は池を覗いた。そこに反射していたのは藤原和尚ではない。紛う事なき千秋の顔だ。
というより、藤原和尚の死体が眼前にあった。炭化した上半身が池に浮かんでいる。
千秋は自分の体を見る。藤原和尚だけではない。今気付いたが、千秋の隣には、アマンダ和尚の死体も転がっていた。
「お春殿が燃焼したかと思うと、長柄さんとかいう人が口からおっさんを吐き出して、お春殿になったのよ。」
昆虫館さんは説明してくれた。千秋は理解した。
「私だったんだ。」
「えっ?」
「校長が借りてた生徒の体は私だったんだ。行かなきゃ。行くべき所はもう分かってる。黒幕はそこにいる。」
千秋は土俵を見た。トイプードラー黒滝とホタテが今世紀最高の頭脳線を繰り広げていた。
「大丈夫お春殿?」
「ありがとう。危険は承知の上よ。」
千秋は駆け出した。
行くべき場所は分かっている。バウハウス忍者の兄弟がいた場所。この学校のお堂だ。今、お堂にいるのはビショップなのだろう。思えば随分と胡散臭い奴では無いか。
校庭からお堂へ行くには、校門を一度通らないといけない。
松平総理は、校門に寄りかかって死んでいた。
「総理!」
何をしたのか分からないが、松平総理の下半身が爆裂し、そのまま校門にへばり付いて死んでいた。校門の柱に血糊がべっとりと付いていた。
「そんな、ビショップの仕業なのね?」
ビショップは、いや、キャスパー和尚はお堂で理事会召喚の呪文を唱えいるのだろう。その力で歴史を変える為。
千秋は駆け出した。お堂へ向かう為に。お堂が見えた。階段を駆け上る。静かに、お堂に乱入する。
「…お春殿ですか。」
室内が暗いのでわかりにくいが、キャスパー和尚の声だ。
「そうだ。理事会の復活はさせない。」
千秋は目を凝らした。
そこにいたのは、ビショップだけではなかった。
お堂には、キャスパー和尚とビショップの二人がいた。
「…理事会は復活しませんよ。」
キャスパー和尚が言った。
「はっ?」
キャスパー和尚とビショップの二人を見渡す。
「あれ?入滅部隊がビショップだよね?で、生徒指導がキャスパー和尚?」
「そうですよ。」
ビショップが答えた。
ビショップはまだいい。ビショップは敵の大将だ。キャスパー和尚がおかしい。キャスパー和尚は学校の生徒指導の先生の筈だ。
そのキャスパー和尚は今、端的に言うと、シャーロックホームズみたいな格好をしていた。
「…間も無くご友人達も来ます。それなりに人が多い方が良いでしょう。」
「何が?」
キャスパー和尚は鹿撃帽を被り直し、パイプを蒸すと、答えた。
「これは殺人事件ですよ。さあ、解決編のお時間です。」
つづく
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