自然 / a low of nature

弁当箱を開けると中には私がいる。そっとつまみ上げてみる。思っているよりもずっと軽く、すっと持ち上がる。足元がぶらぶらして安定しない。食べようか食べまいか思案していると、先生がこちらを睨んでくる。先生の後ろに大きなゴリラがいるのが見える。私はとっさに弁当箱の中に隠れることにする。サンドイッチと林檎の間の小さな空間にさっと横たわる。しばらくここに居着くことにする。鳥の甲高い鳴き声が心地いい。

夜になり弁当箱から這い出すことにする。腹が減ってしょうがない。私は今度こそと弁当箱を開く。中に入っているバナナをつまみ、手にとって皮を剥く。ぷん、と甘い匂いが広がり、教室の隅でオレンジ色の花が開くのが見える。ほっそりとした白い実を囓ると、枝を折った音がする。振り向くとゴリラがジャングルの木を倒している。折れた木の断面から白いもやが吹き出す。私は慌てて食べさしのバナナを放り投げる。バナナは軟らかい土に沈む。

「知らなかったんだ。知らなかったんだよ」私は叫ぶ。ゴリラは私を睨みつける。じっと睨みつけたままでいる。

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