呼吸 / a breath

雪が降っている。私は舞い降りる雪を、靴底でしっかりと捉える。一歩一歩、雪を踏みしめて空へ上っていく。ひらひらと舞う雪は不安定だが、足取りはしっかりと。下を見ると、積もった雪の山から引き出しが出ているのが見える。妹がその引き出しに手をかけている。私は急いで駆け降りようとするが、雪が降ってこない。足を踏み外すわけにはいかない。空にかかる三日月からは煙が吹き出している。私はふぅと息をつき、また一歩一歩雪を踏む。

妹が引き出しの中にそっと切手を入れる。ぱちんと音がして、引き出しが閉じてしまう。もう開かない。妹はさくりさくりと音を立てながら、雪の山を登っていく。妹の足跡が引き出しになっていく。自然と引き出しが開いていき、中に雪が積もる。すっかり引き出しが雪で埋まると、珊瑚のような氷の柱が伸びていく。ぱきんと、氷の柱が折れる。甘い。甘い氷が口に広がっていく。

「もうここまで登ってしまったから。だからわからないよ」。私は三日月に手をかけるとぐっと引き寄せる。ぼんやりした光が噴き出る。妹も雪を踏みしめて登ってくる。私は妹へ手を伸ばす。ゆっくりと煙を吹きかける。

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