28:半骨のマンモス
骨の中に核を取り込み、全身を黒い魔力と毛皮で覆い、その上に大量に石器突き立てた巨大なマンモス。
一目見ただけで明らかな、そんなわかりやすいフロアボスが、今竜昇たちの目の前に出現していた。
「……これは、さて、どのように攻略するべきでしょう」
「核を狙うのは……、頭蓋骨が邪魔で難しいな」
刀を抜き放つ静を横目に見ながら、竜昇は目の前に現れた敵への対処法を頭の中で模索する。
敵の性質としては大名駕籠を振り回す巨大大名に近いが、性質としてはこちらの方がより悪質かもしれない。
身を守る盾の代わりになるものこそこのマンモスは持っていないが、しかしこの巨体を黒い煙と毛皮で覆い、しかもその向こうにある骨に守られる形で核があるのだ。この状況はむしろ、本物のマンモスの脳だけをを狙わなくてはいけないという状況に似ているかもしれない。
そしてそうなったとき、竜昇たちにとってこのマンモスは最悪の天敵だ。
これだけ巨大な相手を倒すとなればそれ相応の攻撃力が必要な訳だが、しかし今の竜昇体にはその攻撃力というものが決定的に欠けているのだから。
「――来ますよ、互情さん!!」
「――ッ!!」
静の呼びかけに、こちらへと突進するマンモスに対して二人は左右に分かれるように回避する。
静の方は逃げる間にも、ウェストポーチの中から取り出した永楽通宝を立て続けに三発その横っ腹に叩き込んだようだったが、しかし直撃した貨幣はあっさりとその巨体に跳ね返され、炸裂したらしい電撃もわずかにその動きを阻み、マンモスの肉体を構成する黒い霧をわずかに散らすにとどまった。
(――やっぱりたいして効果が無い……!!)
一応黒い霧が散っているところを見れば全く効いていないわけではないようだが、しかし効果がそれほど致命的なものになっていないのも確かなようだった。
というよりも、竜昇の使える二つの魔法、【雷撃】と【静電撃】自体がそもそも威力が低いのだ。これまでの戦闘を顧みても、竜昇の魔法が相手へのトドメとなったのは顔の奥にある核にゼロ距離で打ち込んだ初戦のみ。それ以外の戦闘では相手を痺れさせ、その動きを奪う効果は発揮しても、決定的なダメージを与えるほどの威力は出ていない。
誰の目にも明らかな決定的な火力不足。それを補おうと思うなら、その威力を補うくらいの数を打ち込むよりほかにない。
「――雷撃(ショックボルト)!!」
レベル上昇によってなのか、ビルに入った直後よりもはるかに速く魔法を組み上げ、竜昇は走りながらマンモスの巨体へと雷光を解き放つ。
恐らく威力にしたところで最初期よりも上がっているはずだが、しかしやはりと言うべきかこのマンモスを打倒するには至らなかった。
加えて狙うべき核が毛皮と頭蓋骨に守られたその中とあっては、多少動きを鈍らせたくらいではそうそう下手には攻め込めない。
一撃で決めるのが困難な現状、下手に近づく行為はどう考えても命取りとなる。
ただしそれは、相手から近づかれてもまた同じだ。
「――う……!!」
雷撃をその身に受けたことでマンモスの注意が竜昇へと向き、骨が半分以上露出したマンモスが体ごとこちらへと向き直る。
慌ててその場を離脱しようとする竜昇に対して、マンモスは半分骨の露出した鼻を振り回すと、近くにあった原始人の人形をつかみ取り、それを高々と振りかぶって、離れて立つ竜昇目がけて投げつけた。
「うおわぁっ!?」
悲鳴を上げて真っ直ぐに飛んでくる髭もじゃ原人の人形を屈んで躱し、再びマンモスへと視線を戻して、竜昇は早くも自分の失策を思い知る羽目になった。
一瞬人形に意識が向いたその隙に、マンモスは自身の体全体を不可視の魔力で包み込み、今まさにこちらへと一歩を踏み出すところだったのだ。
まるであのもんぺ女が、槍の刺突で突っ込んでくる直前のように。
「――く、う、ぉぉぉおおああああッ!!」
その巨体とは思えない、明らかに異常な速度で突っ込んでくるマンモスに対し、竜昇がどうにかその攻撃圏内から逃れられたのは、偏に陸上部での日頃のトレーニングのたまものだった。頭を抱えて竜昇が地面へとダイブした次の瞬間、マンモスの巨体が背後の空間をぶち抜いて、巨大なホールの壁へと激突する。
(――くッ、痛ぅぅうッ。なんなんだよあれ)
地面を転がった衝撃で、左腕に巻かれたジャージの布地、その奥で今も回復を待つ傷が鋭く痛み、その痛みによって恐怖を思い出しながら、竜昇は必死にそれを振り払おうと心の中で悪態をつく。
響いた轟音は到底生物が起こしたとは思えない、生物ならば普通耐えられないはずのもの。
たが慌てて立ち上がった竜昇が向けた視線の先に見えたのは、砕けて大きな凹みができた壁から、鼻の両側の牙を引き抜き、健在なままこちらへと向き直ろうとするマンモスの姿だった。
その姿に、自らの突撃によってダメージを受けたような様子はかけらも見られない。
「――ッ!!」
再びマンモスが突っ込んでくると、予想して竜昇が一歩後退ったその瞬間、まるで下がる竜昇と入れ替わるように、真横を通り過ぎる形で静がマンモスのもとへと肉薄する。
「――小原さん!?」
驚く竜昇の声にも、静はまるでその動きを緩めない。
どうやら【剛纏】を発動させたらしい、赤いオーラを纏ったその体で矢のような速さで背を向けたままのマンモスへと走り寄ると、そのまま両手で刀を握って、体ごと飛び込むようにしてマンモスの後ろ足へと斬りかかった。
『ブブブブゥゥゥゥルルルル』
背後から足を深々と切り裂かれ、ほとんど骨と皮だけのマンモスがマンモスのものとは思えない、少々ノイズがかかった耳障りな悲鳴を上げる。
切り付けられた足から一斉に黒い煙があふれ出し、同時にそれを成した静が再び地面を蹴って、マンモスの体のちょうど真下、足の間をすり抜ける形で、真上にあるマンモスの腹を同じように飛び込む形で斬り付けた。
「すごい……」
再び響く耳障りな悲鳴に耳を塞ぎながら、竜昇は魔法の準備すら忘れて少女とマンモスの攻防に目を奪われる。
マンモスが振り向きざまに鼻で静を殴りつけようとするが、そのころには静は再び背後へ回り込み、己の姿を見失ったマンモスの足に深々と刃を突き立てている。
傷ついた足を持ち上げ、マンモスが静を踏みつぶそうと暴れるが、そのころにはすでに静はマンモスから距離を開けて、取り出した永楽通宝を投げつけてマンモスを感電させ、襲い掛かろうとするマンモスのその動きをあっさりと牽制していた。
巨大な体を持つマンモスを、少女一人があっさりとその立ち回りだけで翻弄している。
竜昇が手出しする余地など欠片もない、ただ見ているだけで済んでしまうようなそんな攻防。そんな一方的な応酬をどうにか中断させたのは、当のマンモスによる力任せの逃亡だった。
「――おっと」
気配を感じて静が飛び退いた直後、再び魔力を全身にみなぎらせたマンモスがその巨体を弾丸のように打ち出して対岸の壁へと強烈な体当たりをぶちかます。
静を振り払うための力任せの逃走でどうにか距離を取り、粉々になった壁の粉塵の向こうからマンモスが恨みがましい輝きを眼窩の奥の核から向けてくる。
「厄介ですね」
「小原さん……?」
それだけマンモスを圧倒しておきながら、一度距離を開けられたことでこちらへと戻ってきた静がなぜか苦い声を漏らす。
いったい何が厄介なのだと、再び竜昇がマンモスへと視線を戻して、そうして粉塵の中からこちらを見つめるマンモスの姿に、一つ足りない要素があることに気が付いた。
「煙が……」
マンモスの体、あれほど静が刀で斬り付けたにも関わらす、斬り付けられた箇所からの黒煙の漏出は、まるで傷口が塞がってしまったかのように既にすっかり止まっていた。
「面倒な相手です。あのまま煙を漏らし続けてくれていれば、後は煙が枯れて動けなくなるのを待てばよかったのですが……。あれでは倒せるようになるまでにどれだけ攻撃すればいいのかもわかりません」
「そんな、ただでさえ核を狙うのが難しい相手だってのに、それじゃあ一体どう倒せばいいって言うんだよ」
より悪くなった状況に、思わず竜昇は噛み付くように声を上げる。
核を直接狙うのが難しい現状、竜昇たちがとりうる手段は後は相手の肉体、それを構成する黒い煙を削ることによる消耗戦だ。
だが相手のマンモスが一定時間で傷を修復し、煙の流出を抑えられるとなると、その作戦の成功難易度は一気に跳ね上がる。
だが竜昇たちの側の不利な条件は、まだその程度では底を尽きず、終わらない。
「――ッ、互情さんッ!!」
竜昇が自分たちの不利を認識した次の瞬間、突如目の前の静が竜昇の胸を強く突き飛ばして、直後にそうして距離の離れた二人の間に何かが着弾して土のしぶきを上げる。
「――なっ!?」
何かが飛んできたのだと、その事実を理解して、竜昇が尻餅をつきながらも慌てて飛んできた方角へと視線を向ける。するとその先では、先ほど観察したときと同様にマンモスがこちらを、ただじっとその虚ろな眼窩で睨んで、身じろぎもせずに立っていた。
いや、違う。
よく見ればマンモスの周囲、マンモスの体高よりも少しだけ高い位置に、魔力をみなぎらせる形で何かが浮遊している。
その切っ先をこちらへと向けた、先ほどマンモスの体に突き刺さるようにしてその体に取り込まれた複数の石器の刃が。
「―-ッ、「シールドォッ!!」」
二人の声が重なり、直後に竜昇が展開したシールドに三連続の衝撃が激突する。
「――ぐ、うぉわっ!?」
衝撃のフィードバックに浮かしかけていた腰が再び地面に落ちて、同時に目の前のシールドにヒビが入って少し先の地面に三つの石刃が落下する。
「――せ、石器を飛ばして……!?」
恐らくは竜昇と静、双方に同時にこの攻撃を飛ばしてきたのだろう。運よくシールドが間に合って、なおかつそのシールドが堪えられたからよかったが、もしもあと一発多く着弾していたら、先ほどの陰陽師との戦闘でそうなったようにシールドを貫かれて敵の攻撃が竜昇の体に突き刺さっていたかもしれない。
そんな想像に、竜昇は腕の傷の痛みを再び思い出し、背筋に走る寒気に身を震わせる。
だが生憎と状況は、今そうして立ちすくんでいられるほど甘くない。
(……!? なんだ、石器が――!!)
竜昇が見つめるその先で、地面に転がっていた石器がカタカタと音を立てながら勝手に動き出す。
その石器が魔力を帯びていることに気が付いて、竜昇がへたり込んだまま反射的に身構えると、同時に石刃が三つ同時に浮き上がり、まるで見えないなにかによって引っ張られるように、まっすぐに石器を飛ばしてきた犯人であろう、半骨のマンモスの元へと飛行し、戻って行った。
驚く竜昇をしり目に、マンモスは先ほど出現時に人形たちの手から石器を回収したのとまったく同じように、己の毛皮部分に回収した石刃を突き刺し、再びそれを己の体の一部として身に収める。
(まずい、まずい、まずい……!! よりによって飛び道具まで持っているなんて――!!)
しかも回収機能付き。これでは恐らく弾切れの可能性も望めない。
見たところマンモスの体に突き刺さる石器は十数本分あり、それらを次々に打ち込まれたら遠距離火力による打ち合いでも打ち負けるのは明らかだ。なにしろ竜昇の持つ遠距離火力は明らかな火力不足。しかも一発撃つのにわずかな、しかし相応の時間が必要になる。これでは十数発の石器をすでに背負っているマンモスとは到底戦えない。
そしてそんな竜昇でも至ったような状況判断は、静の方が一足早く済ませていたらしい。
「立って、階段を上りますよ互情さん!!」
愕然とする竜昇の手を素早くつかんで、引き起こすようにして立たせた静が走りながらそう指示を飛ばしてくる。
女子に手を引かれて走っているというその状況をようやく理解して、慌てて言われるがままに足に力を籠め、走り出した竜昇だったが、言い知れぬ恐怖によって既にマヒし始めていた思考はすぐには静の言う言葉の意味を理解できなかった。
それを察してなのか、あるいはそれ以外の理由なのかはわからないが、静が走りながらも冷静に言葉を続けてくる。
「敵に飛び道具があるとわかった以上遮蔽物の無いここで戦うのは危険すぎます。しかも相手はあのタフさでパワーもある。上なら遮蔽物になる壁がありますし、そもそも体の大きすぎるマンモスは上がって来られません。上の階から遠距離攻撃で削って、それでもダメならば、一度入ってきた出入り口から撤退することも視野に入れる必要があります」
言われて、ようやく竜昇は自分が陥っている危機的状況を理解する。
核を狙って一撃で仕留めるのが難しい以上、竜昇たちが取れる方法はマンモスの肉体を構成する黒い霧を散らして、敵の肉体そのものを削っていく方法しかない。
だが階下のこの場所では竜昇たちが明らかに不利。ならば、通路の狭さゆえにマンモスが上がってこられない階上へと逃げ込み、そこから魔法を使って攻撃した方がまだ勝機があるというものだ。もしもそれでだめだったとしても、上の階に上がっていればまだ撤退するという選択肢もある。
幸い、こんなこともあろうかと、竜昇は先ほど入り口からこのフロアに入った際入口の扉を開けっ放しにしておいた。しかも扉が勝手に閉じないように、間に観葉植物を移動させて、閉じようとすれば植物を挟みつけるような形になるよう細工までしたのである。
事と次第によっては撤退したうえでどこかでレベル上げをする必要があるかもしれない。静の指示に従って両側の階段を分かれて登りながら、ようやく竜昇の思考が追いついてそんな事態まで想定し始めたその時、再び魔力が炸裂するような感覚と共にマンモスが竜昇たちの背後へと何かを射ち出してきた。
「互情さん、後ろです!!」
「――うぉッ!?」
振り返ると、二振りの石斧が回転しながら、竜昇と静、それぞれの元へと旋回軌道で追ってくる。
階段を上り始めたことでコンクリートの手すりが壁となり、直線的には狙えなくなったようだが、ならばとばかりに今度は回り込む形で飛来する石斧を撃ちこんできたのだ。
「―-シールドォッ!!」
向かい側の階段の上で、静がほとんど足を止めぬまま刀を一閃させ、飛来した石斧を打ち返すのが見えていたが、生憎と竜昇では彼女のように武人的な芸当はできはしない。とっさにその場で足を止めて護法結界を展開し、拡大する障壁によってどうにか石器の攻撃を跳ね返す。
「――ッ!!」
流石に石器一本でシールドを砕かれるようなことはなかったが、しかし確かな衝撃がビリビリと障壁を揺るがせて、わずかながらも竜昇へとその一部がフィードバックされる。
それでも、防ぐことができたという事実に一瞬ではあるが安堵を覚え、それによって竜昇の心にわずかながらも隙が生じたその瞬間――。
「―-まだです、互情さん。足を止めないで!!」
「――!?」
鋭い声でそう言われ、それによって竜昇はようやく気が付いた。
石斧を撃ちこんできたマンモス、それがすでに自身の頭上に次に撃ちこむ石槍を二本浮かべ、しかもその二本が先ほどまでの石器たちの時よりもはるかに多い、並々ならぬ量の魔力を漲らせているということに。
まるで最大出力の石槍で、竜昇たちをシールドごとぶち抜こうとでもしているかのように。
「―-違います、互情さん。早く階段を上がってください!!」
とっさに身構えてしまった竜昇に対し、すでに階段を上り終わっていた静から再びそんな鋭い指示が飛んでくる。
だがもう遅い。
直後、マンモスの頭上で二本の石槍が射出され、竜昇の目の前で登りかけていた階段が木端微塵に粉砕された。
「――ぐ、あああああッ!!」
目の前で階段が木端微塵に砕け散る。飛んできた破片こそシールドでどうにか受け止められたが、しかし最悪の一手を打たれてしまったという事実には嫌でも気付かされた。
シールドごと階段を転げ落ちながら、竜昇は自身が進退窮まってしまったことをいやというほど認識させられる。
(まずい、退路を断たれた――!!)
階下へと昇る二つの階段、それがミサイルのように打ち込まれた二本の石槍によって両方とも半ばで木端微塵に粉砕されていた。
先に階段を上がろうとしていた静の方はどうにか登りきれたようだったが、しかし上り損ねた竜昇はもはや上へと昇ることはできそうにない。
(――ッ、来る)
マンモスの周囲に、多数の石器が展開される。
魔力を帯びて、浮き上がる石器の数は合計十六本。恐らくはマンモスの体に残る数、そのすべてを投入する構えのようだった。
対する竜昇もすぐさま起き上がり、どうにか防ぐ手段を考えるが何も浮かばない。
必然残されているのは、突破されるとわかってしまっている、そんな最後の手段だけだった。
「――、シールドォォオオオッ!!」
死力を尽くし、必死の思いで展開したシールドに石器のナイフが立て続けに突き刺さる。
シールドに深々と食い込んだナイフがシールド全体にひびを入れ、そして最後のとどめを刺すように石斧が回転しながら飛んでくる。
(――受け、きれない――!!)
結局十六本の内、七本を受け止めただけで限界だった。
最後に激突した石斧によって竜昇のシールドが粉々に砕け散り、衝撃のフィードバックに襲われた竜昇の体がなす術もなく背後に倒れ込む。
(ダメ、だ――)
石刃が迫る。今度はナイフが計三本。竜昇の体を引き裂き、食いちぎり。そして命を刈り取るそんな刃が、倒れ込んでなす術もなく背後の壁へとぶつかった竜昇の身へと容赦の欠片もなく迫っている。
一瞬後には命を失う、そんな予想に思わず竜昇が目を瞑り、もはや我が身を石刃が食い破る、その瞬間を待つだけの存在に成り下がって――。
「――ご無事ですか、互情さん」
直後に凛とした声が耳へと届いて、鋭い激突音が迫る石刃をあっさりと叩き落した。
眼を開ければ、声の主たる少女が当たり前のようにそこにいる。
「――お」
時間の感覚が元に戻る。死に瀕した緩慢な時間が終わりをつげ、高速で動き出した視界の中で、目の前に現れた少女が刀と十手で立て続けに飛来する石器を素早く、そしてこともなげに叩き落とした。
「小原、さん……?」
眼を見開く、竜昇の記憶が確かなら、彼女はさっき最後に見た時点ですでに階段の上まで登り切っていたはずだ。たとえ石槍によって階段が大破していたとしても、あのタイミングであれば彼女だけは上の階にまで到達していたはずなのだ。
だというのに、今彼女は竜昇の目の前にいる。
その意味を理解できないほど、竜昇の思考回路の性能は悪くない。
「なんで……、なんで戻って……!! 上の階から飛び降りて来たのか? けど、そんなことしたら小原さんまで逃げられなく――!!」
「ええ、まあ、そうなのですが……。けど流石にここで見捨ててしまうのも薄情ではないかと思いまして」
こともなげにそう言って、静は刀と十手を構えて竜昇の前で立ちはだかる。
己の体を赤いオーラで、両手の武器を黄色いオーラで包み込み。いまだマンモスの周囲で発射の時を待つ石器の数々を待ち受ける。
その姿は、まるであの陰陽師と相対したときの姿そのもので。
何事にも動じない超人的な少女は、まるで当たり前のようにそうして竜昇の前に立ちはだかってくれていた。
互情竜昇
スキル
魔法スキル・雷:13
護法スキル:10
守護障壁
探査波動
装備
再生育の竹槍
雷撃の呪符×3
静雷の呪符×2
小原静
スキル
投擲スキル:9
投擲の心得
纏力スキル:8
二の型・剛纏
四の型・甲纏
装備
磁引の十手
加重の小太刀
武者の結界籠手
小さなナイフ
永楽通宝×10
雷撃の呪符×3
静雷の呪符×2
保有アイテム
雷の魔導書
黒色火薬
集水の竹水筒
思念符×90
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