180:自覚なき視点

 プールエリアの一画に暗雲が立ち込める。


 従業員用通路の扉から大量の雲が湧きだして、同時にそこから歩み出て来た誠司の、その手に握られた煙管のような形状の杖からもモクモクと黒雲が噴出する。

 一歩一歩扉からこちらへ歩く誠司のその背後で、生み出された黒雲が気流に乗って左右に展開し、竜昇達がいる一帯で急速にその勢力を拡大して周囲の空間を侵食していく。


 中崎誠司の有するスキル、【魔法スキル・黒雲】。

 その特性は一言で言ってしまえば、魔法によって気象現象を再現する天候操作の技術体系だ。


 気流を操り、温度を操作し、空気中の水分量すら支配下に置いて、狙った気象現象が発生するよう周辺の条件を整える。


 足りない要素は魔力から生成することで補い、逆に周辺の環境的要因を気象操作のための要素として積極的に取り込んで、自然現象や物理法則を利用することで少ない魔力消費で大規模な魔法現象を思うがままに引き起こす。


 無論、通常雲が発生するはるか上空と地表付近では環境に大きすぎる差があるため、現状生み出されている雲はあくまでも魔法的な技術によって足りない要素や条件を補うことで強引に再現されているだけのまがい物なのだが、ことこの場に関して言うのであれば本物かまがい物かなど酷く些末な問題だ。


 むしろ厄介なのは、徐々に勢力を広げつつあるこの雲が、本来の気象現象を逸脱した性能を有しているという点にある。

 まがい物であるからこそ油断ならない。人間が使いやすいように調整された、まるで武器か兵器のような気象現象。


「まったく、彼女には裏切られたものだよ。やけに判断が適格だと思ったら、君は渡瀬さんから僕らの手の内を聞き出していたんだね……」


 身にまとっていたマントのフードをかぶって雲の中から出て来た誠司が、そのフードを取り払って露骨に落胆した様子を見せながらそう言い放つ。

 どうやら彼が纏っていたあのマントは、雲の中を進むうえで体が濡れないようにとの意図も含まれた装備だったらしい。

 

「参考までに、彼女にどうやって口を割らせたのか、その方法を聞いてもいいかな? 正直僕としては、彼女の口の堅さを考えれば手の内が漏れる危険は比較的に低いんじゃないかと踏んでいたんだけどね」


「別に特別なことをしたつもりはありませんよ。彼女が本音を晒さなかったのは、単に貴方と俺達の人望の差では? 少なくとも、自分たちのやったことを棚に上げて簡単に『裏切った』なんて口にしてしまうようでは、あの人だって自分の本音を晒しにくかったことでしょう」


「なるほど……。そのあたりの事情もすでに聞いているという訳か」


 半ば挑発するように言い放った竜昇の言葉を、しかし誠司はその余裕ぶった表情を崩すことなく平然と受け止める。

 あるいはそれは、竜昇のこうした態度を彼自身事前に予測していたからだったのかもしれない。


「とは言え、その様子からするとずいぶんと一方的な言われ方をしているらしいね。あれに関しては、彼女の側にもずいぶんと問題があったために起きた事態だというのに……」


「その言い方、まるで自分達にはなんら非はないと言わんばかりの言い草ですね」


「無いさ。君が聞いたのは、あくまでも彼女の側、彼女の立場から語られただけの経緯だろう?

 となれば、流石に脚色とまではいかなくとも、ある程度その話には彼女にとって都合のいいようにバイアスがかかっているはずだ。

 いくらなんでも、そんな話だけを判断材料に、僕らのことを一方的に悪者扱いするなんて……。君は君でいくらなんでも、少し早計が過ぎるんじゃないかな?」


「……」


 誠司の物言いに、竜昇はしばし言葉を発することなく黙り込む。

 確かに客観的な事実として、竜昇は詩織から話を聞いているだけで、誠司達の側の言い分というものを聞いているわけではない。

 竜昇が知らされているのはあくまでも詩織の視点からの彼らの所業であり、そういう意味では現在の竜昇達は、公平性を決定的に欠いた状態で聞かされた話を鵜呑みにしていると言われても否定できない状態だ。


 ただし、その一方で。

 竜昇達とてなにも、誠司たちの過去の行いを詩織の話だけを根拠にして判断していた訳でもない。


「……」


 誠司と向かい合いながら、竜昇はわずかに視線を巡らせて周囲に広がっていく黒雲の様子を確認する。

 【魔法スキル・黒雲】。このスキルのポテンシャルは、基本的に周囲に満ちる【黒雲】の量に比例する。

 加えて、プールという周囲に水が大量に存在しているこの階層は、水分を魔法に利用するこの魔法スキルにとって、最も力を発揮しやすい最適な環境ということになる。

 そうした条件を考えれば、本来であれば竜昇はすぐにでも誠司の黒雲の生産を阻みに動くべきなのだが、しかし竜昇は誠司が会話によって時間を稼ぎ、大量の黒雲を生産しているこの状況を『好都合だ』とそう判断した。


 時間稼ぎが目的であれ、相手が会話に応じてくれるなら都合がいい。どちらにせよどこかのタイミングで、誠司には一つ問いただしておきたいことがあったのだ。


「――別に、なにも彼女の話だけを参考にあなた方のことを判断しているわけじゃありませんよ。彼女の話以外にも、俺は俺であなたについて、いくつか思っていたことがある」


「ヘェ……?」


 そんな竜昇の言葉にも、誠司は明らかに『半信半疑』と言った様子でこちらに疑うような視線を向ける。

 そんな誠司に対して竜昇がぶつけるのは、あるいは彼という人間の本質に触れるかもしれない、そんな言葉。


「例えば、そう……。中崎さん。あなたひょっとして、自分のことを主人公として見ているんじゃありませんか?」


「…………ハァ?」


 唐突に投げかけられたその問いかけに、誠司はしばしの沈黙の後にほとんど笑いに近いような反応を見せてくる。


 それは明らかに内心『なにを言っているんだこいつは』と思っているようなそんな反応。

 けれどそれは、同時にどこまでも予想通りの、竜昇が『自分の予想が正しければ見せるだろう』と、そう思っていた反応でもあった。


「以前から、貴方の判断や考え方にはどこか言葉にしがたい違和感のようなものを覚えていました。矛盾というのは少々弱い、けれどどこか不可解な、言葉にするのも難しいそんな感覚を……」


「……その違和感の理由が、僕がいわゆる中二病患者よろしく、自分のことを主人公だと思っているからだって言うのかい……? 

 あれかな? ひょっとして僕は今バカにされているのかな……?」


 今度は皮肉で言っているというよりも、本気で反応に困っているようなそんな様子で、誠司が肩をすくめてそう問いかける。

 ただしその反応もまた、竜昇の予想を否定する根拠にはなり得ない。

 そもそも竜昇自身、誠司がこのことを自覚しているとは最初から思っていないのだから。


「昨晩詩織さんからあなた達のこれまでの話を聞いてようやくわかった。あなたの判断は、言ってしまえば物語の主人公のそれなんだ。

 現状に対してどんな行動をとれば最善かを考えているわけじゃなくて、『物語に出てくる主人公ならどんな行動をとるか』、いえ、もっと言うなら『どんな行動をとるなら主人公らしいか』を考えて、それを実際の行動に移してる。

 だからあなたの判断には、どうにも奇妙なところで理想(あまさ)が混じる。

 危険やデメリットを予測できているはずなのに、まるでそれをないものとして扱っているかのような……。危険を覚悟しているのとも備えているのとも違う、美しいだけで中身のない選択ばかりが散見している」


 竜昇達の衝突を予見していながら、ほとんど具体的な対策を打とうとしていなかったことなどその最たる例だろう。

 この階層の情報や必要物資の提供など、それ自体は竜昇達にとって都合のいい話ばかりだったが、しかしもしも彼らが竜昇達との衝突を本気で対策するつもりがあったのだとしたら、ある程度交換条件を出すなりわかりやすく恩を売るなりして、自分たちの有利を保つ手だってあったはずなのだ。


 それこそ情報や物資を提供する代わりに竜昇達に手の内を晒させることとて彼らにはできたはずなのである。

 にもかかわらず、誠司はそうした交換条件の類を出すこともなく、それどころか自分たちが手の内を明かさないのだからと、竜昇達の手の内を探ることすらしなかった


 恐らくは、むやみやたらと相手を疑って探りを入れたり、物資の提供を渋ったりするその行為が、誠司の考える主人公像にそぐわないと考えた故に。


 ただし彼の判断は、現実への最適解ではなく理想的な行動を求めてしまったがゆえに、相手を完全に拒絶するでもなければ積極的に統合を目指すでもない、どこか歪で中途半端なものになってしまった。


(まあもっとも、それだけで済んでいたならまだそれほど問題はなかったんだけどな……)


 そう、実のところこの問題、誠司が自身のことを主人公のように思い込んで、主人公らしい行動ばかりをとっていたというだけならばまださほど問題はない。

 確かにその判断が現実から乖離してしまうというのは問題と言えば問題だが、かく言う竜昇達自身そんな誠司たちの判断に救われていた部分もあったのだ。


 むしろ手を組む相手として見るならば、主人公らしい行動を心がけているがゆえに非道や外法に走る可能性の低い誠司の精神性は、こんな事態になってさえいなければ非常に付き合いやすい思考形態であったとさえ言える。


 だがそれならばなぜ、竜昇は今このタイミングで、中崎誠司のものの考え方を問いただすような真似をしたというのか。

 中崎誠司の精神性の、いったいどこに問題があったのかと言えば、それは――。


「――そしてもう一つ。どちらかと言えばこちらの方が重要な訳ですが……。

 中崎さん……。あなたひょっとして、周囲で起きる出来事や周りの人間、詩織や先口さん達のことも、自分を主人公とした物語の一要素として……。それこそ話の筋書きや登場人物として見ていたんじゃありませんか?」


「…………なんだって……?」


 いつの間にかこちらを小ばかにしたような色合いの消えたそんな声で、誠司が竜昇に対して短く問い返す。

 あるいはその様子は、竜昇が口にしたものの考え方に、彼自身思い当たるものがあったのかもしれない。


「あなたは自分の周りで起きる出来事を、ある種の物語の筋書きとして見てるんだ……。だから無意識のうちに物語的にあり得ない展開を、あなた自身が思い描く筋書きから外れる展開を、ある種ありえないものとして思考から排除してしまっている」


 精神干渉を受けた城司が退路となる扉を閉ざしてしまった時、誠司がそれを何でもないことのように受け止めていたことがずっと不思議だった。


 こんな一つの階層に閉じ込められて、次の階層に進むための攻略すら行き詰っているこんな状態であれば、通常であれば撤退という選択肢も視野に入れていてもおかしくなかったはずなのだ。


 けれど昨晩、詩織から話を聞いて、竜昇自身が誠司の思考回路に思い至ったその時になんとなくだが理由がわかった。


 彼の思い描く物語の筋書きにおいて、階層の攻略を断念して別の道を選び直すというのは、この手の物語の王道からも外れるありえない選択肢だったのだ。

 だから彼はあの時、実際に竜昇にその選択肢を提示されるまで、この階層からの撤退という現実的な選択肢を自身の認識の外に置いてしまっていた。


 自分という存在が物語における主人公の如き存在になったのだとそう思い込み、物語を破綻させるような、自身にとって都合の悪い事態など起こるはずがないのだと、無意識のうちにそう考えて、中崎誠司は自身の思考と視野を大きく狭めてしまった。


 決して自覚的にではないにせよ、いつの間にか彼が囚われてしまっていた、それは甘美で危険な上位者の視点。


「……あんたが俺達との衝突を想定していたのだって、それが物語の王道だからってのもあったんじゃないのか……?

 この手のサバイバル物だかバトルものだかの展開として、人間同士の争いってのは王道みたいなものだったから……!!

 ――そして、あんたがパーティーメンバーの詩織さんへの仕打ちを止められなかったその理由も……!!」


「なにを――、言っているんだ……」


「あんたは、周りの女子たちを自分という主人公に対するヒロインとして見てたんだ……。

 けれど詩織さんに予想外の形で拒絶されて、さらに他のヒロインたちがその詩織さんを迫害するような真似をし始めたことで、あんたのその『物語観』に狂いが生じた……。

 頭にきたからって他人を寄ってたかって責めたてるようなそんな真似、あんたの中のヒロイン像にまるでそぐわないものだったから……!!」


 中崎誠司という人間はそういう意味では潔癖だ。

 自身を主人公と見なし、周りの者達をそんな自分に対する物語の登場人物として見ていた誠司は、そうした周りの者達にも物語の中のような美しい人間であることを無意識のうちに望んでしまっていた


 けれどストレスに耐え兼ねたそのうちの二人が詩織一人を糾弾するようになって、その生々しい人間の暗黒面を目の当たりにして、そうした誠司の認識と現実との間に齟齬が出てしまった。


「あんたはその齟齬を、詩織さん一人を悪者にすることで解消したんじゃないのか……!? 問題があったのは詩織さん一人だけってことにして、彼女を攻撃されて当然の敵役にしてしまえば、それを攻撃する二人の行いを正当化して、自分たちはヒロインと主人公でいられるから――!!」


「……がう」


 問いただす竜昇の言葉に、誠司の口元が微かに動く。

 それは最初のころに比べれば見る影もない、ほとんど竜昇にも聞き取れないほどの微かな抗弁。


「もし俺の予想が間違っているっていうならそれでもいい。あんたに心当たりが何もないって言うのなら、それはきっと俺の考えすぎだったんだろう」


「そ…、…上――」


「けど実際はどうなんだ……? あんたは今の俺の話に、本当に何の心当たりもなくいられたのか? もしも心当たりがあったって言うならこれ以上――」


「――不愉快だ」


 その瞬間、誠司がまるで吐き捨てるようにそう叫び、同時に彼が携える杖から電流が生まれて、背後の黒雲の中を稲妻となって駆け巡る。

 周囲を取り囲む黒雲が、発生した突風によって生き物のように竜昇達の周囲を取り囲み、まるで台風の目の中にでも入ったかのような筒状の雲の壁を形成して、その内部で電流の流れを輝かす。


(――ッ、流石にこれ以上は会話も続けられないか――!!)


 思うとともに、竜昇は周囲の黒雲を操る誠司へと即座に右手を差し向ける。

 発動させるのは会話のさなかに魔本に溜め込んだ魔力を用いて放つ、竜昇が即座に放てる最大の魔法。


「【迅雷撃フィアボルト】――!!」


 初手から一切の容赦なく、巨大な電撃が正面から誠司へと向けて襲い掛かる。


 だがそんな魔法を、誠司は体重を感じさせない動きで背後へと飛び退き、かわりに分厚い黒雲の壁を間へと割り込ませることであっさりと防ぎ切った。

 竜昇の放った莫大な電力が雲に触れた瞬間全体に拡散するように吸収され、同時に誠司の姿が雲の向こう側へと完全に掻き消える。


(あの動き、【羽軽化フェザーウェイト】の魔法と【黒雲】による電撃吸収効果か……!!)


 誠司の発生させる【黒雲】は電撃を吸収する。

 そのこと自体は、昨晩のうちに詩織の口から聞かされていた、誠司の使う魔法の最も厄介な特性だ。

 水滴と氷の塊と言ってもいい雲の性質上、電気以上に炎も無効化してしまうために、誠司自身も【魔法スキル・火花】の魔法を使えなくなるというデメリットはあるようだが、それでも電撃を吸収できるという時点で竜昇を相手取るならば十分すぎるほどのメリットだ。

 加えて、この【黒雲】の存在は、誠司がさらなる力を使うための下準備という意味合いも持っている。


「君にはガッカリさせられたよ。まさかそんな言いがかりを吹っ掛けられることになるなんて、まったくとんだ恩知らずもいたものだ」


 まるで風に乗るように誠司の声が周囲に響き、心底落胆したと言わんばかりの口調で先ほどよりも若干落ち着きを取り戻した言葉が降って来る。


(――上か)


 見上げたその先にいるのは、はためくマントで風を受け止め、雲の渦の中央に浮遊してこちらを見下ろす誠司の姿。


「加えて君はこちらを舐めすぎだ。生憎だけど君の電撃は【黒雲】を持つ僕には効かない。むしろこっちにしてみれば、わざわざ充電する手間が省けて助かるくらいだ」


 言いながら、誠司が真下の竜昇へと手にした杖を差し向ける。【表現の重複】

 同時に周囲を取り囲む黒雲が、その表面で一斉に雷のごとく雷光を放って、その雲の中に溜め込んだ電力が一気に表へと顕現する。


 それはまるで、巨大な雲でできた砲身の中に、竜昇自身が迷い込んでしまったかのようなそんな光景。


「悪いけど、これ以上君に付き合ってあげるつもりはないんだ」


 放たれるのは、自身がため込んだ電力に先ほど吸収した【迅雷撃】の電力までを上乗せして放つ、個人が放つにはあまりにも威力の高い極大の魔法。


「【落樹雷ライトニングツリーストライク】――!!」


 その瞬間、誠司の杖から【初雷】のか細い電撃が放たれて、同時に周囲の雲から莫大な電力がそれに合流し、空から地へ向けて巨大な雷が落とされる。


 まるで枝を広げた樹木を上から描くように。

 光の大樹が雲の中心へと顕現し、その根元にいた竜昇の姿を一瞬のうちに飲みこんで――。


「――なに?」


 その直後、雷を落としたばかりの誠司は、必殺のはずのその閃光の中で右手を掲げて微動だにせず立ち尽くす竜昇の予想外の姿を見た。


 否、予想外というならそれだけではない。

 落とした閃光、人体など瞬く間に黒焦げにできるはずの雷が、しかし竜昇の肉体には傷一つ付けることができずに、まるでその身の周囲に衣服を形成するように竜昇の体へとまとわりついていく。


(なんだ、あれは――、オーラ系の魔法か……?)


 眼下の光景に愕然としながら、同時に誠司は魔本によって増幅された思考能力で一つの事実を受け止める。

 竜昇がいつの間にか、未知の魔力によって形成されたオーラ系の術技を身にまとって、それが見る見るうちに落とした雷を吸収して衣服のような形でその周囲に蓄えていっているというその事実を。


 まるで権力者の纏うローブのような、丈の長いゆったりとした衣服をその身に着こむような形で形成されて、最後にそれでも余った電力が竜昇の背中から広がって、まるで翼のような、二股に分かれたマントのような形となって広がっていくその光景を。


「【電導師アンペアロード】……。この時のために、わざわざ記憶をあさって習得してきた新術だ……」


 変貌した竜昇のその声に、誠司が我に返って慌てて雲の中に身を隠そうとするがすでに遅い。


「あんたこそ、こっちのことを舐めすぎなんだよ……!!

そもそもあんたが電撃を使うのがわかってんのに、こっちが何の対策もしてない訳がないだろう……!!」


「――っ!!」


 身にまとう雷、その一部がローブから流し込まれるような形で竜昇の右手に集められ、その電力を上乗せされる形で一条の閃光が放たれる。


「【電導雷撃槍ロードスピアボルト】――!!」


 それはまるで、驕る天上の人間に反逆するかのように。

 天より見下ろすその相手を、あるべき地上へと撃ち墜とすかのように。

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