子守歌 / cradle song

寝室で姉が着替えているのが丸見えだ。長い髪をかき上げてシャツを脱ぐと大きな胸と緑色のブラジャーが見える。スカートも脱ぎ捨てればすっかり裸だ。「見えてるよ」私は窓枠にしがみついて叫ぶ。姉も気付いたようでこちらを振り向く。ゆらりと風を起こす。「見えてるんだよ。しっかり見えているんだ」。姉は鏡に映った自分に手を伸ばすと、腕が沈んでいく。鏡面に波が立ち帆船の舳先が大きく揺れる。「おいおい。それでは困るんだよ。それではこの海じゃやってけんよ」親方の野太い声が響く。「すいません。必ず」私はとっさに謝ると姉の手を掴みあげようと部屋に入る。カーテンに水しぶきがかかり、日の光がチラチラとまぶしい。姉は一糸まとわぬ姿で鏡の中に腰まで入っている。ゆらゆらと陰毛が波に揺れているのが分かる。「あんたが保障してくれるって言うからこっちはここで漁をしてるってわけだ。分かるかい若いの」。親方は釣り竿でツバメを一匹を器用につり上げると、針を外してすぐに水面へと戻す。三度、水面が揺れ、強い光がさしてくる。姉が笑っているのが分かる。椰子の実がぷかりと浮かび上がり、南の方へ流れていく。

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