文明 / civilization

朝目覚めると、体がランプになっている。私の光で部屋には暗いところがない。なるほどこれはよい。ひんやりとした部屋の空気が当たる。灯りがわずかに揺らめく。少しずつ火屋に煤が着いていくのが見える。外では雨が降っている。油が切れかかっている。居間の真ん中に座っている牛がモーモー騒ぎ始める。仕方なく腰を上げるが、戸棚に油はない。

私は取るもの取りあえず庭へ向かう。外はすっかり暗くなっている。父が郵便受けから新聞を取り出してこちらに向かってくる。ひっそりと濡れる苔が生えている。私はそっとその中に横たわる。油受けの中にぽたんぽたんと水がたまっていく。水の中に沈んだ水晶を父が拾い上げる。「これでは腹が減るだろう。さあ服を着ようか」父はポーチから声をかけてくる。ラジオの野球中継がとてもやかましい。私は池の深い底から動かない。すっかり雨はやんで湿った空気に、庭の花の匂いが混ざる。流れ星だ。「さあそれでは食事にしないといかん」。私の体の光が部屋の奥までを照らす。ドアのそばには私がそっと立っている。食事が始まるまで、誰も何も言わない。

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