ショートショート「迷宮入れ」

「悪いが君を帰す訳にはいかない。もうしばらく付き合ってもらうぞ」

「もう全部話しましたよ刑事さん、ぼく警察嫌いなんです」

「一昨日、君はあのカフェで店員と口論をした。オーダーミスが原因だ。君は捨て台詞を残して店を出た。間違いないかね」

「捨て台詞なんて。二度と来るかと言っただけです」

「君が立ち去って数分後、カフェで爆発が起きた」

「…」

「時限爆弾による犯行だ。死傷者多数。二度と行けなくなったわけだな」

「僕が時限爆弾を持ち歩いていたとでも言うんですか。とんでもない話ですよ。犯人扱いはまっぴらだ」

「犯人はもう捕まっている」

「え」

「設置の様子が防犯カメラに映っていた。動機は現在、調査中だ」

「じゃあ、何で僕を拘留するんです」

「君、事件に遭いかけたの、初めてじゃないだろう」

「遭いかけた?」

「苗字に見覚えがあったんで、過去の資料を繰ってみた。驚いたよ。列車事故、連続通り魔、火災、玉突き事故。決して少なくない調書に君の証言があった。関係ない?確かに。事件なら犯人が、事故なら原因が、どの案件もきっちり特定されている」

「それなら問題ないでしょう」

「列車事故で興味深い証言がある。

『若い男性が携帯を注意されて、顔を真っ赤にして次の駅で降りた。

 その直後、列車が横転した』この男性が君だ。そうだろ?」

「調書を見たなら分かってるんでしょ」

「自分でも気づいているだろう。君が強い不快を覚え立ち去った場所には、ことごとく災いが起こるんだ」

「…だったら何なんですか。ただの偶然でしょう。

 よしんばそんな能力があったとして、僕は罪になるんですか」

「立証は不可能だな」

「だったら早く家に帰して下さい。もう警察なんてウンザリだ」

「帰せる訳がないだろう。君が警察を嫌っている限り」

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