ショートショート「クリスマス病」

 僕には子供の頃、変な癖があってね。

「クリスマス病」って、勝手に呼んでたんだけど。

 たとえば新しいおもちゃを買ってもらったとする。僕は一日中それを抱えてはしゃぎまわって、くたくたに眠るわけだけど、このときにね、そのおもちゃが枕元にないと眠れないんだ。

 なんでもいいんだ、僕をいい気分にさせるものなら。

 自分で作ったプラモデルを見上げながら眠ったり。

 一番お気に入りのページを開いた絵本を立てかけたり。

 卒業証書をすぐ横に貼り付けて寝たこともあったっけな。

 僕は枕元の戦利品を眺めながらうとうとする。眠る瞬間に考えるのはいつも同じことさ。明日は何を飾ろうか、ってね。自分の努力の証を見つめながらまどろむことが、僕にとっては最高の時間だったんだ。



 ねえあなた、その癖はもう直ったのかしら。

 尋ねる前に夫は立ち上がり、自分の寝室へと戻っていった。

 私も黙って立ち上がり、彼とは別の、寝室へ戻った。

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