僕らのストーリーLife

@kirara2980

第1話 春

「でも……あんなことになるなんて。」

私は公園のベンチに座って、ため息をついた。


 私、水無月みなづき ゆうは、特に大して「何かができる」という子ではなかった。今でも。普通の女子中学生。のんびりマイペースのような。そんな私ではあったが誰かに告白されるということも、勿論ない。

しかし、なんだ、私は今日、告白された。下駄箱で。


 朝、6時起床した私に、大学生の姉、水無月みなづき 茉莉まりがシャープペンシルをくれた。可愛い花が沢山あって、女の子らしいシャープペンシルだった。

「中学生になったんだから、少しくらい可愛いのは持ちなさい。」

そう言って、姉は微笑んだ。

私の姉は美人で、何でもできる。運動だってできる。クラスでも人気者。

しかし私は、美人でもなければ、そこそこしかできない。クラスでは地味な方である。まぁ、いいか。そんなことを思いながら、着替えを済ませた後、朝食を食べて家を出る。

入学式から、もうすでに1ヶ月は過ぎる。私もクラスにはなじんできている。

「いってきまぁす。」

そう、誰もいない家に声をかける。父と母は仕事だ。朝早く出ていって夜遅く帰ってくる。私の両親は共働きなのだ。私は鍵を閉めて出ていく。

そんなことを思っていると、学校についてしまった。

「おはよ」

友達に軽く挨拶して、教室に入る。いつものことだった。

それから授業を受けたり……もう兎に角いつも通り。

そして、帰り、事件が起きた。

「あ、あの!!水無月!」

突然後ろから大きな声で私の名前を呼ばれた。吃驚した私は、驚いた表情で後ろを振り返った。そこには、

「お、俺と付き合ってください!!」

いきなり告白をする同じクラスの、新川しんかわ 悠也ゆうや

私は、きっと顔が赤くなっているだろう。でも気にならない。私は靴を履いて、

校門を走って、出ていった。彼の顔すら見ずに。だって、いきなりだったから。

私は学校から徒歩10分くらいの公園まで無我夢中で走った。そのためついた時は私の息はきれていた。

「はぁ……はぁ……。ついここまで来ちゃった……。」

私は近くのベンチに座る。今は夕方4時半。まだ春なので夕方といえど明るい。

「でも……あんなことになるなんて。」

私は公園のベンチに座って、ため息をついた。そんな時

「お前、溜息つくと幸せ逃げるぞ。」

顔を上げると、そこには私と同じ中学の男子の制服を着た人が立っていた。いや、初めて聞く声なので知らない人ですが。私があたふたしてるのを見てその人は

「あ、ごめん。俺、神谷かみや 悠城ゆうき。それと1-2な。」

慌てて名前とクラスを述べた。わたしも

「あ、いえ。私は水無月 悠。1-3です。」

 私は人とはなるべく話さない。恥ずかしいし、あまり話したいとも思わないから。だから、会話とかあまりしない。

「あのさ、なんかあったの?」

彼のほうから聞いてきた。いきなりであって間もない人にそれを聞くんですか、と心の中で思いながら、話してもいいのかな、でもこれを話していいのかわからず

「あ、いや、何でもないですよ。」

つい反射的に困った笑顔を浮かべてしまった。私は昔から、悩み事は誰にも話さなかった。今回のは悩みではないけれど。まぁその所為かもしれないけれど、私はそんな時すぐに困った笑顔を見せる。

「そうか?だったら普通ため息はつかねぇと思うけどな。」

彼はそう言う。正論だから言い返せない。

「ほんと、何でもないので気にしないでください。」

私は俯いて、そのまま公園を後にした。後ろからの彼の視線は気になったけれど、振り向けなかった。振り向きたくなかった。いろんなことがありすぎて、私は混乱してしまったのだろうか。この気持ちは何なんだろうか。

 私は、また走って家に帰った。

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