関係 / relation between
一人の少年が蝉を見つける。早く起きた朝。茶褐色の蝉の幼虫が窓枠にしがみついている。背中がくっぱりと割れ真っ白い羽が見えてくる。ほんのりとした炎が足元へと落ちる。しばらくそのままでいた炎は、やがて青く伸びる竹となる。竹の節が炎に包まれ、ゆらゆらとしたまま水色の肌をした少女の形となる。
「それで終わり」少女が言う。少年が立ち上がる。窓枠の先に公園が見える。月がゆっくりと沈むのを指でなぞる。なぞった跡が金箔となりぱたぱたと剥がれていくのが分かる。少女の目も赤くなり、少年は満足したように笑みを浮かべる。少女が窓辺に座る。少年は窓枠にそっとキスをして少女の手を取る。部屋の電灯から煙が漂い、足元の炎が消える。「ごめんなさいね」。「どうして」。物憂げな笑顔。窓に鍵がかかっていたことに気付く。
そっとカーテンを閉めると風が吹く。カーテンの隙間から見える木の枝の下に女性がいるのが分かる。裸の女性が芝生に落ちるのも分かる。もうすっかり昼だ。何の音もしない。少女は窓を開ける。ごろごろと音を立てて林檎が部屋の隅に沈んでいく。
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